13.顧客の要望質問回答公開制度(後日談)

●売場の悩み
量販店の多くでは、店頭に顧客が自由に意見を述べる「お客様ご意見」箱が設置されている企業が多い。ジャスコはこれに対する回答を公開されている。 この措置自体には私も賛成である。
そして本部でもこのことが話題になったことはすでに8.で触れた。
それに対して後日ある現場の責任者と雑談のなかで次のような反応があった。
  1. 理屈は分かるが、お客様もいろいろの方がいて、マニアックなご意見常連客、匿名でものを言う社員、社員の個人攻撃をする顧客などもいる。 大変だ。
  2. なかには回答に困る意見も出てくる。
  3. 顧客の中でも意見の割れることがある。 回答も困る。
  4. 積極的に公開の回答をもらえるとなると、ご意見の件数も大幅に増えて仕事が増えるのではないか。
  5. 店の現場は大変だ。競合店がやるならともかく、何も一番にやることはない。
明らかに「やりたくない、先送りしたい」という態度が見え見えであった。 しかし量販店の実情からすれば、現場の店長の気持ちは大半がこれに近いものであると思う。 本社の幹部が言うならともかく、店の責任者としてこのような気持ちであったとしても非難は出来ない。

●本社の責任
現場の店長が困ったり、疑問に思うことに本社は答えてあげるだけの準備が必要なことはいうまでもない。  したがって、筋論だけでたいした準備もなくこのような制度を実施してはならないと思う。  そのために、例えば次のような条件整備が必要と思う。
  1. 想定もしないような顧客の意見などが出てきた場合などの本社側の指導部署の明確化。
  2. 顧客だけでなく、従業員のプライバシーや名誉を守る取り決め。
  3. 顧客同士の利害が対立する意見に対する回答の考え方(例として、喫煙、嫌煙問題)の指針は本社で決めること。
  4. 全社的に顧客の意見を集約分析し、事後に役立てるだけの体制や仕組みづくり。
そして何よりも重要なことは、トップが全社に向かって、顧客の声を集め、対話し、顧客の声を経営に生かすことの価値の高さを熱意を持って説くことであろう。
そのうえで、店の心配や悩みを集約、フォローしてあげるだけの本社サポートがないと店はやっていけないことも確かである。


顧客ご意見の回答は内容が単純なものから悩むものまでいろいろであろう。 店長などのマネージャーだけでなく会社全体としてもそれによって鍛えられ、学ぶことも多いと思う。 



ポイント: 顧客問題は正面から取り組めるだけの準備と体制が必要。

参照
8.社内の「お客様質問のご返事掲示板」論議から