ブラームス作曲 | : | 交響曲第3番ヘ長調作品90 |
バーンスタイン作曲 | : | 組曲「キャンディード」 |
ストラヴィンスキー作曲 | : | バレエ組曲「火の鳥」(1919年版) |
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Brahms | Stravinsky |
シーズン最初の演奏会は、音楽監督大植英次の指揮でブラームスとストラヴィンスキーという、プログラムとしては珍しい構成です。
事前に予想していたのは、後半の2曲は間違いなく大植節を存分に楽しめる演奏になるけれど、前半のブラームスは<?>がつくのでは・・・・・
でも前回のマーラーの5番の演奏の後だから、大植英次の音楽作りが大きく変わってきた可能性があるので、ブラームスもひょっとしたら鋭く抉るような快演が期待できるかもしれない。
期待と不安がちょっと落ち着かない気分にさせてくれました。
まず前半のブラームスは予想していた通りの演奏でした。
ブラームスの4つの交響曲の中では一番演奏回数の少ない曲で、1番のように強烈なインパクトを与えるものでもありません。
第1楽章と終楽章が共に弱音で終わるので、こじんまりとした曲という印象を与えるのでしょう。
木管の和音の後、下降する主題が続きますがオーケストラがいくぶん硬めで、展開部に入るころにようやくスムーズに。
2楽章まではおとなしい演奏というか、正攻法の演奏です。
3楽章は非常に優美な音楽で、この主題は一度聞いたら絶対忘れることのないメロディーで、チェロが甘く切ない旋律を奏でます。
これをヴァイオリンが引き受けるころには、誰もがその切なさのとりこになってしまうはず。
後半ではこれをホルンが吹きオーボエに引き継ぐのですが、この日のホルンはしっかり吹いてくれました。
オーボエの切なさもしっかり届きました。
大植英次はこの楽章をもっともっとゆっくりと浪花節的(?)に聴かせてくれるんじゃないかとかすかに期待してたのですが、ごく普通に、でも十分に感情をこめた演奏に仕上げてました。
終楽章にきて少し表現が大きくなり、音楽の推進力が感じられました。オーケストラもここに来て完全燃焼した感じです。
2楽章以降をアタッカ(つづけて)で演奏したのは正解だと思います。まとまりのよい印象になりました。
後半はバーンスタインの「キャンディード」で始まります。
この「キャンディード」という作品はもともとミュージカルで、「ウェストサイド物語」のような有名な作品ではありませんが、その序曲は今でも頻繁に演奏され、オーケストラのアンコール・ピースの一つになってます。
逆に言うと序曲しか知らないという人が多い作品だと思います。
演奏会用の組曲としてまとめられたものを初めて聴いたわけですが、ウィンナ・ワルツ風の曲やスペイン風の音楽などがつづき、リラックスして楽しめるものでした。
大植英次が師匠バーンスタインの音楽を演奏することに、特別な感慨があったようです。
この組曲をバーンスタインは、大植英次のためにまとめなおしたらしく、楽譜には
<for Eiji Oue and the Minnesota Orchestra>
と書かれているようです。
大植英次がミネソタ管弦楽団の音楽監督だったときにバーンスタインが組曲にまとめて献呈(?)したのでしょう。
演奏終了後、コンサートマスターの幸太君の楽譜を取り上げ、しっかりと胸に抱いてた大植英次の姿は印象的でした。
師匠が自分のために作ってくれた作品を演奏できる喜びでいっぱいだったことでしょう。
最後のストラヴィンスキーの「火の鳥」は、予想通りの快演でした。
序奏に象徴されるような静かな部分と、<カスチェイの地獄の踊り>に代表される強烈なリズムの激しい音楽を見事に対比させて、静かな曲は闇夜の音楽のように静かに、激しい部分は狂気の一歩手前くらいの演奏でした。
こういう音楽は大植英次のもっとも得意とする分野だと思います。
前回、大植英次の痩せ細った体にびっくりしました。今回どんな姿を見せるのか大変気になってたのですが、見たところやはり痩せたままでした。
ただ指揮する姿はしっかりしていたし、元気の出るような演奏をしてくれたので一応心配はないのかなと一安心しています。
今年も「星空コンサート」をやるということなので、ヴァイタリティーはあるのかなと思います。
指揮者で50台前半といえばまだまだ働き盛りの年代、これからまだ数十年かけて円熟の域に入るわけですから、まだまだ頑張ってもらわないと!
まだまだ今のままでは、ベートーヴェン・ブラームス・ブルックナーというドイツ音楽でわれわれ聴衆を唸らせるには早すぎます。
円熟したときの演奏をどうしても聴いてみたい指揮者なので、精進して体力をつけてほしいと思います。
朝比奈隆は70台以降にあれだけ素晴らしい音楽を聴かせてくれたのです。
まだまだ50台は“若造”ですよ。
これから先、光り輝く音楽家になれる人です!
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