第434回定期演奏会 <2010.1.21-22>

指揮:尾高忠明

メゾ・ソプラノ:重松みか

エルガー作曲 「海の絵(Sea Pictures)」 作品37
エルガー作曲 交響曲第2番 変ホ長調 作品63

ELGAR(1857-1934) 尾高忠明

エルガーの作品で普段耳にする曲と言えば、「愛の挨拶」「威風堂々」「エニグマ変奏曲」と言ったところ。
最近ではこの作曲家も取り上げられることが多くなってきて、彼の代表作とも言える交響曲第2番も演奏会で取り上げられるようになって来た。
日本ではドイツ音楽が中心で、西洋音楽の中でイギリス音楽が好んで聴かれるという状況はなかったのですが、今回の指揮者尾高忠明がBBCウェールズ交響楽団で長年指揮し、日本にエルガーを広めるきっかけを作ったと言えるかもしれません。
いわばエルガーのスペシャリスト、尾高忠明の“正統的エルガー”演奏会です。

最初の歌曲集“海の絵”は、エルガー夫妻がイタリアを訪れたとき、アリス夫人が書いた詩にエルガーが作曲したものをもとに、オーケストラ伴奏つきの歌曲集にまとめたもので、実際に聞くのは初めてですが、実に穏やかな良い曲。
歌曲だから歌が中心なのですが、伴奏のオーケストラを聴くとこれが実に素敵な音楽。
題名の通り穏やかな海の様子を音楽にしており、オーケストラが実に色彩豊かに一幅の絵を見せてくれます。
第2曲の「港にて」のチャーミングな終わり方なんか、チャーミングで心がふっと軽くなるような気がします。
メゾ・ソプラノ重松さんの歌も曲想にあったいい声でよかったのですが、いくぶん声量が小さくてやや聞き取りにくいと言う感じは残りました。
オーケストラだけでも十分楽しめる音楽になってたのではないでしょうか?

メインの交響曲第2番を実際に聴くのも初めて。
2年前に尾高さんはこの定期で、エルガーの未完の交響曲第3番を取り上げており、今回の演奏も同じような印象だった。
指揮者としてはさすがに堂に入ったもので、オーケストラをしっかり掌握して安心感は抜群。
演奏は素晴らしかったのですが、なんと言ってもこちらにイギリス音楽に対する愛着があまりないために、心に沁みこんでくるものが少なかった。
「威風堂々」という行進曲でさえどこか気取ったような音楽に思えるし、「エニグマ変奏曲」も今一歩の距離を感じてしまうのです。
この交響曲も終楽章がモデラートということで、ドイツ音楽のような迫力・歓喜・頂上というイメージではないので、盛り上がれないのです。
音楽に精神性を求めるのが良いのか悪いのかわかりませんが、高揚感を持って音楽が終わるのが一番楽しいので、そうでないならば、たとえばチャイコフスキーの「悲愴」のように徹底的に暗い音楽であればそれなりに心に響きます。
私にとってイギリス音楽は中途半端な気分になるのかもしれません・・・・