掲示板小説 オーパーツ7
どうとでもなるさ
作:MUTUMI DATA:2003.10.13
毎日更新している掲示板小説集です。一部訂正しました。


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”トレジャーハンターの間じゃ有名なんだけどね。時々出るんだよな。ありえないモノがさ”
 ボブは訝し気に、関係ない振りをして、級友達とコーヒーを飲んでいる一矢を眺めた。決して視線は合わさないが、二人の会話は積み重ねられていく。
”それをオーパーツって言うんだけどさ。白露もそれじゃないかな”
”随分詳しいですね。何か心当たりでもあるんですか?”
”まあ、なくはない……かな”
 言いながら、一矢は唐突にボブに尋ねる。
”ところでさ、ゲートがどうやって出来てるか知ってる?”
”は?”
 あまりの脈絡のなさに、ボブの頭はクラクラ揺れる。
 宇宙を移動する際に最も良く使われる、航行方法の一つにゲートシステムがある。宇宙空間の特定の場所に存在する、移動門、通称ゲートと呼ばれるものを使って、宇宙のあちこちに、瞬時に移動するというものだ。
 通常はその利便性から、遠距離移動に使われている。ゲートは全て固定化されており、固定された場所以外には、存在しない。宇宙版ハイウェイとでも言おうか。
 ともかくゲートはかなり昔からこの宇宙に存在していた。そして同時に、誰もこのゲートの仕組みを知らない。そう、誰一人として。
”!”
 ハッとしてボブは目を見開く。
”そゆこと。白露は空間を操作するものだ。ゲートも突き詰めれば同じものだろう? 規模は全然違うけどさ”
”ゲートを作ったのは、白露を産み出した文明だと言うんですか?”
”さあ、そこまでは知らないよ”
 一矢は微かに肩を竦めた。

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"ただ、その仕組みが僅かでも解明出来れば、莫大な富になる。そう思うだけ”
 ボブは考え込みつつ、思考を発する。
”金ですか……”
”ジェイル・L・リーゼが金以外に何を欲すると? ネルソンの家も、財も奴にとっては、捨て石だ”
 一矢は吐き捨てる。
”でなければどうして、ブラックマーケットを産み出す? 金が欲しいから、一番利益の高い物、人間に手を出すんだよ”
 一矢は凍えるような声で言い捨てた。ボブも難しい表情をして、思いつめる。
”我々に……本当に潰せるんでしょうか?”
”僕ら以外の誰が、ブラックマーケットを壊滅させられると? やるしかないだろう?”
 一矢はコーヒーを一口含み、空中を睨む。
”頭であるジェイル・L・リーゼを潰せば、どうとでもなるさ”

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 一矢の言葉に、ボブはピクリと指を動かす。
”そうだといいんですけどね”
 言いながら、腕を組み直した。
 二人が話し込む間にも、シドニーの告白は続いている。
「叔父は指輪を父から譲り受けようとしたようですが、父に拒絶され、以来、父と叔父は険悪になり、……果てには、権力争いを起こしています」
「なるほど。それが今のネルソン家の現状か」
 ボブは呟き、瞳を伏せる。シドニーは淡々と言葉を重ねた。
「白露には、叔父がネルソン家を捨ててしまえるだけの価値があるのだと、父は良く言っていました」
「では、白露は今どこに? 君が持っていた物はイミテーションだろう?」
 傭兵達が偽者だと言っていた事を思い出し、聞き返す。
「本物ですか? 本物は……」
 しばしシドニーは言葉を濁す。言ってしまってよいのかどうか、迷っているようだ。ボブの顔を見、様子を伺い、逡巡している。ボブは無言でシドニーを視界におさめた。
「指輪は……」
”ボブ、あの、さ”
 シドニーの躊躇い混じりの言葉と、一矢の恐る恐るという申告の心話が重なる。
”凄く昔にロバート(シドニーの父親)から、指輪を貰った気がするんだけど”
「父がフォースマスターに預けたと、聞いています」
 絶妙な間を置き、ボブはぎろっと一矢のいる方向に視線を這わせる。
「絶対に安全だから。こういう物はフォースマスターの管轄だろうって言って、渡したようです」

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 沈黙の後、ボブは一矢を横目で睨み、
”……で、どこにあるんですか?”
 端的にそう尋ねた。一矢はうひゃ〜っと、心の声をあげて、必死に言い返す。
”不可抗力、不可抗力だってば! 僕だって今の今迄指輪がそんなものだって、知らなかったんだから! 貰った事も忘れてたよ。それにロバートの奴は、何も言ってなかったぞ”
 ボブは呆れたように、一矢を見返す。
”少しはおかしいな、とか思わなかったんですか? 男に指輪を渡しているんですよ。指輪を!”
 ばっさり返され、一矢は身を竦ませる。
”だって、ロバートからだったし。金持ちの気紛れかと思ってた”
”とんだ金持ちですね”
 嫌味をボブから返され、一矢は増々体を縮こまらせる。返す言葉もなかった。

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”は、は、はは……”
 ひやりとした空気を誤魔化す様に、一矢は渇いた声をあげる。けれどボブの冷たい視線は、かわらなかった。
「指輪は、今もフォースマスターが持っていると思います」
「……なくしてなければ、だな」
 ボブはシドニーの言葉に、ぼやきながら返す。
”うっ。……ちゃんとある! ……はず。うん、多分僕の部屋のロッカーの隅に……は”
 少し自信がなさそうに一矢は言い、ずずっとコーヒーを啜る。心持ち背中が丸くなっている。
”戻ったら直ぐに、捜して下さい!”
”はいっ”
 一矢は慌てて、同意を返す。
 ボブは続けて、別な疑問をシドニーに問いかけた。



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