ルートバーン・トラック(Routeburn Track) 
                   2つの国立公園をまたぐ 山岳気分満喫コース 

 ルートバーン・トラックは、 クイーンズタウン(Queenstown) から50km先の グレノーキー(Glenorchy)を経て、更に奥に入ったルートバーン・シェルター(Routeburn Shelter)がスタート点。到着点はティアナウ(Te Anau)から ミルフォード・ロード(Milford Road)を約80kmほどを奥に入ったザ・デバイド(The Divide) で33kmの山岳コースである。

今回は、このコースに、イージー・トランピング・トラック(Easy Tramping Track:DOCの分類)の1つ
グリーンストーン・トラック(Greenstone Track)を続けて歩き、グレノキーに戻るラウンド・トラック(周回コース)とした。
ルートバーントラック部分で2泊3日、グリーンストーン・トラックを含めて4泊5日で歩いた。


ルートバーン・トラックは、ザ・デバイドから逆コースでルートバーン・シェルターに抜けることもできる。


インターネット情報と予約

*リンク                 
・Routeburn Track の情報(英) :Department of Conservation
・交通(英) : ・Backpacker Express
        
 ・Kiwi Discovery

*ルートバーン・トラックのハット(Hut)は予約が必要
 10月28日から翌年の4月28までの期間は予約が必要。予約は7月1日から受付開始。DOCのサイトで予約ができる(クレジットカードによる先払い)。小屋の予約状況をリアルタイムで見ることができ、オンラインで予約する。予約が取れると予約番号を連絡してくる。指定されたDOCビジター・センターで指定日までにハットパス(Hut Pass)を受け取る。

現地での情報入手と交通の予約
Routeburn Track のりっぱなパンフレットがDOCで無料で手に入る。 
Routeburn Track & Greenstone Track のTrack Map(1/75000の地図)がDOCで$15。
登山口までの交通は予約が必要。DOCで予約ができる。

歩いた年月日:  
2003.1.02.〜1.04 
 

コース
 
出発の2日前の12月31日。夏というのに「南風」がぴゅ‐ぴゅ‐と吹く寒いクイーンズタウンの大晦日の夜。ディスコと花火で、大いに盛りあがった若者が、カウントダウンと共に興奮してフリチンで ワカティプ湖(Lake Wakatipu)に飛び込むのを眺めるうちに、2003年の新年を迎えた。元旦は快晴となり、翌2日の出発の日も好天が続いた。
Mieは寒さで風邪をひいたが、熱も無くなり、回復してきて一安心。


1日目Routeburn Shelter-(1h 50min)Routeburn Flat Hut-(1h 40min)Falls Hut /Total
8.8km 3.5h (Standard 3-4.5h) 

 予約していたバックパッカー・エキスプレス(Backpacker Express )の小型バスがB&Bに迎えに来てくれる。市内をあちこち回ってお客をピックアップしクイーンズタウンの町を出るまでに30分ほどかかる。客はダート・リバー (Dart River)でジェットボート(Jet Boat)に乗る人が大部分で賑やか。
 ワカティプ(Wakatipu)湖をずーと左に見、前方に真っ白に輝くアーンスロー山(Mt Earnslaw、2819m) の姿が見えはじめてから間もなく、グレノキーに着く。
 バスの乗換え時間(約30分)の間に、インフォメーション・センターで グリーンストーン・トラックのインテンション・カード(Intention Card:入山届)を提出する。書き方を親切に教えてくれ、下山した時に提出する半券をもらう。登山口までのバスにトランパー 6人ほどが乗車し出発。30分ほどで登山口のルートバーン・シェルター(Routeburn Shelter)に着く。グレノキーから見る山は全て扇状地から急に立ち上がった形をしていて、登山口はその立ち上がった山の谷あいにある。  

