142..介護施設「夢のみずうみ村」
●SM「オオゼキ」の業績好調
首都圏に店舗網を抱えるSM「オオゼキ」の業績が好調だ。
年商600億円強の企業ながら、昨年度の経常利益率は8%と高率。今年度に入ってからも売上が既存店ベースでも昨年を上回っており、好調を持続している。オオゼキが目を引くのは、その経営戦略だ。
オオゼキは、顧客に一番近いところにいる店舗に権限の中心を置くとともに、店舗の能力を一定以上に保つため正社員比率を極めて高くし、モチベーション作り、教育に力を注ぐ。そして高品質の商品、サービスを通じて高い営業収入を実現させていく。それをサポートする顧客戦略もカードを通じて実現している。いわば、顧客そのものを見据えたマネジメント戦略だ。これが好業績を維持していることと直接結びついている。
多くのナショナルチェーンのマネジメントとは逆の戦略を採っているのだ。
●介護施設「夢のみずうみ村」とそのコンセプト
業種は全く違うが、介護の業界で「夢のみずうみ村」(山口県)のデイサービスセンター運営が先日テレビで紹介されていた。その後自分でいくつか調べたことも含めてその特徴を下記に記述すると、
全てを客扱いにして“おもてなし”をする、しかし結果として利用者をだめにしていくのが既存の介護施設。この施設は全く逆に、利用者の意志と行動を促し、ほんとうの喜びをもたらせる。結果として1年間いると利用者の総介護度が低下し、施設の収入が減るという悩みもあるという。
- デイサービスセンターはバリヤフリーではなく、それどころか施設には階段やスロープもあり、手すりすらない。利用者はそれを乗り越える努力をすることによってリハビリや身体を鍛える。
- 施設は「街角」、「居間」という感覚で、エンターテインメント性を中心に様々なメニューで運営される。しかし、施設は利用者が「王様」でいられる応接間ではなく、自分で何をしていくかの決定を迫られる場所。出来ないことのみ施設が手を貸してくれる。
- この施設にでは利用者は何をするにも「ユーメ」という通貨が必要だ。
何か役割を果たせばユーメが手に入る。リハビリの目標を達成しても「お祝い」として通貨が手に入る。施設の仕事を手伝ってもユーメが手に入る。他方レクレーションなどで通貨を賭けてギャンブルに使ったり、飲食をするにも通貨が必要。- 利用者が朝センターへ入ったときには自分がしたい(して欲しい)メニューを自分で選ぶ。施設側が決めるのではない。
- 「感動の芽づくり」、利用者に社会性に対応できる能力をつける仕掛け(自己選択、自己決定)、社会参加を促すため心身を鍛える(アクティビティー)、
レクレーションも社会活動だ。- 社会への参加、その意欲を促す仕掛け、利用者への評価と報酬、それを支える職員の研修(主にデイスカッション)、これがマネジメントのベース。
両社に共通するのは、「本当に顧客のためになるのはどうするべきなのか」、また「そのためにどうマネジメントすればいいのか」という問いに確固たる答えを持っていることだ。
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