3.マス販促と顧客の不満(ケーススタデイー)

●ある販促企画
あるファッション専門店で織り込みチラシが出ていた。 そこでチラシ期間中に5000円以上購入すると抽選くじで1等は宿泊旅行に招待してくれるという。

数年前からそのお店でよく購入するAさんはそのお店の上位顧客の部類に入っていたはずである。 そのAさんは仲良しのBさんを誘ってそのお店へ出かけた。 AさんもBさんも気に入ったものがあったので、二人とも5000円以上の商品を購入した。
Bさんはそのお店では初めての購入客であった。 二人とも抽選券をもらったので、抽選を引いたらなんとBさんが1等賞の当りくじを引き当てた。 Aさんは残念ながらはずれということで、何も景品はなかったのである。 Bさんは大喜びで、Aさんも「よかったわね〜」と喜んだ。 しかしAさんは考えた。

●常連顧客の感想
  • 「くじ引きも自然に行われたし、仲良しのBさんに当たったのだからそれはそれでよい」
  • 「しかし、私はこのお店の商品が気に入っているので以前からよくここで購入するけれど、 今まで安くしてもらったこともなければ、粗品ひとつもらったこともない」。

    「ましてお礼の挨拶状やDMひとつもらったこともない」。 「仲良しのBさんは初めての客で、私のほうがこれまで何十倍も購入している」

    「ここのお店って私がよく買う常連客だとわかっているのかしら?」 、「何か割り切れないな〜」
●たかがくじ引き、されど・・・
こんな話はどこにでもある話である。
この話の問題点は、次のようなことが考えられる。
  • このお店はファッション商品を扱う、いわば接客商売でありながら、常連客を識別しようという 意思(政策)があったのか?
  • もしあったにしても、そのことを店員さん屋社員全員に徹底していたのか?
  • 今回の販促が新しい顧客を増やす意図で行われたものか?それとも漫然とマスを対象とした 販促であったのか?
  • 旅行が当たるくらいの大きな販促であるから、1等賞が常連客でない人に当たることは十分 考えられたし、それなら常連客に対しては別途事前に配慮する方策を講じておくべきで なかったか?
たかがくじ引き。 しかしこんなことでAさんという大事なお客様を失っては何にもならない。 ファッション衣料を扱うお店なら常連顧客を識別し、お客様との「よい関係」維持を図るのは 難しい議論をしなくても当然なのだ。
食品や消耗品購入顧客に対しても上位顧客の維持をどう図るかの時代であるにも かかわらず、である。



ポイント: 売上が上がれば何でもいいという、お客様をよく見ないマス販促。いつまで通用するか? 大事な顧客との「関係」維持の視点が抜けている。