第430回定期演奏会 <2009.7.28-29>
指揮:大植英次
ヴァイオリン:クリストフ・ヴァラーティ
オルガン:室住素子
パガニーニ作曲 |
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ヴァイオリン協奏曲第1番二長調 作品6 |
サン・サーンス作曲 |
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交響曲第3番ハ短調 作品78 |
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大植英次 |
サン・サーンス |
前回、サン・サーンスの交響曲をメインにしたコンサートはあまり期待してないという記事を書きました。
大植英次指揮大阪フィルの演奏でそのプログラムを聴いてきました。
予想とは大きく違い、大満足の一夜でした。
前半はパガニーニのヴァイオリン協奏曲。
曲は予想通りそれほど楽しめるものではありません。
打楽器が多用されていて、その効果よりもマイナスのほうが多いような感じを受けるオーケストレーション。
若くて腕の立つヴァイオリン奏者がその腕前を披露する、位の軽い気持ちで聴いてました。
音が綺麗で技術的にも完璧、でもそれを誇示するような気配はまったくない。
ただひたすら楽譜を音にするだけ、とでもいうような端正な演奏で、汚い音がまったくしないので安心して音楽に浸れます。
音が本当に綺麗で、大男がおもちゃの楽器を奏でてるというアンバランスな視覚とはまさに正反対の演奏です。
いくぶんおとなしく、自己主張がもっとあってもいいのに・・・という印象はありましたが、非常に共感の持てるヴァイオリニストです。
アンコールに2曲演奏しましたが、バッハよりイザイの方が聴き応えありました。
そして後半のサンサーンス。
研ぎ澄まされた弦のアンサンブルが、静かにフランスのエスプリを感じさせる。
大植英次はフランス音楽の洗練された音にこだわります。
オーケストラはその見事に調和した音で進んでいきます。
でも、フランス風の洗練されただけでないのが今回の大植英次の演奏。
しっかり練習を重ねたと思われる弦楽器の透明な音が基本にあるんだけど、洒落たフランス風の音楽作りではなく、がっしりしたドイツ音楽を思わせるような響きでもあり、フランス風でもドイツ風でもない独特の音楽を作り上げていたようです。
スケルツォのリズム、明瞭に刻まれてるんだけどしっかり腰をすえたようなテンポが絶妙で、決して急がないところがいい。
聞かせどころのオルガンとオーケストラの協演は、まさに饗宴!
第2楽章の第2部(通常の交響曲の第4楽章)は、オルガンの強烈な音で始まり、続くオーケストラの部分がやや押されぎみだが、徐々にバランスの取れた協演になっていき、ゆったりとしたテンポで素晴らしい盛り上がりになっていきました。
オルガンと弦を中心にしたオーケストラの緻密なアンサンブルが見事に掛け合いを演じるのは、大植英次のバランス感覚のよさだと思います。
この部分では、ピアノが連弾で漣のような軽やかな合いの手が入るのですが、これが実に効果的で、壮麗な響きの中に一陣の涼風がさっと吹き込んでくるような爽やかさいっぱいの幸福感が得られました。
オルガンの大音響を聞かせるだけの音楽という意識が少しあったけど、予想を遥かに上回る感動がありました。
<派手な音楽を何でプログラムに組んだんだろう?>と、ちょっと大植英次さんに不満があったのですが、こんなに楽しめる演奏なら文句なしです。
ダイエットしたという細身の大植英次、顔色もよく、音楽に活気もあり安心しました。
数ヶ月前の様子では、今年は<大阪クラシック>も無理じゃないかなと思ってましたが、この日の指揮ぶりだったら問題なく盛り上げてくれることでしょう。。
音楽が大きく変わりつつある彼の今後が楽しみです。