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横山秀夫さんの本の書評

 

横山秀夫 (よこやま ひでお)

 
(プロフィール)
1957年東京生まれ。国際商科大学卒業後、上毛新聞社に入社。
1991年「ルパンの消息」が第9回サントリーミステリー大賞佳作となりフリーライターに。
1998年「陰の季節」で第5回松本清張賞受賞。2000年「動機」で第53回日本推理作家協会賞・短篇部門受賞。
 
【D県警シリーズ】
陰の季節  動機  顔 FACE
【F県警強行犯シリーズ】
第三の時効
【その他】
半落ち  深追い  真相  クライマーズ・ハイ  影踏み  看守眼  臨場  出口のない海  ルパンの消息  震度0
 
  
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陰の季節

陰の季節

おススメ度:(5点満点)

本体価格:448円
発行所  :文春文庫
発行日  :2001年10月
形態   :文庫・247ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説

目次
陰の季節
地の声
黒い線
 内容
4本のミステリー小説を収録した短篇集。第5回松本清張賞受賞作品。
陰の季節
警察の人事を担当する二渡調査官は、任期満了後も天下り先のポストに固執する警察大物OB尾坂部の説得に当たる。 説得に応じない尾坂部について調査するうちに二渡はある事件に行き当たり、そこに尾坂部がポストにしがみつく理由があることに気付く。
地の声
警務部監察課に警察官の不祥事を垂れ込む怪文書が舞い込む。 調査を命じられた新藤監察官は垂れ込み文書の真相について調査を進める。
黒い線
似顔絵により犯人逮捕に貢献した婦警が突然失踪した。 失踪の動機について七尾婦警担当係長が調査する。

警務部秘書課の柘植は県議会の「議会対策」が職務である。 県議会において鵜飼議員が警察が困る「爆弾」の質問をするといううわさを聞きつけ、鵜飼議員への説得と質問の内容について調査を進める。

 感想
 全て警察を舞台にしたミステリーでありながら、他の警察小説と異なり管理部門の人間を主人公であるという異色の小説である。 また一般的な警察小説であれば何か事件(殺人事件など)が起こって犯人の逮捕に向けて話が展開される野が普通であるが、この小説では描かれているのはすべて警察の内部事情でありしかも誰一人として逮捕されない(犯人と呼べる人は存在しない)というかなり変わり者の小説である。 話の設定や展開は非常に新鮮であり、超お勧めの作品といえる。
(書評作成:2004年1月13日)
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動機

動機

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円
発行所  :文春文庫
発行日  :2002年11月
形態   :文庫・312ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説

目次
動機
逆転の夏
ネタ元
密室の人
 内容
 4本のミステリー小説を収録した短篇集。 第53回日本推理作家協会賞・短篇部門受賞作品。
動機
警察署内で一括管理されている30冊の警察手帳が紛失した。 外部犯行か、内部犯行か?一括管理することを提案した貝瀬調査官が、二日間という限られた時間の中で事件の真相と動機について調査する。
逆転の夏
葬儀会社に勤める山本は女子高生殺しの前科を持つ。 そんな彼の元に匿名の殺人依頼の電話が鳴る。 自らの犯した罪、崩壊した家庭、そして突拍子もない殺人依頼の狭間で苦悩する山本の姿を描く。
ネタ元
男社会である事件記者を職業とする女性記者の苦悩と悲哀を描いた作品。 女性記者水島は自らが書いた記事のため、新聞の部数を減らすという事態を起こし、汚名返上のため主婦殺しの事件を追う。 そんな彼女の元に他の新聞社から引き抜きの話が舞い込む。 なぜ自分がという気持ちとこの機会を逃してはという気持ちから彼女が導き出した結論と彼女のとった行動とは・・・。
密室の人
裁判官安斎は公判の途中で居眠りをし、さらに妻の名前を寝言で言うという失敗をしてしまった。 その失敗が元で安斎は絶体絶命のピンチに立たされるが、居眠りの裏には秘密と複雑な人間関係があった。

