コラム

社員の化学日記 −第25話 「製品の試験方法」−

今回は,製品の試験方法について簡単に書こうと思います。

含量の試験を行うときには,主に重量分析法や容量分析法を使います。

重量分析法とは,重さを用いて分析結果を求める分析方法です。 原理は次の様になります。 物質(A)が化学反応により,別の物質(B)に変わるとします。 どのように反応するのかがわかっているため,物質(B)の重さから物質(A)が何gあったのか計算で求めることが出来るというものです。

物質(A)を物質(B)に変える化学反応には,いろいろありますが,簡単な方法として,物質(A)を加熱して酸化物の物質(B)にするというものがあります。 実際の試験の流れを簡単に書くと次の様になります。 まず,物質(A)を含む試料の重さを量っておきます。次に,試料を加熱し,酸化物である物質(B)に変えて,その重さを量ります。 物質(B)の重さから,計算によって物質(A)が何gあったかが求められます。 試験で求められた物質(A)の重さで試料の重さを割れば,試料に含まれている物質(A)の含量が求められます。

次に,容量分析法ですが,これは溶液の量を用いて分析結果を求める分析方法です。 原理は次の様になります。 物質(A)に,物質(A)と反応する溶液(滴定液)を加えます。 滴定液1mlが物質(A)何gと反応するのかがわかっているため,反応が終了するまでに使った滴定液の量がわかれば物質(A)が何gあったかを計算で求められます。 試料に対して試験を行い,求められた物質(A)の重さで試料の重さを割れば試料に含まれている物質(A)の含量が求められます。 反応が終了したかどうかを判断する必要がありますが,指示薬というものを加えておけば,反応が終了すると色が変わるため,色が変わったどうかを見ていれば判断することが出来ます。

含量の他には,不純物の分析も行います。 主に,比濁分析や比色分析で行います。

比濁分析というのは,濁りの濃さを比較して分析結果を求める分析方法です。 この分析方法は,硫酸塩という項目の試験を行うときに使います。 硫酸塩を含んでいる溶液に塩化バリウム溶液というものを加えると,硫酸塩がバリウムと反応して,硫酸バリウムという物質を作って,これが沈殿してきます。 沈殿による濁りの濃さは,硫酸塩の量に応じて濃くなります。 この性質を利用して,硫酸塩の量が規格値以下になっているか判定することができます。 試験の流れは次のようになります。

まず,規格値(例えば0.001%)の量の硫酸塩を含む溶液を作ります(これを標準側溶液と呼びます)。 次に,試料を溶かして溶液を作ります(これを試料側溶液と呼びます)。 標準側溶液と試料側溶液の両方に塩化バリウム溶液を加えて硫酸バリウムの沈殿を生じさせます。 試料側溶液の濁りの方が標準側溶液よりも薄い場合は,試料が含んでいる硫酸塩は規格値0.001%よりも少ないと判定できます。 逆に試料側溶液の濁りの方が標準側溶液よりも濃い場合には,試料が含んでいる硫酸塩は規格値0.001%よりも多いと判定できます。 同じ様にして塩化物という項目の試験も行っています。この場合は,硝酸銀溶液というものを加えて,塩化銀という物質を沈殿させます。

比色分析というのは,比濁分析とよく似ていて,色の濃さを比較して分析結果を求めるものです。 この分析方法は,鉄という項目の試験を行うときに用いられます。 鉄を含んでいる場合,1,10-フェナントロリン溶液というものを加えると,橙色になります。橙色は,鉄の量に応じて濃くなります。 比濁分析のときと同じ様に規格値の量の鉄を含む溶液を作って,色の濃さを比較すれば,試料が含んでいる鉄が規格値よりも多いか少ないかを判定することができます。

試験方法は他にもありますが,今回はこの程度で終わりたいと思います。

【三津 和次郎(ペンネーム)】

次のコラムへ>>

<<前のコラムへ

▲このページのtopへ