第14章 簡便な追跡がお奨め


筆者のポンセットマウントは現在。眼視には文句なし。また簡単な撮影もこなせるまでになった。しかし長時間露出の本格的な写真撮影はできない。ガイド装置を使えば可能かもしれないがいまのところ導入するつもりはないし本格的な写真撮影をやりたいとも思ってもいない。これ以上を望むのは、労多くして功少なしとなるような気がしてならない。


ポンセットマウントの本来の目的


ひるがえって、ポンセットマウントで本格的な写真撮影までこなせる程の性能がひつようなのだろうか。

ドブソニアンなど手動式架台の唯一の悩みは高倍率観望する場合の天体の追尾のやりにくさだろう。つまり、天体の追尾のためには手で動かす>高倍率のためなかなか中央にはいらない、やっと入れても、手で触れた振動がなかなかおさまらない>星がふらついて、目が回る。やっと振動がおさまったころには天体はすでに端に逃げている、

の繰り返しである。また、観望会などでは多くの観望者に惑星などを見せたいが、高倍率だからせっかく入れた天体がすぐ逃げる。そのたびに入れなおしてやらねばならない。などだろう。これらを解決するために考案されたのが本来のポンセットマウントなのではないだろうか。

間欠追跡式ポンセットマウント

この目的だけであれば、そんなに厳密なものはいらない。たとえば、天体導入しばらく眼視天体日周運動のため視野の端にモータON。視野の中央へ戻る。モータOFFしばらく眼視。天体日周運動のため視野の端にモータON。視野の中央へ戻る。モータOFFしばらく眼視。こんなものでも充分なはずだ。もし行き過ぎたとしてもモータを逆転すればいい、観望会などでは観望者自身にスイッチを持たせておけばいい。これでも、ドブの欠点をほぼ補っており、充分といえるのではないだろうか。これを間欠追跡式ポンセットマウントと呼ぼう

このような間欠追跡式ポンセットマウントなら自作するのはしごく簡単だ。いいかげんなレールの加工、安価な材料、コンパネベニヤや2*4材程度でも大丈夫、駆動装置もずん切りボルトと模型モータくらいでよく日周速度の5〜10倍で送れればいい。これでも20分〜30分の追跡は全く心配ない。モータドライブなら振動の発生も少ないからふにゃふにゃ、ぐらぐら架台でも収束は結構速く実用になる。そもそも観望中にはモータを止めるのだから観望中の振動やふらつきに悩まされることはなく望遠鏡の性能が100パーセント発揮でき快適な観望が楽しめるだろう。

追尾しながら眼視

これが追尾しながらの眼視となるとどうだろう?観望中に駆動し続けるのはそんなにたやすいことではないということを知らねばならない。そもそも追尾が必要だと感じるのは高倍率(200倍〜)眼視であろう。しかし、倍率を上げると揺れの影響は加速度的に増幅されるように感じられるはずだ。(低倍率では目の追随能力のためゆっくりした揺れは感じない。)

揺れないためには何が必要か?答えは、架台や可動部分の高い剛性だ。剛性が弱いと、振動を拾い、星がおどる。そこまででなくとも、星像がぼやけ、折角の高倍率が無意味となる。
次に駆動系の精度だ。モータやコントローラも高度なものが必要だ。正しい速さで一定速でまわらなければならない。ひっかかりがあるなどは論外だ。ギヤトレーンなども正確、強固でなければならない。レールや車輪も偏心や、凹凸のないものにしなければならない。これらの一つでもいいかげんだと観望中に星が不安定に踊る。眼視といえども高倍率となるとけっして快適とはいえなくなってしまう。高倍率が使えなくて、なんのための赤道儀?となってしまうのだ。つまり、材料選びや、加工、仕上げなど、すべて高度なものが必要になるのだ、とてもじゃないが、自作では。ということになってしまうだろう。

実際、多くの自作者がこれで失敗、挫折している。もっと賢明な方は石橋を叩いて渡らずかもしれない。しかし追尾しながらの眼視をきっぱりあきらめ、上記のような簡便な追跡に徹するならばだれでも楽に自作でき快適な観望が楽しめるのだ。

最近次々と大口径ドブソニアン望遠鏡が発売されており、しかもかって考えられないようなロープライスでだ。しかも低倍率での星雲だけでなく、高倍率での惑星観察も充分こなせるだけの鏡面精度をそなえているという。購入を考えている方も多いことだろう。しかし、30センチを超えるような大口径は我々アマチュアにとって現実的にはドブソニアンしか選択肢がないといっていいだろう。ドブソニアンは経緯台なので高倍率での天体の追尾は苦手だ。といって、眼視しかやらないのに、たかが追尾だけに高価で重たい、しかも元来眼視には適していない(理由は既出)赤道儀を買わされるのは納得いくまい。これでは折角の超安価が泣く。と悩んでいるあなた。こんな悩みを一気に払拭するのが、この間欠追跡式ポンセットマウントの自作なのだ。

すくなくとも最初の1台目は高望みせず、このような簡便な追跡式ポンセットのから始めることをお勧めしたい。理論を理解できるようになり、工作の腕があがり自信ができてから本格的追尾が出来るポンセットに進んだほうがかえって早道なのではないだろうか。

できれば、メーカで、こんな間欠追跡式ポンセットマウントをドブソニアンのオプションやキットででも販売すればいいのだが。安値(1万円くらい)なら筆者も買いたい。

TOP ページへ