144.「え〜っ? レジ誤差発生で掃除の罰だって?」

内向きに過ぎた発想
某量販店のとある店でレジ誤差削減への取り組みとして、レジ誤差を1000円以上出した人に窓拭き掃除などを課すという取組がなされているという話を聞いた。
本社の指示とは思えないが、店の管理者の自発的指示だとしても、なんとも貧しい話だ。

量販店はどこでもレジ誤差の削減に一生懸命取り組んでいると思う。その理由は、塵も積もればなんとかやらで、全店のレジ誤差金額を集めるとかなりの金額になるのでそれを減らしたいという理由がひとつ。もうひとつは、レジ担当者の不正横領への牽制だ。しかし、レジ誤差削減コンクールなどの競争が行われる企業が多くあることを見るとその目的は損金の削減という内向きの要素が強い。

顧客の立場から言えば、つり銭を間違われるのは困るが(特につり銭不足の場合)、つり銭を間違って被害を受けるのはごく一部の人だ。顧客は、チェッカーが客の目を見て笑顔で挨拶し、適度の丁寧さとスピードで正確にレジ処理してくれることを期待するが、その比重は“笑顔でてきぱき”の部分が大きい。
それを担保するのは最終的には職場の雰囲気と個人のモチベーションである。

レジ誤差コンクールを一概に否定するものではないが、これが過ぎると顧客が求めるものと離れていって、レジ誤差が少ない人が優秀なチェッカーだということになりかねない。

顧客の目線は別にある
特定の店をよく利用する顧客は、食品レジに行くときにヒイキのチェッカーのところに並ぶ人が多い。またあのチェッカーのレジには絶対に行かないと決めている人も多いのだ。その人たちはけしてレジ誤差の少ない人を第1基準に上げている人はいないだろう。
顧客にとってレジでの金勘定に間違いがないことは当たり前だ。したがってお金に間違いがないチェッカーということでは何も評価されない。もちろん間違いの多い人は顧客から信頼はされないが。
顧客が評価するのは間違いなく「感じのよさ」と「テキパキさ」の類である。
チェッカーの正しい評価はお客が決める面が強い。

●レジ誤差削減の取組はひとつ間違うと害ばかり
レジ誤差削減コンクールというのは内向きの事情によるコンクールでしかなく、これにより大事なことがおろそかになりかねないようなら止めるべきだ。レジ誤差の多い人は人事評価でも対応が出来る。むしろ接客コンクールやそのためのモチベーション向上に向けての取組をいかに充実させていくかの方が重要なのに、これは割りとおざなりなのだ。

ましてや、レジ誤差の大きかった人に掃除の罰を与えるという政策はレジ誤差削減に目的を収斂させてしまい、その結果チェッカーたちのモチベーションを下げることはあっても上げることはまずない。顧客に果たさなければならない、またレベルアップしなければならないサービスや行動から目を離してしまう効果しかない。このような政策にはマネジメント云々以前に、発想の貧しさを感じてしまう。
“いじめ”的発想であり、管理者の発想としてまったく落第そのものといっていい。
それどころか、これはJR西で行われていた「日勤教育」と同じ発想なのだ。

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