第421回定期演奏会 <2008.9.18-19>

指揮:ラドミル・エリシュカ

ドヴォルザーク作曲 序曲「自然の王国で」作品91
モーツァルト作曲 交響曲第38番二長調 K.504
ヤナーチェク作曲 「グラゴール・ミサ」

ソプラノ 慶児道代 アルト ヤナ・シコロヴァー
テノール ヴァレンティン・プロラット バリトン マルチン・グルバル
オルガン 室住素子
大阪フィルハーモニー合唱団


 チェコのベテラン指揮者エリシュカを招いて、ヤナーチェクの「グラゴール・ミサ」というちょっと地味なプログラム。
生で聴くのは初めて。
1976年にノイマン指揮チェコ・フィルの東京での演奏会の模様を録音したもの(エア・チェック)で聴いているので、親しみのある曲です。
通常のミサ曲はラテン語の典礼文がテキストになってますが、この曲はチェコ・スロバキアの言葉、というよりも古いスラブ語を使ったもので、我々日本人には全く馴染みのない言葉なので、解説を見ないと全くわかりません。
でもヤナーチェク(1854〜1928)の音楽は、スラブ音楽独特の響きとリズムを持った野性的とでも表現したらわかりやすい、そんな音楽で、彼の代表作である「シンフォニエッタ」や「タラス・ブーリバ」に共通する響きがあります。
民俗音楽としての語法や音使いがあるようです。

ミサ曲ということで、教会で演奏される静かな合唱曲というイメージとはかけ離れたもので、オルガンや金管が盛大に鳴り響き、野性味あふれる音の洪水は、オーケストラの醍醐味を味わえます。
声楽もソプラノ・テノールは時に絶唱するので、オペラやオラトリオという劇的な物語か?と思うような音楽です。
実際に聴いてみると、指揮者のエリシュカの見事なまでの統率力に圧倒されました。
独唱4人、大勢の合唱、パイプ・オルガン、フル編成のオーケストラを駆使して見事な演奏でした。
野性味あふれるヤナーチェクの独特の語法による演奏は、時に鋭く聴くものの心に突き刺さり、時に易しくいたわり、時には打楽器のリズムが生きるエネルギーを与えてくれる、そんな演奏でした。
野暮になることなく、かといって宗教臭くもない、素晴らしい音楽でした。
このエリシュカという指揮者、チェコを代表する指揮者という解説がありますが、今までその名前も知りませんでした。
今度札幌交響楽団の音楽監督に就任したようで、日本で急速にその知名度が上がったようです。

大阪フィルも熱演!
壮大なオルガンの響きが会場を圧倒する部分が2箇所あるのですが、それに負けないくらいの充実したオーケストラの音はりっぱでした。

前半のモーツァるでは、しなやかなアンサンブルという点で若干不満。
序奏は堂々とした響きでスケールの大きな音楽を予感させましたが、主部に入って弦楽器のしなやかなリズムが少々荒削りのアンサンブルという印象になってしまいました。
徐々にその荒さは取れてきたのは確かですが、モーツァルトの軽妙な音の遊びを楽しむところまでは行きませんでした。
たぶん、オーケストラの編成が大きすぎるからだと思うのですが・・・・・
モーツァルトのばあい、弦の数は少なめにしてアンサンブルの精度を上げることが必要なのではないでしょうか?
モーツァルトを楽しく聴けるようになると大阪フィルも<世界に通用するオーケストラ>になるのでは?