どことも知れぬ場所、遥か上空の彼方にあり今はもう下界につながりを持たぬ所。そんな閉じられた世界でそれは少々奇妙な声を発した。
「あれ、久しぶりに扉が動いた?」
「ああ、そうか。二万年前にもあったな!ということは、久しぶりに向こうの『界』から何か出て来たのか?さすがにこれだけ時間が経つと、『天魔の条約』も無効になって来たかな?」
「ミシェル。悪いけど下と連絡をとってくれる?どうも何か出て来たみたいなんだ」
「ごめんね。これはちょっと君達一族に任せるわけにはいかないと思うんだ。うん、実に色々と込み入ったことがあってね。事情を知っている僕らが調査するのが一番いいんだよ」
「あはは、何でもないよ。これはセスラ創成期の話だから。君達一族がここに迷い込む前のお話だからね。君達は気にしなくていいんだよ」
「何か、ごまかしてません?」
「やっぱり、彼女らの一族は心休まるな。純朴だから思念がとても優しくて、ほっとする。それに引き換えると…どうも彼らはな…悪い種族ではないんだろうが、勝手な悪さをするのが多いよな」
「それにしても厄介な。さて、どうするか…」
それは誰に言うとでもなく呟き、小さく嘆息する。この悩みというか、事件を対処できるそれの片割れは今はこの空間にはいない。自分とは対極の場所に居を構え星の動向を見守っている。
「だけど『天魔の戦い』から二万年も経っていれば仕方ないか」
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とたんに、それの前に巨大な星のミニチュアが現れる。青い海をたたえた巨大な三つの大陸のある惑星だった。 |