62.日本小売業の顧客理論知識はFSPの域を出ていない?
某、コンピュータ会社所属で、小売業指導、各種講演、執筆活動などでご活躍の方から私のホームページにコメントを頂いた。
下は何回かのメールのやり取りのうちの私のメールである。一部削除、加筆補正など行ってあるが、日本小売業の顧客理論知識の現状と私の意見や注文などを記している。参考までに見ていただきたい。
-------(メールほぼ原文より抽出)----------------------
A様、メールありがとうございました。
大変ご活躍の方にホームページを見ていただき恐縮しております。
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> FSP・CRMの関係はおっしゃるとおりです。
> さらに言えば私は一時(今も?)流行した
> One to One marketing も現場では危険な誤解が多い気がしています。
> その精神は良いが、実践は危険と感じています。
> 私のプレゼンではその辺を強調しています。
> 大体良く出来ているはずのAmazon(良く利用します)でさえ
> 「Aさんにおすすめがあります・・」を見るとリコメンド商品は、笑うばかりのも のです。
> また、人間の他人個人に対する興味は尽きないので、情報がとれるとな>ると、 どんどん知りたくなり、低俗週刊誌と変わらなくなります。
>
1to1マーケテイングの実践が危険と感じられるのは、実行部隊の方の理解力もありますが、トップの基本的に正しい理解に基づく関与のない(導入と)実行に問題があると思います。
そもそも1to1マーケテイングがCRM全体の中に位置づけられていないで理解されるとAさんのおっしゃるような危険に陥るのは目に見えています。
特にCRMは私の考えでは、旧来のピラミッド型企業組織(風土)のなかでは育たないと考えています。
CRMの想定している価値観を理解したうえでの1to1の理解でないと、単にマーケテイング手法としての1to1マーケテイングの理解では所詮自己中心で顧客中心にはなれない。ここのところが肝心のところだと思います。
何年も前にBrian Woolfの本を読んで最初は感動しました。彼の著作は新しいマーケテイング戦略の論文として読まれることが多いと思います。ところが彼自身が経営組織やマネジメントのあり方について触れている部分はそう多くはなく、これが読者に誤解を与える面が多々あるように思います。
御社や他の企業がBrian Woolf、Gary Hawkins, Bill Bishopさんたちの講演会を主催すると流通関係者で満員になることがよくありました。私もほとんど参加した記憶があります。しかしその後(海外の)CRM(系)のサイトを覗いたり、著作を読んだりするとやや混乱はあるものの、実はCRM(という言葉のジャンル)ではもっと広く深く議論されている。
ここに日本の流通業のスタッフ職の人の情報不足というか、知識不足というか危ない側面があるように思います。
日本の流通業ではではいまだにFSPという言葉を知っていてもCRMという言葉を知らない(または極めて知識不足の)人がたくさんいます。
(中略)
ところが日本の小売業はどうもBrian Woolfさんたち数名の方の著書を結果的に唯一のバイブルにしてしまっているようです。ここにFSPは知っていてもCRMはよく知らないというようなことが起きる原因があると思います。
(中略)
私は昨年初め、Frederic Newellという人の"Why CRM Dosen't Work?"という本を読み、(賛否はともかく)あ〜これが小売業関連CRMのアメリカの理論水準だなと感じました。
(中略)
いろいろ書きましたが、いいたかったことは顧客理論の知識は日本小売業の現場ではまだFSPしか知らない人が多く、これでは危険な理解になりかねない。それを深めるのに御社のような企業がもっともっと一役買ってほしいということでした。
ま、これも「よもやま話」ですが。失礼しました。
---------(以上、メールはここまで)--------------------
私の意見には異論があるかもしれないが、私の知る限りではこれが現状と思っている。
Brian Woolfのいう"Behavior follows rewards"、「顧客の行動は報償に追随する」を超えたところにCRMの世界がある。