2.食品スーパーの「売価間違い」
●間違いの原因
今では食品スーパーではどこもPOSが設置されている。 昔のレジと違ってチェッカーが売価の打刻ミスをすることはないといってよい(但し値引きシールの打刻ミスはあるが)。 しかし、それでも正しい売価で売上計上されるとは限らない現実がある。
つまり、POSレジに連動している価格マスター上の価格が間違っていればコンピュータは正直に間違った価格を反映してしまう。 この頻度はどこのスーパーもまれな事態ではなく、結構頻発しているのが現状である。
一番多いのは特売にかかっている商品であるにもかかわらず、価格マスターの設定変更を 怠るケースが多いようである。 また値引きシールがはってあるのに、チェックアウト担当者がそれを忘れたり、打ち間違える ことが原因となることも多い。
お客様はせっかく安いと思って買った商品が安くなっていないことが分かると腹立たしい思いをし、お店にクレームをつける。 こういうクレームが1年間に一度もないというお店はまず皆無に等しい(と想像する)。
●どう対応するか
ひどい店では毎日のように発見されることさへある。 もちろんこうした事故を防ぐルールはほとんどの場合決められており、それを100% 守ればこのようなことはおきないのだが、現実には発生するのである。 このような場合、小売業はどのような責任の取り方をするか?
答えは三つある。
ひとつはひたすらお詫びして、正しい、本来の(高い)売価に変更させていただく。
もうひとつは、そのお客様にお詫びし、そのお客様にだけは低い売価で販売するという方法。
- このような場合、お客様は「もういらない」といってその商品を買わないか、更にはもっと立腹して買い物そのものを止めて帰るということもおきる。
いまどきこんな対応するスーパーはないと思うが・・・。
●サニーさんの答え
- もっとも普通の対応で、そのお客様には間違っていてもその低い売価で販売し、直後にPOS売価マスタを変更する。
- しかしこのお客様が帰宅後に間違いに気付いた場合、売場で気がつくのが遅れると売価間違いの影響を受ける顧客が広がる可能性がある。 ベストではない。
九州に「サニー」というスーパーマーケットがある。 ここではお客様が価格違いを発見 された場合は、お詫びを兼ねてその商品を無料で差し上げると宣言されている。
サニーのホームページに後掲のようなお客様への「3つのお約束」というのがあり、 その3番目に売価間違いの対応策が宣言されている。 しかもこれ以外に品切れ商品を48時間以内に取り寄せ、お客様に連絡することまで お約束されている。
- この方法は売価間違いに対して売場が本気で取り組む覚悟を求められるであろう。
- お客さんは間違いを発見すれば出来るだけすぐにその場で指摘しようという気持ちが強まるであろう。結果として売価間違いの影響を受けるお客さんが最も少なくなるのではないかと思える。
立派という他ない。もう少し詳しく実態を勉強させていただけるとありがたいものだが。
2004年10月3日現在下のURLに掲示されている。
http://www.sunny-net.co.jp/kaisha/newf-kaisha.htm
(上記URL画面の「お客様へ3つのお約束」をクリック)
ポイント: 売価違いは大げさに言えば「詐欺」である。能書きだけでなく、具体例で顧客への非礼のわび方をサニーさんは実践している。
ここまでやって本物だ。
追記: (2004年10月30日)
この文を読んで食品チェッカーをしていたという、ある方がこんなことを教えてくれた。
このお話、どういうように皆さんは理解されるであろうか・・・。
- あるときPOSマスタの売価違いが発生したので、お客様にお詫びしてそのお客様にその商品は低い売価で処理させていただいた。ところがそのお客様が、「私は気がついたからいいものの、それまでに高い売価で販売した客はいないのか? 私が気付かなかったらまたその後に間違いのまま販売してしまう恐れもあるのではないか」と言われ、説教された。
全くお客様のいうとおりで、そこまで完璧な後始末は行えていない。- それよりも、間違いを発見していただいたお客様には無料で差し上げるというようにしたほうが、売場も真剣になるし、お客様も場合によっては商品が無料になるかもと思ってチェックして下さる。
- 売価違いの原因を作った売場の人には、お客様に謝る私たちの気持ちがなかなか伝わらない。謝るのは私たちですから。
再追記(2004年12月10日)
この問題について「つれづれ日記」でも書いた。
売価違いをどうして無くすか(減らすか)という問題と、万一発生したときお客様にどう対処するかという問題は別である。前段は内輪の問題、後段は顧客に対する責任のとり方の問題である。なのに社内で前段の問題ばかりに時間を要して、後段の課題の結論決定は後回しというのでは「顧客を大事にしている」とはとてもいえない。順序が逆だ。
- 2004年11月6日(土)「食品スーパーの売価間違い」に関連して
- 2004年11月23日(火)“会議はすれど・・・”