第428回定期演奏会 <2009.5.26-27>
指揮:ヨナス・アルバー
コダーイ作曲 |
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ガランタ舞曲
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リゲティ作曲 |
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ヴァイオリン協奏曲 |
ラフマニノフ作曲 |
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交響曲第3番イ短調作品44 |
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RACHMANINOV |
Jonas Alber |
新型インフルエンザの騒動で、演奏会ができるかどうかが大きな問題でしたが、一応騒ぎも落ち着く様子で予定通り行われました。
ヨナス・アルバーなる指揮者は初めて聞く名前で、まだ30代の若手。
多少の不安はありましたが、若い音楽家の新鮮な音楽を聴くことは大変楽しみでもあります。
でも今回の目玉は何と言ってもヴァイオリンの庄司紗矢香さん。
10代でパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールに優勝してセンセイションを巻き起こしたのが10年前。
笑顔の素敵な少女がパガニーニを弾くというのが以外で、はたしてどんな音楽を奏でるのか興味を持っていました。
昨年だったか、テミルカーノフの指揮するサンクト・ペテルブルク・フィルと競演したチャイコフスキーの協奏曲がBSで放送され、非常にきれいな音を出すヴァイオリニストという印象を持ちました。
神尾真由子の豪快な演奏とはちがい、もっと繊細な感性の持ち主のように思えます。
実際にホールで聞いてみたらどうなんだろう?
大きな期待を抱かせてはくれますが、曲がリゲティの協奏曲という現代音楽で聞いたことのないものなので、果たしてどうなるか?
演奏会のメインはラフマニノフの交響曲ですが、聴き応えのあったのは庄司紗矢香のヴァイオリンでした。
このリゲティの協奏曲は1990年代の作品なので、「現代音楽」そのもの。
曲の良し悪しはよくわかりませんが、彼女のヴァイオリンは素晴らしいものでした。
小さな編成のオーケストラの弦楽奏者との掛け合いが、曖昧模糊とした世界を聞かせるところから始まるのですが、実に音がきれい!
コンサート・マスターの幸太君とのやり取りもあるのですが、結構鋭い音を聞かせる彼に決して負けてないし、早い動きから盛り上がっていくような部分でも、決して冷静さを失うことはなく、大きな音楽に聞こえます。
圧巻は終楽章のカデンツァ。
あの小さな体から本当にスケールの大きな演奏でした。
正直なところ、最初のコダーイの演奏が始まってしばらくしたころ、睡魔が襲ってきました。
そしてこの初めての曲は居眠りしながら聴くことになるかもしれないと思ってたのですが、演奏が始まるとそんな眠気はすぐに飛んでいってました。
なによりもその音が素晴らしくて、澄み切った透明度の高い音が、大きなホールを駆け巡るようです。
決して重くなく、そうかと言って軽さは微塵もない。曖昧さもまったく無くて技術的にも完璧。
この曲は数学的な要素を含む曲だと彼女はコメントしてますが、その意味はともかく、複雑な音の絡みを巧みにヴァイオリンで聴かせてくれました。
最近聴いた若いヴァイオリニストの中では、諏訪内晶子とヒラリー・ハーンの二人が素晴らしかったと記憶してますが、庄司紗矢香はこの二人に匹敵すると感じました。
神尾真由子のベートーヴェンは、ちょっと期待はずれだったので、この庄司紗矢香の演奏でベートーヴェンの協奏曲を聴いて見たい。
できれば小林研一郎の指揮で。
熱い音楽をどう演奏するのか、これから興味を持って聴いて見たい演奏家の一人です。
話が前後しますが、最初のコダーイの「ガランタ舞曲」は楽しく聴けました。
ハンガリーの民族音楽的な曲で、緩やかな部分と独特な軽快なリズムの部分の両方を楽しめました。
一方メインのラフマニノフの交響曲は、大植英次が振った2番の演奏のときほどの感動はありませんでした。
ヨナス・アルバーのメリハリの利いた指揮は悪くは無いのですが、ラフマニノフの叙情的な部分がやや物足りなくて、もう少し粘り気のある演奏のほうが聴きやすいような気がします。
誤解を恐れずにいうと、浪花節的な演奏の方がこの人の曲には合ってるように思います。
大阪フィルの演奏、全体的にはまとまったいい演奏でしたが、ヴァイオリンのアンサンブルが若干まとまりが悪いようでした。
リゲティの協奏曲で木管奏者たちがオカリナを吹くので、意外な楽器が聴けて楽しめました。