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吉村達也さんの本の書評

 

吉村達也 (よしむら たつや)

 
(プロフィール)
1952年生まれ。ニッポン放送、扶桑社を経て90年より専業作家。
2012年没。
 
【ホラー小説】
卒業  樹海  時計  ボイス  トンネル  スイッチ  姉妹−Two Sisters−
【ミステリー小説】
怪物が覗く窓  十津川温泉殺人事件
 
  
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卒業

卒業

おススメ度:(5点満点)

本体価格:457円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2002年3月25日
形態   :文庫・180ページ

ジャンル:ホラー小説

目次
1.掘り返された怨念
2.訪問者
3.森の絵
4.思考プログラムとの対話
5.家族の未来
 内容
 同級生や担任の先生からのいじめ、また父親からの冷たい仕打ちに耐え切れず、高校の卒業式の日に伊豆山中で自殺を決行しようとした神保康明。 そこで彼は不思議な老人と少女に出会い、「20年後を待て」という謎のメッセージにより自殺を思いとどまる。 そして20年後、康明はしあわせな家庭を築いていたが、ふとしたことから20年前の記憶がよみがえり、再び伊豆山中を訪れる。
 そこで不思議な体験をした康明は積年の恨みを晴らすべくある行動を開始する。

 感想
 ページ数も少なく、また読みやすいこともあり1時間程度で完読できた。 途中までは典型的なホラー小説として楽しめたが、4章以後は自己との対話など哲学的な話が絡んできて面白さがスポイルされた。 エンディングもすっきりしなくって消化不良、と思ったら実はこの作品は三部作の第一部という位置づけであるとのこと(あとがきより)。 続編も読んでみないことには面白さが分からないかもしれないが、この作品だけではちょっと消化不良の感があるため星2つの評価とした。
(書評作成:2004年10月22日)
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樹海

樹海

おススメ度:(5点満点)

本体価格:800円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2003年1月10日
形態   :文庫・374ページ

ジャンル:ホラー小説

目次
1.0のトンネル    2.人間を動かすもの
3.ラストメッセージ  4.絵本を読む老婆
5.記憶の構造    6.進化の果てに
7.姉と弟       8.静かなる対面
9.夢の真実     10.青白き迷宮の果てに
11.ゼロの神殿
 内容
 高校生の村木ルイは物心ついたころから、毎月必ず暗い森の中をさまよい続ける夢を見、それに思い悩んでいた。 ルイは恋人や友人の助けを借りてその夢が意味するところ、夢の真相に迫る。

 感想
 設定上は「卒業」の続編に当たるとのこと。 ただし「卒業」のおどろおどろしい世界観は全く残っておらず、ただ単に登場人物が登場してます、という感じのもの。 よって卒業を読んでなくてもこの本の内容が理解できなくなるなんて事は全くない。
 この本の設定、途中までの謎だらけの展開は面白い。 しかしエンディングで大きく肩透かし。 吉村氏の小説に共通して感じることであるが、設定は面白いのに最後の詰めが甘く、読後にいまいちすっきりとした感動が残らないのである。 設定はすばらしいのに、エンディングでそれが壊されるのが実に惜しい。
 上の写真では見づらいが、本篇で重要なキーワードとなる0(ゼロ)が浮き出るように印刷されているのは面白い。
(書評作成:2004年11月22日)
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時計

時計

おススメ度:(5点満点)

本体価格:552円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2005年1月10日
形態   :文庫・258ページ

ジャンル:ホラー小説

目次
1.ラスト・メッセージ   2.死より怖い生   3.大雪の朝に
4.プールを泳ぐもの   5.誰にも言えない話
6.過去を持ってきた女  7.封印されていた記憶
8.地獄のクリスマス・イブ 9.禁断の森へ
10.メタル・ベンダーの怒り  11.最後の日記
12.嵐の夜のシューベルト
 内容
 中伊豆の森で眼球を反転させた死体が発見された。 つけていた腕時計は狂った時間を指しながら動き続けていた。 さらに半年後、その近所の貸し別荘を訪れた男女も時計が突然狂いだす現象に遭遇した。 さらに女性の身に信じられない事態が発生した。この現象は過去の忌まわしい事件が関係していた。

 感想
 「卒業」、「樹海」の続編に当たる作品である(作者は3部作と言っていたのでこの小説は完結篇に当たるであろう)。 前の作品を読んでいればこの物語の内容もわりと理解しやすいが、読んでいないとちょっと話についていけないであろう。 そういう意味ではこの本だけを読んだ人はがっかりするであろう(せめて「卒業」3部作の完結篇ということをどこかに記載して、間違ってこの本から読み出さないということの注意を喚起すべきであろう)。 物語の結末ははっきりとは書かれておらず、すっきり感が少ない(無い)点は減点材料である。
 話の内容そのものはオリジナリティが感じられまあ面白いが、前作を読んでないと話の内容についていけない点とエンディングが物足りない点は残念であった。
(書評作成:2005年5月21日)
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ボイス