 感想
 短篇集ということで、1篇は100ページ足らずであるが非常にうまくまとめられておりいずれの作品も一気に、楽しく読めた。 少ないページで起承転結のすべてのストーリーが完結しているのは見事。 しかも4篇とも主人公の立場が違う(動機→調査官、逆転の夏→刑期を終えた中年男性、ネタ元→女性記者、密室の人→裁判官)ため、いずれの作品も違った視線で読むことができ新鮮な気分で読めた。 お勧めの本であるといえる。
(書評作成:2004年1月4日)
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顔 FACE

顔 FACE

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,680円(税込み)
発行所  :徳間書店
発行日  :2002年10月31日
形態   :単行本・285ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説

目次
プロローグ
魔女狩り
決別の春
疑惑のデッサン
共犯者
心の銃口
エピローグ
 内容
 『陰の季節』における「黒い線」に登場した婦警・平野瑞穂を主人公にした短篇集。 男社会である警察において、女であるということで軽く見られることに対して寂しさと苛立ちを覚える平野瑞穂が、過去に起こした不祥事から立ち直る様を描いている。

 感想
 婦警という男性警察官に比べ軽んじられる立場でありながら、正義を守るため悪に立ち向かう平野瑞穂の頑張り、苦悩、成長の様子がよく分かる。 一人の人物にのみ着目するという点では、横山氏の作品の中では異色である。 その分一人の人物像が他の作品に比べよく現れており、またその人物の成長の様子が見て取れるという意味では他の横山氏の作品よりも感情移入しやすいといえるであろう。
(書評作成:2004年1月13日)
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第三の時効

第三の時効

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円
発行所  :集英社
発行日  :2003年2月10日
形態   :単行本・324ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説

目次
沈黙のアリバイ
第三の時効
囚人のジレンマ
密室の抜け穴
ペルソナの微笑
モノクロームの反転
 内容
 F県警捜査第一課を舞台として、個性(人間性、捜査手法)豊かな3人の班長(朽木・楠見・村瀬)に率いられた強行犯の刑事たちが、覇権を激しく競い合い難事件に挑む話を描いた短篇集。。
沈黙のアリバイ
現金輸送車襲撃事件の犯人を自白させ、裁判に送り込んだまではよかったが、犯人はアリバイがあることを口実に無罪を主張した。 一班班長の朽木はそのアリバイの謎に挑む。
第三の時効
タクシー運転手殺しの時効が迫っていた。 犯人逮捕のために二班班長の楠見は奇想天外なトリックを仕掛ける。
囚人のジレンマ
三件の殺人事件がほぼ同時に起こり、三人の班長は互いにライバル心を燃やして我先にと事件の解決をもくろむ。 彼らの上司である捜査一課長の苦悩を描く。
密室の抜け穴
死体遺棄事件の容疑者が、潜伏先のマンションが包囲されながらも(いわば密室)、逃亡に成功する事態が発生した。 密室からの脱出のからくりを三班班長の村瀬があばく。
ペルソナの微笑
青酸カリを用いた殺人事件が発生した。 過去にも同様の事件が発生しておりいまだ解決されていない。 その事件との関連より事件の背景、動機について解明する。
モノクロームの反転
一家3人が惨殺される事件が発生した。 捜査一課長は一班と三班に同時に事件の捜査を命じる。 一班と三版は事件の功をめぐってライバル心むき出しに捜査を進める。

 感想
 横山氏には珍しく刑事の警察小説である。 三人の班長が個性豊かに描かれており、彼らの人間性を見るだけでも読む価値有りといえる。 ハードボイルドな主人公たちがうまく描かれており、非常に面白い。
 ただ、彼ら班長の(直感的な)能力によって事件が解決できている側面が強く、名探偵コナンや古畑任三郎のような出来レース的な感がしたのは残念である。
(書評作成:2004年5月6日)
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半落ち

