河童の恩返し   上五島・南松浦郡有川町(ありかわちょう)

 むかし、箒山の近くに、竹篭を編みながら子供達にいろんな話をしてくれる、長次郎じんじと呼ばれるお爺さんがしてくれた話。

 むかし、箒山の近くの里に何時どこからやって来たのか、はっきりとは分かりまぜんが、半次郎という人が両親と三人で暮らしていた。半次郎は里の皆んなと仲良く し、また良く働き、正直で親切だったので、仏の半次郎と呼ばれていた。

 ある時里の世話役さんがやってきて、半次郎さんも、もうここに来て長うなんなあ。よく働いてくれるし、皆なの為によくやってくるっけん、皆なが「土地はやった らどがんね。」と言いよるばってん、どがんかなー荒れた土地やばってん、畑や田んぼにしてみたら・・・・。」

箒山 1998/9/13 撮影
箒山

 半次郎はとても喜んで「有り難かあ。自分の土地は持たるっち、嬉しかなあ。」

 早速もらった土地を畑にしようと、石ころを運んだり、生えている木を伐ったり、毎日朝早くかち夜遅くまで一生懸命に頑張りました。また半次郎ほとても優しい人で、人間だけでなく動物にも優しくしました。

 犬が子供にいじめられて怪我をすると、「つんだっさよー(※かわいそー)、痛かったろう。」と言って薬を付けて布で縛ってやりました。

 ある日のこと畑仕事の後、暗くなった道を歩いていると、河童が怪我をして苦しんでいました。

河童の絵・アナミ ユキ wrote
アナミユキさんからお寄せ頂きました

 「わあ、ざあまに(※いっぱい)怪我したなあ。痛かろう。よし、おっげーにけーっ。」と言って家に連れて帰り、手厚く手当をしてやりました。すると河童は、「どうも有り難うございました。」と、何度もお礼を言って帰って行きました。

 それからというものは、毎晩河童の一族が畑の石を取り除きに釆てくれるようになり、半次郎の畑は見る見るうちにきれいに出来上りました。

 この地区のずーと上の方には、小さい握り拳位の石垣で囲まれた畑がいくつもあり、その畑が河童の手伝いで作った畑だということです。

<有川町郷土誌 郷土誌編集編纂委員会 有川町 平成6年2月発行より>
(※は注釈を入れました。)

 有川町にも、河童の伝説が多く伝わっており、有川町郷土誌にも4話紹介されています。そのうちの2話をご紹介しました。

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