84.家電量販業界の行儀の悪さ
●びっくりのチラシ内容
私の住む町に関東系のホームセンターが出店してきた。ホームセンターだけでなく、広い食品や家電売り場を持つ巨大なショッピングセンターである。
このうち、家電売り場(別棟)が仮オープンする前日に市内にある家電専門チエーン3社(Y電機、J電機、M電化)が対抗チラシを出した。
このチラシを見て非常に驚いた。
なんと行儀の悪い業界だろう。
- 3社とのチラシとも1面の対抗チラシ商品には価格表示がない。すべて「店頭発表」となっている。
- すべての会社が他店価格より高ければ合わせますという、「価格補償」をうたっていることである。
- せいぜい異なるのは、ポイントカードのポイント倍率がどうのこうのというぐらいであった。
●家電業界は未成熟の戦国時代
家電業界はナショナルブランド商品が強く、品揃えの差別化がやや難しい業界である。企業の優劣を決める大きな要因はいまのところ次の3つくらいである。
1については最近では他業態との複合ショッピングセンター形式で相乗効果を狙う形態が増えているようだが、それでも最後は価格勝負の業界のように見える。2,3についてはどの企業もライバルを突き放すだけの差をつけてはいない。
- 店舗立地と店舗規模
- 価格訴求力
- ポイントカードによる複合訴求、アフターサービスなど
価格競争力の最大の源泉は仕入れ力だが、メーカーからリベート等の獲得が利益の決め手になる要素が高い。、それは基本的に販売力の大きいビッグが優位に立つ。事実業界最大手のY電機は売上高1兆円超でしかも経常利益率も2004年度3.61%とトップである(経常利益率は少なくとも3年間トップを続けている)。
この業界はまだ規模の利益がものをいう業界のようであり、業界地図にも動きがある。
それでも業界1位のY電機と2位(?)のKJ電機では売上に2倍の差がある。この業界はこういう戦争が一段落するまでは価格一辺倒の競争が当分続くだろう。そして多分業界再編の動きはこれだけでは終わらないだろう。
- N無線民事再生法申請
- DとEの事実上の合併(持ち株会社「ED」設立。
- M電化がEの子会社化。
- N無線の一部店舗をEが譲り受け。
業界2位以下の企業は今後長期的に見てどのような戦略で臨もうとしているのだろうか?
●次の課題は?
この業界の次なる課題はやはり自社へのロイヤリテイーの高い顧客を作ることだと思う。
私は電気製品を買う場合、結果的に“主に購入する店”があるがその理由はやはりややなじみの店員(=いろいろな商品のことを聞きやすい人)がいるという単純な理由だけで特に決定的な理由はない。
この店(企業)にしても、私の家にどんなパソコンがあり、どんな家電製品があっていつ買い替え時期が来そうなのか、どんなサービスを欲しているかの情報を求めようとはしていない。顧客に眼が行っていないのである。
こういう課題に答えてくれる、しかも価格でも負けない企業作りはこれからのことだ。
ポイント: 価格訴求一辺倒に近いこの業界、2位以下の企業が生き残るには本当の顧客ニーズやサービスに眼を向けて実行することだ。