海老よもやま話


京都中央市場・エビ等の仲卸「辻政」の石川一三様より投稿を頂きました。
石川様は東京水産大学出身、エビ流通のプロです。この文章は、基本的に原稿のまま掲載しています。

渡辺辰夫のホームページ 海老よもやま話・その2 海老よもやま話・その3


海老は物価の優等生
海老の値段は、10年前に比べるとずいぶんと安くなっている。卵が物価の優等生と言われているが、海老もそれ以上の優等生だ。
輸入自由化となってから、一時は海老の価格は上昇して高級品だったが、
養殖技術の進歩や養殖地域の拡大で多量生産されたのと、急激な円高ドル安のため輸入価格が急落した。
20年前に比べると半値ぐらいになっている。昔は高級水産物であった海老も、今では大衆惣菜品になった。
海老が物価の優等生と言っても過言ではないと思う。

日本の海老の輸入相手国
20数年前は、中国がわが国の海老の輸入相手国のナンバー1だった。
当時は天然の海老がほとんどで、渤海湾の大正海老が中国からわが国に輸入されていた。海老業界では中国大正と呼ばれている。
このころは養殖海老は、国産の車海老しかなかった。

ところが、15年ほど前に、台湾で通称ブラックタイガーと呼ばれる車海老の仲間が養殖されるようになり、爆発的に生産量が増えた。
一時、台湾がわが国の海老輸入国相手国のナンバー1になった。
あの小さな国の台湾が、養殖のおかげで世界で有数の海老の生産国になったのだ。

ところが、海老のウイルス病による病死で、台湾の海老養殖は幕を閉じた。
高密度養殖による養殖池の汚染が原因と言われている。養殖池の老朽化とも言われている。

台湾から東南アジアへ
その後、台湾の養殖技術と資本がタイに持ち込まれ、わが国の輸入相手国のトップになった。
養殖池の老朽化問題は解決されていないが、台湾に比べると海岸線の長さと国土面積がかなり違う。
どんどん新しい池を作って、海老の養殖を行い生産量を維持してきた。
最初はバンコク市内から始まり、次第にその周辺に拡大し、その後マレー半島を南下して行った。
そのころには、バンコク市内の池は老朽化が進んで生産量は激減したが、南タイの生産量がそれをカバーした。
しかし、タイの経済が急激に成長したために生産コストが高騰して、安く海老が作れなくなった。 
そして、次はインドに養殖ブラックタイガーの生産地は移った。
インドは、もともと天然海老の生産量は多かったのだが、電力、道路等の問題で品質的にあまり良いものが出来なかった。
近年東海岸を中心にかなり良い製品が出来るようになったのと、価格面で他の国よりも安いので、
現在ではほとんどインド産のブラックタイガーが店頭で販売されている。 
インドネシアも養殖ブラックタイガーの主要な産出国である。鮮度の良い製品がここ数年増えている。
島国であるこの国は、海老の養殖に適した自然環境は整っているが、インドと同じで、道路、電力問題で生産量は伸び悩んでいる。
しかし、インド、タイと並んで現在、わが国の主要輸入相手国である。 
フィリピンもインドネシアとよく似た島国で、養殖ブラックタイガーの生産量は多い。日本へは、有頭として輸入される量が多い。
わが国の市場における、フィリピン産有頭ブラックタイガーは評価が高く、タイ産有頭ブラックタイガーと並んで珍重されている。

お魚情報館
.
Copyright(C) june 23,1997 by Toshio Yabe. All rights reserved