25.販売キャンペーンノルマの実情
●社員の販売ノルマ
量販店にいるものなら誰でも経験があるものに販売ノルマの問題がある。
それは例えば、お中元お歳暮、クリスマスケーキ、母の日、父の日販売キャンペーンなどで、競争心を持ってもらうために一定の販売目標を特別に掲げ、目標達成率競争をする。 キャンペーン内容によっては本部社員もそれに組み込まれる。
本来目標を立ててみんなが競争すること自体は何も悪くはない。 ところがノルマが達成できないときに、上司から厳しく責められる風土があたりまえのようになっている企業が多い。
私のいた企業も残念ながら一部で行過ぎた状況を聞いていた。
例をあげてみよう。
●事例1
お歳暮の販売キャンペーンで社員一人あたり○○万円の目標。 そしてこれが部署ごと、店ごとなどに積み上げられる。 かなり努力しないと実現が難しい目標が多い。こんなことが起きていた。
●事例2
- ノルマが達成できない社員はどうするか?
- ノルマ不足分の商品券を購入し、わざわざ「お歳暮」のしをつけてもらい、それらしく装う。
- 帰宅して商品券を詰めた箱を破り、中の商品券を自分で使うようにする。
- これを「自爆」と呼んでいる。
クリスマスケーキ販売キャンペーンでも店では金額や販売個数のキャンペーンが行われる量販店が多いと思う。
事例1や2のような販売競争企画が大型店だと毎月のようにあり、どこかで誰かがしわ寄せを食う店がある。
- ケーキ売場の管理者は、社員やテナントさんなどに協力を前から依頼しているのが普通。それは売場責任者として当然のことであろう。
- 同じ店に勤める仲間として、薦められれば当然私も協力する。
- しかし現実には多くの社員がクリスマスケーキを5つも6つも購入することが起きる。
- 店によっては、その店の販売成績の過半数が社員購入による実績ということがある。
事例1も2も、社員給与のいわば現物給付であり、一般顧客に価値を全く提供していない。 いわば“つじつま合わせ”である。
●例外現象か体質か?
こうしたことがまだ例外的といえる段階はあまり大きな問題にはならない。私もこれは世の中の縮図として多少のことがおきるのはやむをえないと思っている。
ところが現実にはこれが例外とはいえないくらいの頻度で発生している企業が多いのではないか。 同業他社に勤務する人達との会合でこれが話題になったことがあるが、流通業界ではこれが必ずしも例外とはいえない状況である。 流通業の悪しき文化である。
こうした行き過ぎはほとんどの場合、現場の店長や店長の上司は実態を知っている。 そしてなぜかこの問題は、社内でこれに触れるのが一種の「タブー」となっているところが多いのではないか? 一度社員自身の「望まない購入」がどれだけあるか調べてみてはどうかと思う。
本来、目標達成が容易でない販売競争は、チームを作り、作戦を立て、役割分担を行って目標達成のために組織的に活動するのがスジだ。
●反顧客、反従業員満足
社員が犠牲を払って数字作りに走る(走らせる)。
これは、二つの間違いにつながる。
1.本来の顧客資産増加に全くプラスになっていない。
2.社員のモチベーションを引き下げてしまう。
目標数値さへ達成できれば誰が買おうがどんな中身でもいい、目標未達成や失敗につきことさら個人の責任追及をする、こんなことがまかり通っているようでは顧客満足や社員満足は程遠い。
ただし、私は社員が何の販売努力もしなくてもいいと言っているわけではけしてないことを付言しておく。
ポイント: 多くの販売キャンペーンが顧客と向き合わずに結果数字だけを追うという愚。 顧客資産は増えず、社員のモラル資産は減少。
流通企業本社はもっと現実を見よう。