141.クレーム対策、責任追及だけでいいのか?
最近自分の職場の会社で、団体客から事前予約を受けた土産品の商品違いなどの事故がやや多いことが問題になった。
顧客の立場に立ってみれば、こんなことがよい訳はない。旅行であれ、通常の買い物であれ、買い物には大きい小さいはあるがそれなりの夢が伴う。それを壊す加害者行為という“自覚”は最低限必要だ。
ところが、元いた会社での経験も含めてこの“自覚”は皆持っているように見えてその中身は非常にあやふやなことが多いものだ。
こういう状況になったとき、マネジメントに携わる人の対応には二通りあると思う。
小売業現場の管理職に多いタイプは、「いったいどうなっているのだ! 担当者は顧客の身になって考えているのかっ!」と叱責するタイプ。
そこまで極端でなくとも、「責任追及」という姿勢が基調のタイプの管理者だ。
こういう場合、管理者は正論を言っているし、言われた人は反論が出来ない。
しかし、言われた人は考え方や行動に微妙な揺れが生じる。
「顧客の立場になって」ということは理屈では理解していても、それ以上に責任追及されることによる威圧感から逃れたいという自己防衛の気持が強くなる。まして管理者が部下(または指摘を受けた人)にとって気の合わない存在であったらなおさらだ。
こういう場合、責任追及側も往々にして顧客の利益を考えるというよりも、管理者という自分の「立場」の方が優先しがちになりやすい。
かくして、問題指摘する側とされる側の共感の“きずな”形成はうまくいかず、正論に対して反論できないからなんとか対応するというようになりがちになる。「本当に顧客の利益を考える」という課題の共有化は、表面的にはともかく内実は進まない。
もうひとつは、なぜそのような問題が起きたのか?、どうすればよいのか?、またおきたことに対してどう対応すればよいかを徹底して考えさせるタイプの管理職だ。
考えさせるといっても、「さー考えろ」と放り出すだけでは多くの場合上手く行かない。考え方のヒントを与えるなど、対話と支援も必要なことも多い。
しかし、このようにすることによって問題解決のためのチームワークも生まれ、本当の意味の責任感も醸成されるものと考える。
これは何も上司部下との関係に限らず、同僚、他部署との関係も同じだ。
どこでもそうだが、なかなか後者のように考える人は少ない。