第2章  なぜポンセットマウントなのか(赤道儀と経緯台の構造と得失) 


望遠鏡架台には経緯台と赤道儀架台(赤道儀)があり、特徴を述べたものは数多く見受けられるが、使い易さ、使い勝手の面から論じられたものは多くない。ゆえにここで使い勝手についてすこしばかり考えて見よう。

     
 

赤道儀
赤経軸を地球の自転速度で逆方向に回すだけでほぼ正確に、天体の追尾ができるのが最大の利点である。 しかし、こと眼視に限っていえば(ことにニュートン式望遠鏡では)利点はこれだけといってもいいほどで、それ以外ではいいところはなにもないといってもいいくらいだ。両軸とも地面に対し傾斜しているため鏡筒重量を垂直に受けることができない。さらに可動部のアンバランスをとるため、カウンタウェイトを必然とするなど、本質的に強度と剛性を確保するためには、架台重量が大きくなり、これが設置や移動、取り回しを悪くしている。さらにドイツ式のそれでは鏡筒と架台が干渉するから子午線をまたぐ追尾や導入はしてはならないという致命的な欠点もある

これにたいし、経緯台は軸が垂直で重力に逆らわない構造のため軽量で簡単な構造の割りに充分な強度と剛性が得られる。 しかも使い勝手がいいのだ。。これは両者に雲泥の差があるが、こればかりは経験者でないとわからない。


 経緯台の優位性  筆者の経

筆者はその昔20センチのF9反射望遠鏡(ニュートン式)を自作した(鏡を含めて)ことがある。   当初、経緯台を自作、運用していたが、まずまず満足していた。  しかし高倍率(300倍)くらいにすると、天体の日周速度があまりにも速く、ターゲットが視野からすぐ飛び出す。そのたびに上下、水平の修正で微動(手動)ノブを触らなければならない、触るとぶるぶる振動が発生、目が回る。これに閉口して、天体の追尾が楽だと云われている赤道儀に手を出すこととした。

ドイツ式は子午線をまたぐ問題があるのと自作は難しいと考え、ヨーク式を採用した。当然、経緯台に比べられないくらい大型のものなった。使って見たところ、赤道儀は、赤経軸のみ回せば天体を追うことができる。これは確かに便利だ。しかしいいのはこの点だけだ。ということをいやというほど思い知ることとなったのである。
バランスの問題
赤道儀では回転のバランスがあらゆる方向でどんな場合でも完全にとれていないといけない。さもないと天体導入時などにクランプをゆるめると勝手に動きだすから、すかさず赤経軸と赤緯軸を同時にクランプしなければならない。ファインダを覗いたままで、片手で鏡筒を微動だにしないよう支えたままで、片手でクランプ、さらにもう1つの手でクランプだ。手が2本では足りない。 しかも暗闇の中手探りでだ。使い勝手の悪いことといったら、

このバランスがあらゆる方向でとれていなければならないというのがくせものだ。ある方向で完全にバランスがとれているからといっても安心してはならない。あらゆる方向でそうでなければならないのだ。うそだと思うなら、愛用の赤道儀をノークランプのまま鏡筒を大きく振ってみればいい。バランスがとれていたはずの鏡筒がたちまちアンバランスになることを経験できるはずだ。クランプしていないと、即動き出し、ガチャーン。

悪いことに、ニュートン式はアイピースが横に出ている関係で、生まれつき、重心と鏡筒中心が一致していない構造だ。ゆえに、当初
鏡筒のカウンターウェイトなどで完全に鏡筒のバランスをとったとおもっていても、大きく方向を変えたり、鏡筒回転をしただけで、バランスがくずれてしまうのだ。経緯台では単に鏡筒の上下方向(1方向)だけでバランスをとっておくだけでよい。


見易さ、使いやすさ
それより、なにより不便なのは天体の導入などで、子午線をこえ東西に望遠鏡を大きく振った場合である。赤道儀は鏡筒が大きく回転する、したがって見口(アイピース)も一緒に大きく回転する。たとえば東の天体を楽な姿勢で観察。次に、西の天体を導入するため望遠鏡を振る場合、見口やファインダーがぐるりと回り鏡筒や架台の真上を超えてしまい、身を乗り出して見るか、逆に地面に這いつくばって見上げねばならない。ヨーク式では子午線をまたいでもドイツ式のように180度回す必要がないのが救いだが、架台がちょうど立つ位置にくるから脚立をたてることさえままならなくなる。とにかく架台が邪魔で覗きにくいことこのうえない。無理に見ようとすると苦しいうえ、危険も伴う。 鏡筒回転という手もあるが、鏡筒は精度が低いうえ鏡筒回転機構を設けるだけで剛性が低下するから、そのたびに鏡筒の芯が狂い、導入のやり直しになる。そのうえ鏡筒バランスもくずれやすいときている。

とにかく赤道儀というものは自由自在に鏡筒を振り回すことが苦手なのである、つまり天体導入が苦手なのだ。 一方経緯台ではどうだろう、 経緯台はどんなにふりまわしても見口やファインダはほぼ一定の高さと方向にありほとんど動くことは無い、架台が観察者や鏡筒と干渉することもなく、圧倒的に覗きやすく、使いやすいのだ。事実、赤道儀にしてからこの望遠鏡の出番は激減してしまった。  ことにニュートン式と赤道儀の相性はよくない。眼視では最悪だ。眼視では経緯台がベストマッチングなのだ

よく、”眼視だけなら経緯台でもいいが、写真までやりたいなら赤道儀”、と、いう人がいるが、これは大きな間違いだ。 
”眼視だけなら断然経緯台。写真だけなら赤道儀”が正しい。


ポンセットマウント

天体導入は経緯台で、追尾は赤道儀で、ができれば理想の望遠鏡架台が出来上がるはずだ。。。。と、そんな時
ポンセットマウントに出会ったのである。これは、、、経緯台と赤道儀の合体したものではないか。 経緯台なのに日周運動のキャンセルができるし視野野回転もない。これこそ究極の理想の架台ではないか。しかし市販されていない。だが自作に挑戦した例がある。かくして自作してこれを確かめることとなったのである。(最近の経緯台には天体の追尾機能のあるものもあるがたとえ短時間(数分)であっても視野回転のため星が流れるので、写真撮影にはまず使えないと考えてよい。

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