第435回定期演奏会 <2010.2.17-18>
指揮:大植英次
ピアノ:F.ピエモンテーシ
シューマン作曲 |
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ピアノ協奏曲 イ短調 作品64 |
リヒャルト・シュトラウス作曲 |
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アルプス交響曲 作品64
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SCHUMANN(1810-1856) |
R.STRAUSS(1864-1949) |
R.Straussの作品を演奏するのは、指揮者にとって非常に楽しいだろうなと思います。
特にこの「アルプス交響曲」や「英雄の生涯」「ツァラトゥーストラはかく語りき」という大作は、大編成のオーケストラを使い、演奏効果の高まる曲なので、腕自慢の指揮者が好んで取り上げるようです。
大植英次の演奏スタイルからすれば、シュトラウス作品は大好きなはず。
「私には、音で表現できないものは何もない」と豪語するだけあって、風景・物語・哲学的観念をものの見事にオーケストラや歌で表現しようとした彼にとって、アルプスの風景を音で表現することはごく当たり前のことなのかもしれません。
たくさんの打楽器、ホルン群を縦横に駆使し、オルガンの壮麗な響きまで加えた一大パノラマが眼前に浮かんでくるように、大フィルをコントロールした大植英次の指揮は、さすがと言わざるを得ません。
夜の闇が少しずつ明けてゆく場面に始まり、登山者が歩いて上る姿、途中花の咲く牧場や森を通り抜け、徐徐に険しい山に分け入る様子、
ようやくの思いで頂上にたどり着いた様子、雷鳴がとどろき嵐の中を下山してゆく・・・・
こんなストーリーをオーケストラで克明に表現したシュトラウスの音楽を大植英次は最後まで力を抜くことなく、一気呵成に聞かせることに成功!
やはり彼の本領はこういう音楽だとつくづく感じました。
オーケストラに酔うという意味では素晴らしい演奏です。
大フィルも熱演で、一番心配だったホルンが結構頑張ったし、トランペットもしっかりしてた。
この曲は朝比奈も取り上げており、特に1997年の大フィル創立50周年記念演奏会で指揮したものがビデオで残っているはずなので、二人の違いを比較して聴いてみるのも面白いかなと思います。
でも、
R.Straussの音楽はやはり苦手な部類の音楽なので、オーケストラを聞く醍醐味という意味では十分満足できましたが、素晴らしい音楽を聴いたという充実感はそれほど感じなかったというのが正直な感想で、こればかりはどうしようもありません。
この日の演奏会で期待してたのはメインのアルプス交響曲ではなくて、前半のシューマンのピアノ協奏曲でした。
今年生誕200周年という記念の年、シューマンを耳にすることは多いと思いますが、このピアノ協奏曲は、むせ返るようなロマンいっぱいの曲で、クラシック音楽を聞き始めた若い頃に何度も聴いた、ディヌ・リパッティとカラヤンによるLPレコードの演奏が未だに忘れられません。
大きな期待を持っていたのですが、最初のオーケストラの一撃とその後のピアノの応答、そしてオーボエによる主題のなんとも言えない懐かしいテーマがこの曲のすべてを語ってると思うのですが、この日の演奏ではこの部分がいまひとつ心に響いてきません。
そのあとも大フィルの演奏がやや散漫な響きに終始し、やや興ざめ・・・
まだ20代のピエモンテーシのピアノは、派手な演奏ではなく誠実で綺麗な音を聞かせるタイプ。
こういうピアノに合わせるにはオーケストラの人数が多すぎるように思います。もう少し小さな編成でやったほうがまとまりのある音楽になると思うのですが、大きな編成のせいなのかどうかわかりませんがややまとまりを欠くアンサンブルで、シューマンのロマンを満喫するまでにはいたりませんでした。
アンコールでは、ピエモンテーシと大植英次が連弾でブラームスのハンガリー舞曲を楽しく聞かせてくれました。
演奏そのものよりも、ショーとして楽しめました。