ボイス

おススメ度:(5点満点)

本体価格:667円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2003年4月25日
形態   :文庫・368ページ

ジャンル:ホラー小説、映画化された小説
 内容
 ストーカーに付きまとわれ、身の危険を感じた新聞記者ジウォンは、親友に相談して住所を変えるとともに携帯電話の番号を6644に変えた。 その日から彼女の身の回りで奇怪な現象が起こるとともに、携帯に不気味な電話がかかり始める。 偶然その電話を聞いた親友の娘が何者かに取り付かれたかのように、呪いの言葉を発し始めた。 驚いたジウォンが調査したところ、6644の番号を選択した人々みんなが怪死を遂げていることを知ることとなる。

 感想
 韓国で話題となったホラー映画「ボイス」を題材にした書き下ろし小説である。 これまで吉村氏のホラー小説は怖さ、話の構成の点で面白さがまるでなかったが、この本は面白いと思う。
  「リング」の世界を韓国を舞台にして、携帯電話やパソコンのインターネットなど現代の風味を与えたという感じがするが、話が綿密に構成されているため一気に読破してしまう面白さがあった。 同じように携帯電話を呪いの媒体にする「着信アリ」より話の設定がしっかりしていて、話の面白さも格段によい。
(書評作成:2004年11月18日)
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トンネル

トンネル

おススメ度:(5点満点)

本体価格:705円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2003年9月10日
形態   :文庫・417ページ

ジャンル:ホラー小説

目次
1.暴走する人々   2.特命捜査官   3.現場検証
4.怨霊屋敷      5.嘘          6.瞳は訴える
7.氷雨降る暗い午後             8.姉と弟
9.赤い輪、黒い穴             10.逆ネズミ算
11.悪魔のメッセージ           12.トンネル
13.死者の瞳                エピローグ.蛍
 内容
 マッチ棒を目にはめ、目をこじ開けたまま自殺した女子高生、新幹線で急に発狂した会社員、滑走するジェットコースターから飛び出して自殺した男、高速のトンネルでの大事故、渋谷の映画館から突如として失踪した374人の観客。
奇怪な現象が相次ぎ、そられの現象の解明のため、政府から依頼を受けた特命チームが調査に乗り出す。

 感想
 設定は非常に面白い。また物語の2/3くらいまでは謎だらけで、しかも話がスピーディに進行するため一気に読み進めてしまった。しかし楽しめたのは途中まで。
途中、超能力者が登場するが彼らの登場する意味がよく分からないし、超能力に謎解きを頼ってしまっている感じがしてしまう。
また心理学者が登場するが、その役割も中途半端。超能力と心理学の両方から謎解きをさせているが、どちらか一方にしたほうがストーリー的にも面白かったのでは。
一番納得いかないのがエンディング。せっかく面白い設定になっていながら、最後があれでは・・・。 すごく消化不良の感じがする。
(書評作成:2004年11月22日)
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スイッチ

スイッチ

おススメ度:(5点満点)

本体価格:629円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2004年1月10日
形態   :文庫・309ページ

ジャンル:ホラー小説
 内容
 高校時代のできごとから心に傷を負った八木沢奈美絵は怨念の遺書をしたため自殺をはかる。 しかし予定外の火災に巻き込まれ黒焦げの死体となって発見された。 さらには遺書も燃え尽き、彼女の糾弾は失敗したかにみえた。 しかし浮かばれぬ死霊となった菜美絵は、憎き女、杉浦茉莉に再び報復しようと、睡眠中に彼女の身体を乗っ取ってしまう。 彼女の恋人の竹下旭は、数々の幻覚に脅かされながらも、奇怪な出来事の原因を探る。

 感想
 ホラー小説であるが、内容はそんなに怖くない。 怖いのは表紙の絵ぐらい。 死霊が誰かに取り付いて自己の欲求を満足するという設定は、「十三番目の人格 ISOLA」に似ているが、面白さは到底及ばない。 また奈美絵が死霊となり様々な怪奇現象を引き起こすが、彼女がそんな能力を身につけた背景などは描かれておらず、設定に不十分さを感じる。
 裏表紙には「ラストの大どんでん返しが、著者を待つ!」とかかれていたが、そんなことを感じさせる部分はなかった。 最後の数ページのどたばたやエンディングの切れの悪さが残念である。
(書評作成:2004年10月22日)
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姉妹−Two Sisters−

姉妹−Two Sisters−

おススメ度:(5点満点)

本体価格:743円+税
発行所  :角川ホラー文庫
発行日  :2004年7月25日
形態   :文庫・353ページ

ジャンル:ホラー小説、映画化された小説(映画名:箪笥)

