掲示板小説 オーパーツ83
オーディーンを分析しろ
作:MUTUMI DATA:2005.1.9
毎日更新している掲示板小説集です。一部訂正しています。


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 だが何としてもここは切り抜けてみせる!
 決意も新たにジェイルは傍らのクルーに尋ねる。
「プラズマ砲の装填作業はいつ終わる?」
 尋ねられたクルーは背後を振り返り、畏まって答える。
「申し訳ありません。エネルギーの補充には後10分程かかります」
「そうか」
 ジェイルの返事は短い。正面から迫って来るオーディーンを視界に納め、それで間に合うのかという根本的な疑問に彼は取り付かれた。わずか10分ではあるが、その間の状況変化は甚だしい。
 やはりいかん。このままではオーディーンの接近の方が早いか!
 頭の中で簡単なシュミレートをこなすと、ジェイルはそう結論付けた。再充填したプラズマ砲をオーディーンと敵艦隊に打ち込むよりも先に、オーディーンがこちらを襲う。

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 いくら防御フィールドを展開しているとはいっても、それは物理的な防壁ではない。
 プラズマやレーザーなどの光学、あるいは熱線兵器には有効だが、メテオフォール(惑星攻勢兵器の一つ)などの強打兵器には何の対処も出来ない。
 つまり、光学的なエネルギーの中和は可能だが、硬い砲弾を弾き返す事は出来ないという訳だ。防御兵装としては片手落ちとも言える。

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 だが今現在、宇宙船の主力兵器がレーザー砲やプラズマ砲である限り、このシステムは有効に活用出来た。
 小型機やオーディーンに突撃されれば、ぶざまにも弱点を曝け出すだろうが、それさえなければ無敵の防御機能と言っても良い。なぜならシールドでさえ出来なかったこと、プラズマの完全無効化が出来るのだ。要は使い方次第である。
 オーディーンを撃破すれば問題はない。船への接近を許さなければ、弱点を気付かれる事もないだろう。しかし……。
 集中攻撃を浴びても墜ちる気配のないオーディーンに、ジェイルは苛立たし気に目を向ける。
 五月蝿い蠅だ。
 そう考えた時、イライラしていたジェイルの瞳にふと疑問が浮かんだ。
 本当に一つも当たっていないのか?

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 これだけの攻撃にさらされて、無傷でいられるとは到底思えない。例えオーディーンのパイロットに卓越した技術があったとしてもだ。
「……おかしい」
「ジェイル様?」
 低い呟きをクルーが聞き咎めた。
「おかしいぞ。……奴は本当に避けているだけか?」
「?」
 訝し気なクルーにジェイルが低い声で命じる。
「オーディーンを分析しろ。特にその動き……いや、防御方法を」
「は!」
 指図され、クルーが分析機器に向き直る。迫り来るオーディーンをジェイルは瞳を細めて睨んだ。遠目で見る限り映像のオーディーンは、恐ろしい程的確に攻撃を避けている。幾つかは擦ったかと思ったが、オーディーンは平然としていた。

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 臭うな……。何かあるのか?
 考え込みそうになったジェイルではあったが、冷静に次の指示を出す。
「スターナイツを奴にぶつけろ。ナイツなら落とす」
 恐らくな、という言葉を飲み込み、突っ込んで来るオーディーンの機影を睨む。
 すると突然、映像の中のオーディーンが細長いプラズマ砲を掲げ、背後に向かって撃った。予備動作の存在しない間(ま)からプラズマが発射される。オーディーンを追尾していたナイツの1機、グラスコスが四散した。
「あ!」
 管制員が驚いた声を上げる。
「ナイツ1機ロスト!」
 その声はどこか上擦っていた。思わずジェイルも小さく呻く。



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