海老よもやま話・その3


京都中央市場・エビ等の仲卸「辻政」の石川一三様より投稿して頂きました。
HOME  メール  渡辺辰夫のホームページ 海老よもやま話  海老よもやま話2
   第4部以降は古都からのそよ風(「エビ博士」石川さんのホームページ)へ。


わが国で流通しているクルマエビ属
クルマエビ(P. japonicus)
日本の代表的なエビで、褐色の縞模様、尾扇の青と黄のコントラストが優美な姿を引き立てる。天然物と養殖物があり、天然物は夏場、養殖物は年末が最盛期。
漁場は東京湾、三河湾、瀬戸内海、有明湾、不知火湾、別府湾。昼間は砂泥にもぐり夜活動する。姿、味ともにエビの最高級品。中国、台湾、香港、オーストラリアから輸入されている。
 日本におけるクルマエビ養殖の特殊性について、最近恒星社厚生閣より出版された「エビ・カニ類の増養殖」という本のなかで、
養殖技術の進歩に大きな貢献をされている茂野邦彦先生が書いておられるので紹介します。   
----日本では活き作りのクルマエビは、その優雅な色彩と甘美な味わいのゆえに、古来海の幸のうちでも最高級の料理の一つに数えられてきた。
したがって日本でエビ養殖といえばクルマエビの養殖に限られ、必ず活きエビとして出荷され、料亭やホテルなどで豪華な料理として提供され、
品質においても養殖ものが天然ものに比べて勝るとも劣らぬほど高く評価されている。
一方、今日海外で養殖されているクルマエビ類は多種に及んでいるが、一部の国で海鮮料理用に水槽に活かして鮮度を売り物に提供されている以外、
大部分は発展途上国から冷凍エビとして日本、アメリカ合衆国、ヨーロッパ諸国などに大量に輸出され、一般家庭向けに冷凍エビとして惣菜用に安価に売られているほか、業務用としても大量に消費されている。
日本の大衆食堂でも天丼、天ぷらそば、えびフライ、シュリンプカクテル、えびサラダなどに大量に消費されている。
これらの冷凍エビは、日本で養殖した活きクルマエビとは消費形態が異なり、両者間には原則として市場での競合はない。
海外のクルマエビ類の養殖に比べると、わが国のクルマエビ養殖の経営規模は極めて小さい。
しかし、活きクルマエビは、舌が肥えて味に独特のグルメ市場向けの商品であり、美味で華麗な銘柄物を作る繊細な名人芸が評価されるような商品である。
海外のエビ養殖が一般向けの冷凍食品を作っているのとは目標の高さが違うのである。
したがって生産の増強やコストの軽減ばかりを論じていては、目標を見失ってしまうことを忘れてはならない。------------
渡辺辰夫氏のホームページより


竹(P. canaliculatus)
クルマエビによく似たエビで、台湾からインド洋まで分布する。体長12pの小種で海老業界では竹と呼ばれて、クルマエビと同じ種類で扱われている。

ブラックタイガー、ウシエビ(P. monodon)
名前の通り黒に黄色、赤、白などの縞模様がある。養殖物はほとんど全体が黒いが天然物の大型は濃赤でシータイガーとして珍重されている。
ボイルするといずれも鮮やかに発色する。肉質は歯ごたえのある硬さがある。
近年東南アジアで養殖が盛んになり、、タイ、インドネシア、バングラディシュ、ベトナム、ミャンマー、フィリピン、スリランカなどから大量に輸入されている。
ここ数年ずいぶん鮮度の良い状態で輸入されており、甘みも増しているように感じる。

大正海老、コウライエビ(P. chinensis)
甘みのある柔らかい肉質の美味しい海老である。近年天然物が激減している。発色はクルマエビやブラックタイガーよりもうすいが、他のホワイト系よりも濃い。

オーストラリアタイガー(P. esculentus)
オーストラリア産で赤茶色の縞模様の海老。有頭での輸入量が多い。肉質は甘みがあり、柔らかく発色も良い。クルマエビの代替え品として使われている。

ギアナピンク、ブラウン(P. brasiliensis)
赤褐色で体側の中程に赤いスッポト(業界ではキスマークと呼ぶ)がある海老。メキシコブラウンとよく似た肉質で、美味しい。

メキシコブラウン(P. californiensis)
茶褐色で真珠光沢のある海老。発色がよく、きめの細かい肉質で寿司ネタに多く使われる。輸入海老の中では古い歴史を持つ。

ホワイト(P. indicus)
大正海老によく似ているが、体色がもう少し白い。甘みのある海老だが大正海老りは大味である。
大正海老として販売されることが多い。東南アジア全般から輸されている。マダガスカルのホワイトもこの種と思われる。

オーストラリアバナナ(P. merguiensis)
オーストラリア産でバナナ色をした海老。肉質は柔らかく、甘みがある。大正海老として売られることもある。身がブラックタイガーに比べるとうすく、スマートである。ホワイトにも似ている。

中南米のピンク(P. duorarum)
メキやギアナと同じように扱われている。ブラジル、コロンビア産のものが多く体色は赤褐色。ギアナのようなキスマークはない。

モザンブラウン、シンチュウ(P. latisulcatus)
フトミゾエビとも呼ばれ、モザンビーク産のものは船内凍結(漁獲した海老をすぐにその船で冷凍加工する)されたものが多く輸入されている。茶褐色で発色もよく甘みもある。

アシアカ、フラワー(P. semisulcatus)
クマエビ、アカアシとも呼ばれ肉質はブラックタイガーより柔らかく甘みがある。全体に赤褐色の縞がある。日本からインド洋まで広く分布し、紅海、スエズ運河を経て地中海東部にも広がっている。
イリアンから船凍有頭として輸入されいるものはイリアンタイガーと呼ばれ、オーストラリアタイガー有頭と有頭海老市場の代表格である。マダガスカルのフラワー、ペルシャもこの種類と思われる。

マレーシアホワイト(P. silasi)
インドのホワイトとよく似たエビで、業界では、インドネシア、タイ、ベトナム、パキスタン等東南アジア産のホワイトは、ほとんど同じ種類として扱っている。

エクアドルムキ( P. vannamei)
近年エクアドルからムキエビとしての輸入が増えている。大正海老のムキエビの代用として中華材料に使われている。肉質が柔らかく甘みがある。

その他に、クルマエビの仲間は全部で28種類報告されている。
用途に応じて、いろいろな種類が使われるが、発色、肉質の違い、鮮度などで価格にかなりの違いがあり、ギアナ、ブラジル、オーストラリアタイガー、メキ等は価格が高く市場では高級品である。
一方、ブラックタイガーは、価格も安く大衆品とされるが、鮮度の違いで味に差があり価格も違う。

お魚情報館
.
Copyright(C) june 23,1997 by Toshio Yabe. All rights reserved