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円
発行所  :講談社
発行日  :2002年9月
形態   :単行本・297ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、映画化・ドラマ化された小説

目次
志木和正の章
佐瀬銛男の章
中尾洋平の章
植村  学の章
藤林圭吾の章
古賀誠司の章
 内容
 病気の妻に頼まれて殺害した警察官の梶聡一郎。 ただし警察に出頭したのは殺害から2日後である。 容疑については全面的に認めているが、2日間の行動については完全に黙秘してしまう「半落ち」状態。
この2日間の行動、その理由について刑事、検事、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務所看守がそれぞれの立場から真理を追究する。

 感想
 柴田恭平、寺尾聡主演で映画化されるとのことから読んでみた。 約300ページのボリュームであったが、一晩で一気に読みきってしまった。 「半落ち」の真相については、最後の最後まで読んでしまわないと分からないという点では少しまどろっこしく思われたが、全体としては楽しく読めた。 ただラストは賛否両論があり納得できない人も多いかも(半落ちであり続けなければならないほどの理由だったのか?別に自白しても問題ないんじゃないの?)。 ただ大体が楽しく読み進むことができた。 この本が私にとって横山秀夫デビューであったが、他の本も読んでみたいと思った。
(書評作成:2004年1月4日)
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深追い

深追い

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円
発行所  :実業之日本社
発行日  :2002年12月
形態   :単行本・312ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
深追い
又聞き
引き継ぎ
訳あり
締め出し
仕返し
人ごと
 内容
 地方都市の警察署「三ツ鐘署」を舞台に起こる事故と事件を題材にした7つの警察小説の短篇集。

深追い
交通課の秋葉は交通事故死した男のポケベルを拾う。 そのポケベルには毎日、夕ご飯のメニューを知らせる伝言が着信される。 またその男の妻はかつての同級生であった。 ポケベルの着信に興味を持った秋葉は独自に調査を行う。
又聞き
鑑識係の三枝はかつて小学生のときに海におぼれ、そのとき助けに入った大学生が水死してしまうという過去を持つ。 それ以来、毎年事故があった日に大学生の実家を供養のために訪れる。 そして事故の背景についてちょっとした疑問を持ち、調査を行う。
引き継ぎ
刑事課の尾花は親子揃っての刑事である。 「検挙推進月間」でまだ一人も検挙できない尾花は父から引き継いだノートを元に捜査を行う。
訳有り
警務係の滝沢は、上司にたてついたために三ツ鐘署に左遷された。 腐っている滝沢に同期の同僚から、県警本部への復帰を交換材料としてキャリア組の課長の身辺を調査する仕事を依頼される。
締め出し
少年係の三田村が不良少年を取り調べている最中に、強盗殺人事件が発生した。 その連絡に取調べ中の不良少年が反応したのを見て、その事件に興味を持つ。 県警本部から事件捜査の妨害(締め出し)を受けながらも独自に捜査を進める。
仕返し
ホームレスが死亡する事故が発生した。 警察署次長の的場はマスコミ向けの資料を作りながら、事故の事件性の有無について疑問と不安を抱く。
人ごと
会計係の西脇はガーデニングが趣味である。 彼の元に彼の行きつけのガーデニングショップの会員カードが入った財布の拾得物が届けられる。 財布の持ち主を確かめるため、ガーデニングショップを訪れ、持ち主が判明する。

 感想
 「陰の季節」と同様に、ひとつの警察署の中のいろいろな部署に勤務する人に焦点を当てて、その人物の人柄や背景について述べている小説である。 普通の警察ドラマではまず取り上げられることのない部署について書かれており面白い。 最後で話が急展開するため読んでいても飽きない。 陰の季節をはじめて読んだときほどのインパクトはなかったが、非常に良質の小説であることは間違いない。
(書評作成:2004年3月27日)
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真相

