GOLDMUNDとの出会い         / 1999.11.20


JRの車窓を後ろに流れていく秋の景色をぼうっと眺めながら、
聴いてきたばかりの音を頭の中で反芻していたのは4年前。
想い返していたのは、ショップで聴いてきたばかりの、
高嶺の花のCDトランスポートとD/Aコンバーターの、品位が高くて凛とした音でした。
それまで、私が鳴らしたくて苦労してきた音楽の佇まいを呆気なく鳴らしてしまう、
そんな製品が存在していることを直ぐには受けとめられず、
運命とか奇跡とか、そんな言葉が去来していました。

その製品は、発売されたばかりのGOLDMUNDのMIMESIS 36とMIMESIS 10Cでした。
コレルリのトリオソナタ2番ニ短調の木陰の安らぎとか、
グールドのゴールドベルク変奏曲の崇高さに、ただ聴き惚れていました。
リッキー・リー・ジョーンズの強気と翳りが交じった危なさや、
微笑んだリンダ・ロンシュタットが人差し指でリズムをとっているリアリティに、
ポップスが品性をともなって鳴る様子に、私は感動していたのです。

聴いてきた音を、どうすれば自宅のオーディオ装置から引き出すことができるだろう。
そんなことを考えながら、まだ明るい窓外を見るでもなく、足が地に着いていない状態で、
頭の中では音楽が鳴りっぱなしでした。

結局、ESOTERICのP-2sとD-3ではおよばず、諦めてGOLDMUNDに替えることにします。
この間に小変更が加えられて名前に+が付いていましたが、私を夢心地にした音は変わっておらず、
私は至高の音を聴かせてくれる道具を持つことになりました。

私は信条的に、道具を安易に取り替えるのが好きではありません。
オーディオ機器は、しっかり使いこなして自分の音を作るものと考えているからです。
でも、私の求める音とメーカーの音作りの感性が極めて似ていた場合、
それは安易な取り替えではなく、使いこなしの一部と言えるのではないか。
そんな勝手な理屈をつけて、自分の背中を押す必要がありました。
正直なところ後ろめたさが消えたわけではないので、弁解しないではいられません。




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