●これまでの旅行代理店スタイル
旅に出る(出たい)お客様のニーズ(潜在ニーズも含む)はそもそもその場限りのものではない。 しかしそのことは旅行販売店には予め分かっていることはほとんどない。 それが理解できるにはお客様との継続的な付き合いが必要である。
ところが今までの旅行事業 スタイルはほとんどの場合、お客様が店頭に来れれて、いくつかの旅行先パンフを持ってカウンターに
来られてからお客様との接触が始まり、お客様とのコミュニケーションが図られ、商談が成立する。
そして、めでたくお客様が旅に出られ、何事もなければそれで終わりである。 せいぜい「旅は
いかがでしたでしょうか? 何かご不満はございませんでしたでしょうか?」と尋ねてお客様を
引き止めるのが精一杯である。
●同好会旅行づくり
これではお客様と継続的なお付き合いは出来ないし、お客様の本当のニーズも不満も分からない。
そこで考えたのが趣味を同じくする「同好会」を基礎にした旅行倶楽部を立ち上げることであった。
幸いにも旅行課長が無類の山歩き好きであった。
構想は相談して次のように立てられた。
- 今、山歩きはブームである。 お客様は沢山いるはず。
- 熟年でも安心して参加できる山歩き倶楽部にしよう。そして会組織を作ろう。
- 年5回くらい、日帰旅行、宿泊旅行、を織り交ぜていこう。
- 山歩きに不慣れな方のためにも「事前説明会」をその都度開こう。
- 無事故に最大の注意を払おう。
- お世話はその趣味に関心があるものが中心になり、ガイドも勤めよう。
- 旅が終わった後も、旅の写真を交換できたり、また店などで公開できるようにしよう。
- 出来れば、その会のためのミニコミ新聞を作って皆さんにお配りしよう。
- 更に出来ればお客様が新聞作りに参加していただけるようにしたいものだ。
- 皆さんの和気藹々の光景をインターネットなどでも公開し、仲間を増やすようにしよう。
- 次の旅先選びにお客様の意見を反映させることも考えよう。
こうすれば、期待内容は、
- お客様の繰り返し利用が期待できる(Life Time Valueの最大化)
- 顧客の反応がすぐに理解できる。
- お客様のとのInteraction(双方向対話)が可能になる。
- お客様も自分のニーズ実現ということで期待度が高い。
- 当社のこうした姿勢を評価していただければ他の一般旅行も今まで以上に利用して
いただける期待が大きい。
- そればかりか当社全体の評価を高めていただける可能性大。
●感動提供旅行業へ
結果はどうであったか?
- お客様の反応は期待以上で、高齢のお客様からは「この年になって山歩きが出来るとは
思わなかった。これで何時死んでもよい」とまで言ってくださるお客様まで現れたのである。
- 更に予想できなかったことは、この会に一人参加し、そこでお友達を作られる方の多いことである。
- この方たちが山で写真を取られたものを店舗で展示する企画も実現した。 まだお客様自身が企画にお手伝いをしていただくところまで入っていないが、確かな手ごたえを
感じたことは確かで、これぞ旅行の「顧客中心主義」実現のひとつだと思ったものである。
- もちろん今もこの会は続いており、多くのお客様が心待ちにしておられる。
- また他の種類の会組織も作っていった。それぞれある程度の結果を出している。
しかし悩みも増えた。 手抜きが出来ないのである。
その結果単純な量的拡大が困難で、ここで壁にぶつかっている。 ただ、この組織運営に携わったものの多くが、旅行ビジネスのあり方について価値観の変更のきっかけを掴みつつあることは大きな収穫であった。
旅行業ではなく、感動提供業の端くれにいることを担当者が自覚してくれればと思って次の課題と問題改善に取り組んでもらっている。
ポイント: 旅行業が顧客ニーズを見据えたソフト産業、感動提供業であることを少しでも理解すること。 |