真相

おススメ度:(5点満点)

本体価格:619円+税
発行所  :角川文庫
発行日  :2002年5月25日
形態   :文庫・282ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
真相
18番ホール
不眠
花輪の海
他人の家
 内容
 事件の裏側にある真相に焦点を当てた5つの短篇集。

真相
最愛の息子を殺した犯人が10年ぶりに逮捕された。 しかし犯人の口から出てきた言葉は思いがけないものであった。 10年前の事件にはどんな「真相」が隠されていたのか?
18番ホール
県庁の仕事を捨ててまで村長選挙に立候補した男。 男が立候補しなければならなかった「真相」は題名になっている「18番ホール」に隠されていた。
不眠
仕事をリストラされた男はアルバイトとして薬の臨床実験の被験者となった。 その副作用で不眠になった男は、散歩中にある事件に遭遇(目撃)する。 やがて男の証言をもとに一人の男が逮捕されたが、その事件の背後には思わぬ「真相」が隠されていた。
花輪の海
大学の空手部の合宿中に、練習中のしごきに起因する一人が死亡する事故が発生した。 その事故から10数年後、その事故の「真相」が明らかとなる。
他人の家
ふとしたことから起こしてしまった強盗事件により社会的に隔離されつつある夫婦。 彼らは自らの罪を悔い、奉仕作業にいそしむ。 しかしインターネットを介した風評のため、住む場所もまた仕事も追われつつあった。 そんな彼らを見かねた老人が養子にすることを提案する。 しかしそんな心温まる申し出の背後には、ある「真相」が隠されていた。

 感想
 「真相」をキーワードにした短篇5篇。 一つ一つの話は実によくできていて読み飽きない。 最後の真相の部分は結構予期できぬことで最後の最後まで息をつかせぬ展開である。 特に「18番ホール」は、どんなエンディングにするのか最後のページまで分からなかった。 最後は「こんなエンディングもありか」と、よい意味で想像を裏切る終わり方である。 ただ他の横山氏の傑作に比べると読後の印象が薄い点は星1つの減点材料である。
(書評作成:2011年1月22日)
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クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,571円
発行所  :文藝春秋
発行日  :2003年8月25日
形態   :単行本・421ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 北関東新聞社の記者、悠木は同僚の安西に谷川岳への登山(実際にはロッククライミング)に誘われる。 出発の前夜、未曾有の大事故・日航機墜落が起こり悠木は登山に行けなかった。 一方の安西も病のため意識不明となる。
 日航機事故から17年後、悠木は再び安西との約束である谷川岳登山に向かう。 その登山の様子について描くとともに、日航機墜落事故の報道に関する記者たちの確執、悠木が抱える家族の問題について描いている。

 感想
 横山氏といえば、警察小説が真っ先に思い浮かぶが、本書は警察と全く関係のない新聞記者の話である。 しかし横山氏は元新聞記者ということもあり、話は生々しく新聞記事の裏側にある記者の人間性のようなものが垣間見えたような気がする。 本当にこの小説に書いてあるような世界ならば新聞記者の世界というのは華やかなところではなく、かなりどろどろしたところなのであろう。 また本書では日航機墜落事故を題材にしているが、新聞記事などではうかがい知ることのできなかったかなり生々しい様子が見て取れた。 警察小説だけでなくこのような小説においても、人間性・人間関係の描写において横山氏の才能はすごいと思った。
(書評作成:2004年3月27日)
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影踏み

影踏み

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円+税
発行所  :祥伝社
発行日  :2003年11月20日
形態   :単行本・328ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
消息
刻印
抱擁
業火
使徒
遺言
行方
 内容
 法曹界を目指していた真壁。 しかし彼の前途は、彼の双子の弟が空き巣を行い、それを悲観した母親が家に火をつけ、弟と父、母を同時に失うという痛ましい事件で突然閉ざされてしまう。 それから15年後、彼は寝静まった家に忍び入り盗みを行う「ノビ師」を家業としていた。 また彼の頭の中には突然命をたたれ行き場を失った弟の霊が宿っていた。

