●旅行代理店とは何の商売?
筆者の所轄していた部門に旅行事業部門がある。 2002年度で80億円強の営業をしており、流通業直営としては小さくはなく、過去8年の間に
2倍以上の成長を遂げてきた。 私も管理職として当初、規模の拡大に力を入れたつもりである。
しかしながら2000年から規模拡大の方針に疑問をもつようになった。 理由は、
1.CRMを本格的に勉強し始めるようになって、視点が変わり始めたこと。
2.インターネットの急速な普及が旅行業の枠組みを侵し始めたこと。
3.アメリカのテロ事件で旅行の成長神話に冷や水を浴びせ掛けられる事件がおきたこと。
疑問の内容は、
- 旅行代理店業の仕事は、メーカーである旅行会社が作った商品をお客様に仲介するだけのビジネスではないのか?
- それなら旅行業は手数料ビジネスの域を出ないのではないか?
- 業界の人はコンサル営業というけれども、お客様のニーズを本当に理解しているのか?
- 手段や手続、最低限の選択肢を与える知識を提供しているだけではないのか?
- 簡単な旅行はほとんどインターネットにとって代わるのではないか?
- 旅行という仕事は「最初に商品ありき」から始まっているのではないか?
- 我社の旅行センタースタッフに「あなたはお客様に何を売っているの?」と聞くと、ほぼ全員が怪訝な顔をして
「旅行商品を販売しています」と答える。 これではお客様の本当のニーズを見ていないのではないか?
●人はなぜ旅に出る?
そして行き着くところ最終の疑問は、「人はなぜ旅に出るのか? またそれを旅行担当者は深く考えようとしているのか?」であった。
- 人はいろいろの理由で旅に出る。 子供連れで家族旅行する人はそれを通して、子供を中心とした家族の絆を求めて旅行する
という解釈もあろう。 ここでは家族の絆サポート業である。
- 熟年夫婦が旅に出る。 人生を振り返り、またこれからの新しい人生を迎えるにあたっての夫婦の絆を求めて旅に出るのかもしれない。
- 友人同士で旅に出る。 これも友人の絆を強めるためのものであろう。
- 一人旅、これは何かに疲れた心を癒すためのものかもしれない。
●旅行事業の本質
旅行事業は極めて心の絆サポート業なのである。 絆はどうすれば強くなるか? 旅行業者はすべてに立ち入れるわけではない。
しかしその場を提供したり、気配りをしたり、お手伝いをしたりのところはビジネスとしても立ち入ることが出来るし、本当は求められているのではないかと思う。
そういう意味で私は新しい旅行事業のスタイルを模索することになった。
もはや旧来の旅行事業は「終焉」に向かうであろうことを予測して。
ポイント: 販売している商品を通して顧客の本当のニーズは何かをいつも考えること。 |
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