目次
1.母とスミの恐ろしい童話  2.入り込んできた女  3.鈍い音
4.重複する記憶        5.緑色の闇       6.紅い象徴
7.忍耐の限界         8.最後の晩餐      9.ウンジュの青い鳥
10.最後の対決       11.襲いかかる真実
エピローグ.白い部屋
 内容
 韓国映画「箪笥」のノベライズ。
四歳違いの姉妹のスミとスヨンの母が病気になり、父は看護婦のウンジュを雇い入れる。母親気取りのウンジュをスミとスヨンは気に入らない。 母の病気が重くなり、やがて山間の寂しい一軒家で死んだ。 しかしスミは、母の死に関する記憶を一切失っていた。 その後、父とスミ、スヨンが問題の一軒家を訪れると、そこには事実上の継母としてウンジュが待ち構えていた。 折り合いのつかないウンジュとスミ、スヨンの姉妹間で争いが起こるのであるが、その争いには重大な秘密が隠されていた。

 感想
 たいていは話の中盤から終盤にかけて話の概要や謎の部分がおぼろげながら分かるものであるが、この本に関しては最後の最後まで分からなかった。 最後の大どんでん返しは読む価値あるというもの。 ただしこの本を読んでから映画を見ると映画を見る面白さは半減してしまうであろう。 映画を見てからこの本を見て謎の部分を理解するというのが正しい作品の楽しみ方であろう。 ホラー小説に分類されているがそんなに怖い部分はない。 怖いというより悲しい物語といったところか。
 話自体はオリジナリティがあり面白いが、映画「シックスセンス」に似た部分があるのがちょっと気になった。
(書評作成:2004年11月25日)
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怪物が覗く窓

怪物が覗く窓

おススメ度:(5点満点)

本体価格:495円+税
発行所  :集英社
発行日  :2008年10月25日
形態   :文庫・287ページ

ジャンル:ミステリー小説

目次
1.ラスト・メッセージ   2.死より怖い生   3.大雪の朝に
4.プールを泳ぐもの   5.誰にも言えない話
6.過去を持ってきた女  7.封印されていた記憶
8.地獄のクリスマス・イブ 9.禁断の森へ
10.メタル・ベンダーの怒り  11.最後の日記
12.嵐の夜のシューベルト
 内容
 良太は勉学に対する厳格な父への反発から、数年間引きこもり生活を送っていた。 父はそんな良太を「怪物」と呼び忌み嫌っている。
 そんなある日、良太の隣家に若くて美しい女性・玲美が引っ越してきた。 良太は玲美と話したいという想いから久々に部屋から出るのであった。 玲美と話すことに成功した良太であったが、その後玲美が何者かに殺され、良太に殺人容疑がかかる。

 感想
 ミステリーとしても、また人間関係を描いたサスペンスものとしても楽しめる。 ストーリーは次々と展開していくので、一気に読みきってしまった。
 ただちょっと残念なのはミステリーとして考えた場合にはちょっと一本調子の感があり、もう一ひねりがあればさらに面白いのにという点。
 また登場人物自体は非常に少ないのであるが、それらのキャラクターの位置づけや役割があいまいであったということ。 唯一しっかりと描ききられていたのは、主人公の父だけだったような気がする。
(書評作成:2009年4月4日)
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十津川温泉殺人事件

十津川温泉殺人事件

おススメ度:(5点満点)

本体価格:800円+税
発行所  :実業之日本社
発行日  :2002年7月25日
形態   :新書・284ページ

ジャンル:ミステリー小説

目次
プロローグ 黄金の左足
第一章 十津川温泉へ
第二章 三本足の八咫烏
第三章 谷瀬の吊り橋
読者への挑戦
第四章 キックオフ
第五章 ミスジャッジ
エピローグ 幸福の絶対値
 内容
 日韓共催W杯でチュニジアを2―0で破った夜、渋谷で黄金色に彩られた男性の左足首が見つかった。 その四カ月後、那智・熊野方面へ休養の旅に出た志垣警部と和久井刑事は、十津川村で金色に彩られた右足首を発見した。 さらに北海道・小樽で第三の足が見つかった。

 感想
 日韓共催のW杯と、殺人事件のミステリーを関連つけようとした意欲作であるが、非常に残念な作品になっている。 刑事が休暇に出かけ、その休暇先でその刑事たちが追っていた殺人事件に関連した証拠品が見つかるという、”超”が付くほどのご都合主義。 また通常は数少ない証拠から犯人を推理していくのがミステリーの基本であり、常套手段であるが、本書では唐突に犯人が名乗り出てしまうというミステリーにあるまじきストーリー。 まったく読む価値なしである。
 あとがきで、著者はW杯からわずか半年後に本書を出版したことをさもすごいことのように書いているが、それならばたとえ1年かかってもいいので、もっと読む価値のある完成度のある作品に仕上げてもらいたいと思う。 繰り返しになるが、まったく読む価値のない本である。
(書評作成:2009年12月13日)
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