64.私服を肥やさない「粉飾」不正

粉飾不正の系譜
どんな業種の企業でも従業員の不正がある。不正といってもいくつかタイプがある。ひとつは不正をする人間が私服を肥やすためにやる事例で、これは一番多いと思われる。基本的に弁護の余地はない。
少数であるが、業績の粉飾を行う不正というのがある。これも自分の私服を肥やす行為を隠蔽するために行われれば、粉飾行為はただの隠蔽策でしかない。ところが、まれに私服を肥やす行為を伴わない粉飾行為がある。私も過去にいくつかその事例を見聞してきた。

一番典型的なのは、自分の数値責任を達成できないので、何らかの粉飾操作を行う事例である。
これには程度がいろいろある。
  1. 本人が業績達成のよい格好をしたいだけの単純な動機による場合。
  2. 直属上司に予算達成の有言無言のプレッシュアーがかかっており、これに負けてしまって粉飾を行う場合。
  3. 上司が部下に粉飾の指示を行い、組織的に行われる場合。
1.については個人不正の域を出ない。2,3については、「25.販売キャンペーン、ノルマの実情」でも述べたような企業風土と関係している。予算やノルマは何が何でも達成しなくてはならないもの、という気持ちがひとつ歪むと2,3の事態が起きかねない。

組織的?粉飾不正への対処
昔、業績が順調に行っているように見せかけるために、ある種の行為をして粉飾するということが、実行者、上司、そのまた上司とかかわって組織的に行われるということがあった。差し障りがあるのでこれ以上詳細は記述しないが、ここでどういう措置を講じるべきか考えてみよう。

  1. 実行関係者をルールに照らして処罰する。
当たり前のことで、どこの企業や組織でもすることだ。そしてここで終わってしまう企業が多い。
問題はこのような組織的不正が、その企業の風土と密接に関係しているかどうかを上層幹部がよく検討、反省してみることだ。その反省の上に立って場合によっては次の措置が必要と考える。
  1. 実行になんら関係していなくとも、さらにその上の幹部の“処分”の実施。(これは自発的に行われることが望ましい)
  2. この問題がおきたことの背後事情を含めた問題点と改善について、社内の本音による討議実施。
粉飾不正はそれが組織的に行われる場合、それは数字至上主義、建前至上主義と組織内の風通しの悪さが背景にある。これに手をつける気持ちがなければこのような不正はなくならない。その意味で3.の措置は極めて重要である。
2.は必要な措置ではあるが会社の一方的措置である。3.こそが社内の風通しの悪い状況を、これを機会にコミュニケーション活性化を講ずることにつながる。これで終わりではなく、ここからが始まりだ。

私の知っている事例では、2.までは行われたけれども3.は行われなかった。今思うと残念であった。


ポイント: 不正が行われたときは、いつもそれが社内風土と関係しているかどうか自問すること。そして必要なら牽制強化だけでなく、コミュニケーション向上を図る措置も必要。