 感想
 横山氏の小説にしてはオカルト的な要素を含む異色の作品である。 またこれまでの警察小説とは正反対に泥棒を主人公としている点でも異色である。
 肝心の内容であるが、登場人物の数もそんな多くないためにストーリーが頭の中に入ってきやすく、また話の展開がスピーディであり読むのをやめられないほどの面白さである。 実際一日ですべて読みきってしまった。 とくに「使徒」の話はちょっと感動ものであった。
(書評作成:2004年10月10日)
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看守眼

看守眼

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円+税
発行所  :新潮社
発行日  :2004年1月15日
形態   :単行本・281ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
看守眼
自伝
口癖
午前五時の侵入者
静かな家
秘書課の男
 内容
看守眼
いつか刑事になることを夢見ながら夢かなわず定年を迎えた留置管理係(看守)が、看守としての勘(看守眼)により、迷宮入りした殺人事件の真相を探る。
自伝
これまで不幸な人生を送ってきたライター・只野のもとに、300万円の報酬で自伝の執筆の依頼が舞い込む。 そこで只野は依頼者の秘密を知り思い悩む。
口癖
家裁の家事調停委員を務める主婦のもとに、かつて自分の娘を不登校に追いやった女の離婚調停の依頼が舞い込む。
午前五時の侵入者
警察のホームページが書き換えられる事件が発生した。 警察の面子にかけてホームページを書き換えたクラッカーの追跡と事件の揉み消しがはかられた。
静かな家
新聞の編集上のミスから新聞に誤った記事が載ってしまった。 苦情を恐れた編集者はミスの揉み消しをはかるが、それにより殺人事件に巻き込まれてしまう。
秘書課の男
知事の秘書を勤める倉内は、ある日を境に自分に対する知事の態度が冷たくなったことに気づく。 そこには秘書課内の人間関係が影響していた。

 感想
 例のごとくの短篇集である。 一篇々々の話は面白くさすが横山氏といわせるものがある。 ただ残念なのはこれまでの短篇集と異なり、一篇々々の話のつながりがなく1冊の本としてのまとまりに欠けている点である。 また事件についても完全に解決しているわけではなく、最後は状況証拠からの想像に留まっている点も残念である。 ただ「看守眼」と「静かな家」は謎解きの要素があり、面白く読むことができた。
(書評作成:2004年8月25日)
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臨場

臨場

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円+税
発行所  :光文社
発行日  :2004年4月20日
形態   :単行本・329ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、映画化・ドラマ化された小説

目次
赤い名刺
眼前の密室
鉢植えの女


真夜中の調書
黒星
十七年蝉
 内容
 臨場−警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることを言う。
”終身検査官”の異名をとる倉石の活躍を描く、8篇の短篇集。 神がかり的な倉石の事件解決のテクニック、事件の真相、裏側について描く。

 感想
 物語の主人公は「終身検視官」の倉石であるが、いずれの話においても倉石の周囲にいる第3者の目を通して倉石の事件を客観的にみる描き方になっている。 そのおかげで倉石の存在のミステリアスさ、ハードボイルドさが引き立つ形になっており好ましい。 また事件の背後にあるトリックも簡単には分からない仕掛けになっており、最後まで息をつかせない構成になっている。 特に、「鉢植えの女」、「餞」、「黒星」の話が面白かった。
(書評作成:2004年8月25日)
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出口のない海

