60.☆世界小売業ランキング250社より(情報)

世界小売業ランキングとは?
毎年1月上旬にはアメリカの小売業雑誌“STORES”のサイトで前々年の小売業(飲食を含む)世界ランキングとその概説が発表になる。
そのサイトを見たい方は下記のURLからアクセスするとよい。上記の情報はPDFファイルでダウンロードも出来る。
題して“2005 Global Powers of Retailing”。
http://www.stores.org/pdf/GlobalRetail05.pdf

なおタイトルは2005・・・となっているが、実際のデータは2003年のものをベースにしており、2003年のランキングである。
ここのサイトで過去の情報もアクセスできる。

今年から上位250位までの発表に拡大された(従来は上位200社まで発表)。世界小売トップ250社リストはここをクリックする。

ざくっとした印象は、
  • トップ10のうち8社が年間2桁成長していること。
  • 2002年10位だったシアーズが13位に、同じく17位だったKマートが29位にという凋落。
  • 日本は35社がランク入りしてその数は2位だが、101位以降の企業が多く、50位以内には3社しかない。ドイツ、フランス、イギリスよりも少ない。国際進出も含めて日本の流通業の存在感はその国力の割りに低い。(国別内訳は後掲)
「概説」の要約
これに書かれている概説を極めて荒っぽくまとめると次のような内容である。

「グローバル小売業はエンジン点火」から
  • この2年間は多くの小売業が基盤改善に報われるようになった。経済回復が寄与してきた。
  • IT投資も収益の伴う成長に役に立っている。
  • 食品関係は鳥インフルエンザや狂牛病に見舞われた。アメリカやヨーロッパでは肥満問題がクローズアップ、自然食品やオーガニック食品が成長。アパレルではプラスサイズ衣料選択を充実させてきている。
  • 日本では彼らの消費力のゆえにシルバー世代消費が脚光。
  • インターネットも重要性が増しつつある。
  • 中国は商品供給、販売市場両面で立場強化を期待されている。
  • リスクマネジメントが多くの企業の最前面に登場。
  • 新しいテクノロジーの採用、吸収や合併、世界への拡大傾向は、小売業が再び始動を始め、よりエキサイテイングな時代到来を示唆している。
「グローバル250社、ハイライト」から
  • 2003年では赤字企業はトップ250社のうち6%の15社しかなかった。200年では7%の企業、さらにその前年では13.5%の企業が赤字であった。全体としては改善傾向。
  • 中国の企業が2社、初めてランキング入りした。
  • 250社の店舗展開国は135カ国に及び、1社平均5.5カ国となっている。1997年では4.5カ国であった。グローバル化はいっそう進展している。
  • 中国出店企業は31社。
  • イギリスTESCOは海外で30%の成長、国内では7%。WALMARTは海外で17%の成長、全体で18%の成長に貢献している。
  • 5年間の成長率が高かった企業は、食品を扱う企業がほとんどなかった(例外はスペインのMercadona社)。
  • 成長のきわめて高い企業は、1〜2の業態しか持たない企業が多かった。
「経済概況」から
  • 北米では、ガソリン価格高騰と財政問題が課題になっている。1970年代のオイルショック時と異なり、GDPに占めるエネルギー消費問題は小さくなっているので克服できるのではないか。金利上昇が小売業回復にに水を差している。
  • アメリカでは消費者は価格に敏感になっており、Walmartのような企業に多くの小売業者が脅威を受けている。
  • 西ヨーロッパは経済の強弱両面がある。問題は労働市場、商品市場の規制が多すぎて非効率なことと、ドルの弱さである。アメリカによる投資がヨーロッパに行きにくい。
  • アジアでは、中国の世界経済登場とインドの潜在力が劇的かつ平和的革命場面となっている。
  • 中国は経済過熱によるインフレの心配とともに、他のアジア諸国の成長エンジンになってもいる。中国の内需拡大が外国小売業投資を拡大しそう。
  • インドは外国からの投資の多さに加え、安くて有能で英語を話せる人々がコールセンターやソフトウエアー作成、その他専門的職業の道を作った。しかしインドの国内規制も強くインフラ整備も不十分だ。まだ時間がかかるだろう。しかし大きな魅力のある国だ。
  • 日本は郵政民営化などで財政立て直し中。うまくいけば消費回復するだろうが、まだ時間がかかりそう。
日本企業の問題点指摘
日本については解説が前年より少ない。仕方のないところだ。
ただ日本企業の重要な問題点として次の指摘がある。
  • 多くの日本小売業はQ-RATIO(前川注:株価時価総額÷企業純資産の再調達額)が低い。これは、キャッシュフローの減少により負債負担の増大をもたらした長期デフレが原因である。
  • 加えて、他社との差別化要因となる強いブランド力が弱いことが原因だ。
他方、1998年からの5年間の成長が極めて高い企業として、
  • ヤマダ電機、年平均成長率31.1%で7位。
  • ファーストリテイリング、同30.2%で8位。
  • 大創産業、同29.9%で10位。
  • ビッグカメラ、同16%で49位。
というのが目を引いた。
こういう情報を見ると日本小売業の国際的実力がよく理解できる。