85.「オオゼキ」について

知人のメールより
IY在籍の旧知の方からメールを頂いた。今も店舗に身を置いておられる現役の管理職の方である。
この方の指摘は下記のようなことであった。
  • 業界全体の不振理由に多くのトップがお客と商品のミスマッチを上げるが、それは甘い判断だ。
  • この業界でも能力主義がいわれて久しいが、あまり変わっていない。日本にはなじみにくいのではないか。
  • パートタイマーという概念も以前とは変質しているのに対応は変わっていない。パートさんの質を本気で高める努力をしていない。
  • 何も考えないパート社員が増えている。昔より悪くなっている。むしろパート社員を減らして社員を増やした方がいい。
私も80%くらいこの方に共感している。私の意見は整理するとこうだ。
  • 量販店の多くはまだ論理の組み立てが商品から入っている。顧客中心ではなく商品中心なのだ。理論転換が必要。
  • 商品中心主義、能力主義、人件費を抑えるためのパート化推進、といった発想は、量販店がよって立つ「中央集権的組織論」の呪縛に捕われているからだ。
  • 組織観を“改宗”するのはまずトップから行わねばならないが、これはなかなか難しい(不可能ではないが)。またトップの考え方が変わっても従来の組織論に慣れ親しんできた社員の意識を変えるのもなかなかタフなことだ。しかしこれは可能だし、またやらねばならない。
これらはこれまでの論稿で述べていることでもある。
顧客中心主義とは守るべき客を明らかにし、この顧客の求めるものは何かをマーケテイング手法で品揃えを決めていく(顧客情報が必須)。能力主義はいけないとはいわないが、社員のモチベーション向上が出来なければ意味がない(残念ながほとんどの能力主義は人件費削減という動機が勝っていてモチベーション向上の成功例はあまり聞かない)。
真の顧客中心主義実践や社員のモチベーションと生産性向上は、中央集権的組織論からは生まれず、権限責任分散型組織論への転換が必要。以上が私の視点である。

「オオゼキ」に注目
上記に関連して私は量販店の「オオゼキ」に注目している。
この会社は東京世田谷に本社を持ちジャスダック上場企業だ。現在23店舗を抱えており、2004年度の営業成績は下記のとおりである。
  • 年商525億円、昨対106.9%
  • 経常利益41億円、昨対102.1%、経常利益率7.8%
この会社は過去5年間とも経常利益率7%以上確保し増収増益である (なお過去3年間の決算数値は「YAHOOに基づく2004年度小売156社決算比較」の「単独1部以外」シートに掲載中)。

この会社に注目している理由は、収益率の高さだけでなく、次の点にある。
  1. 正社員比率の高さ・・・・2005年2月時点で67.7%。人件費安よりも高い能力を持った正社員中心の高能率経営を目指していること。
  2. ポイントカードを65万枚発行し、その顧客データ利用でもよく紹介される企業であること。
  3. 品揃え、仕入れを店舗に権限委譲し、顧客や地域に合った対応を志向していること。
オオゼキの詳しい実態を知っているわけではないが、顧客データを活用して顧客マーケテイング志向するとともに、正社員中心の高いマネジメント力と生産性を両立させ、それを支える権限責任分散型組織論に立っていることが注目点である。少なくとも今のところ私の志向している条件をすべて備えている。
まだまだ発展途上の企業のようであり、問題もあるだろうがさらに優秀な企業になる可能性がある。


ポイント: 小売業には顧客、社員に対するマネジメントとそれを支える分散型組織論が必要だが、オオゼキにはそれがありそうだ。