出口のない海

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,700円+税
発行所  :講談社
発行日  :2004年8月9日
形態   :単行本・301ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、映画化された小説
 内容
 甲子園の優勝投手・並木浩二は大学入学後、ヒジを故障する。 野球への夢が捨てられず、新しい変化球(魔球)の完成に復活をかけていた。 しかし日米開戦を機に彼の夢は時代にのみ込まれていく。 学徒出陣で海軍に配備された彼に待ち受けていたのは、「回天」という人間魚雷にのって自爆するという死への進路であった。 なぜ戦争するのかという葛藤、魔球への夢、愛する幼なじみへの想い、様々な感情の中で揺れる様子を描いている。

 感想
 戦争について深く考えさせられてしまった。 「回天」の存在は、自爆テロ(テロという言い方は適当じゃないかもしれない)にゆれる現在の世界そのものが、すでに60年前の日本に存在していたからである。 何のために死ぬのか、それが世界情勢全体から考えた場合どの程度のインパクトを持つのか? この本を読んだだけではそれについて明確な回答は得られないかもしれないが、少なくとも考えるきっかけは与えてくれる。
 物語の題材は非常にすばらしく、また戦争と直接つながらないと思われる野球の話を絡めてくるあたりは、設定として新鮮でさすが横山氏と思わさせる。 しかし最後の並木の処遇についてはちょっと消化不良であり、彼の感情を通じて戦争に対する矛盾を描くという目標は果たして達成されたのかな、という感が残った。
(書評作成:2004年10月15日)
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ルパンの消息

ルパンの消息

おススメ度:(5点満点)

本体価格:876円+税
発行所  :光文社
発行日  :2005年5月25日
形態   :新書・331ページ

ジャンル:ミステリー小説、ドラマ化された小説

目次
第1章 タレ込み
第2章 ルパン作戦
第3章 決行
第4章 弔い合戦
第5章 追跡
第6章 氷解点
第7章 時の巣窟
 内容
 15年前に起こった女性教諭の自殺は実は他殺だったというタレ込みが、その事件が時効を迎える前日に警察にもたらされた。 しかも犯人は教え子の男子高校生3人であるという。 時効まで24時間を切った捜査陣は事件解明に全力を注ぎ、女性教諭の死と深く関係する「ルパン作戦」に遡っていく。

 感想
 時効までわずか24時間、事件の解決の糸口は出所不明のタレ込みと、15年の歳月を経た当事者の自白のみ、という限りなく絶望的な状況、緊迫感がよく表現されている。
一ひねりもふたひねりもあり読んでいて飽きない。 文の量は比較的多いが一気に読みきってしまった。 横山氏の本の中では比較的安価であり、コストパフォーマンスにも優れ、オススメの本である。
(書評作成:2005年8月17日)
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震度0

震度0

おススメ度:(5点満点)

本体価格:1,800円+税
発行所  :朝日新聞社
発行日  :2005年7月30日
形態   :単行本・410ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説
 内容
 阪神淡路大震災が起こった当日、N県警本部の警務課長の不破が失踪した。 不破はどこにいるのか?不破はなぜ姿を消したのか? N県警本部のキャリア組、ノンキャリア組の6人の幹部同士の思惑も絡み合い、事件の真相はなかなか見えてこない。

 感想
 ページ数も多く読むのに骨が折れたが、非常に面白かった。 横山氏得意の警察の事務方を舞台にした小説である。 事件は不破の失踪という単純なものながら、一癖もふた癖もある面々の思惑、過去の事件も絡み、すごく複雑かつ深みがあるものになっている。 終盤までは話の流れはスローであるが、ラストの怒涛の展開と驚愕の真相にはさすがとうならされた。
 本作品は警察のキャリア組とノンキャリア組の対立という点では、「踊る大捜査線シリーズ」とテーマは同じである。 ただし「踊る大捜査線」では、事件は現場で起こっているのに対し、本作品では事件は会議室で起こっている。 「踊る大捜査線」のテーマも面白かったが、それとは全く逆の側面から事件を描いている本作品も非常に面白いと思った。
(書評作成:2007年4月21日)
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