 「Routeburn Track」 と大きく書かれた表示の前でザックを点検し、歩き出す。出発してすぐブナの林となり、ルート・バーン(バーンとは小川という意味)の谷川にそって歩く。道はフラットだが、さすがに5日分の食料は重い。苦しい姿勢で上を仰ぎ見ると、頭上は覆い被さるように岸壁がせまり、真っ青な空が僅かに覗く。谷の底の瀞の水は緑色に輝き底まで透けて見える。
谷筋に沿って歩き、谷がぐっと広くなった所がルートバーン・フラット・ハット(Routeburn Flat Hut )の分岐。谷川の水が静かに流れる岸辺で昼食をとる。ガイドと一緒のデイ・パックの日帰りウォーカーやトレッカーが賑やかに挨拶しながら通りすぎる。
 日本人、特にMieと同じ年頃のおばちゃんが多い。おばちゃんパワーはニュージーランドでも健在。日本人のおっちゃんのグループは殆ど見ない。おっちゃんは何をしているのだろうか?

この分岐から、フラットな道と別れ、急登になる。後方にマウント・アーンスロー(Mt Eanslaw) が白く輝いて見える。
Routeburn Falls Hut 手前からMt Eanslow 方向

 ずうっと続いていたブナの林が切れ、今日の終点 ルートバーン・フォールス・ハット(Routeburn Falls Hut)に着く。予想より早く着いた。バスで一緒に来たトランパーはこの小屋を通りすぎ、明日我々が泊るマッケンジー・ハット(Mackenzie Hut)に向かって行ったもようで、小屋には誰もまだいない 。この小屋にはもっと遅い便のバスを利用して来るようだ。
 
 小屋は清水寺の舞台のように崖に立っていて、歩いて来たルート・バーンの谷とマウントアスパイアリン国立公園 (Mt Aspiring National Park)の山々が一望に見渡せる。
 
滝の上からRouteburn Falls Hut と Route Burn
 
小屋の後ろを少し上ると、ルートバーン・フォールス(Routeburn Falls)の滝がある。
景色も天気も良し、サンドフライに気を付けながら、岩に寝そべりのんびりと過ごす。心配していた女房の風邪も汗を流したせいか、すっかり良くなったようだ。
ルートバーン・フォールス

夕刻、小屋は満杯になったが、日本人は私達だけ。
沢山日本人に会ったが、荷物を背負って歩く日本人は、海外でも少ないようだ。



2日目Falls Hut-(1h 50min)Harris Saddle Shelter -(1h 10min) Conical Hill 往復 ‐
(3.5h) Mackenzie Hut / Total 約14km 6.5h (Standard 5.5h-8h)

 小屋の掲示板には今日は雨かもしれないという予想。だが、薄曇で山はよく見える。小屋を出て、滝の横の岩場を登ると、雪がかぶった鋭い山に囲まれた広い台地に出る。台地の中央をRoute Burn の支流が流れる。川の近くにマウントクックリリーやジャイアントデージーが咲いて気持ちの良いトラックが続く。

 左側の山裾をぐるっと回るように歩き、川の源流に近づく。見下ろすと、レイク・ハリス(Lake Harris)の1箇所から水が溢れ、源流となり、右手に流れて蛇行しながら、遥かにルート・バーンの谷へと注ぎ込む様子が一望のもとに見渡せる。
RouteBurn支流  
 登りきった所で、レイク・ハリスの湖を下に見る。左から正面は切り立った岩にすっぽり囲まれている。湖を右下に見ながら、崖を削り取った巻き道を歩き通りすぎると、今まで見えなかった山々がホリホード川 (Hollyford River)の大きな谷越しに広がる。

ハリス・サドル(Harris Saddle:鞍部、1255m)に
出、すぐに立派な避難小屋(シェルター)に着く。風も弱く、落着いた天気で薄曇ながら見晴らしは良い。

小休止のあとシェルターに荷物を置いてコニカルヒル(Conical
Hill、1515m)に登る。,始めはホリフォード・リバー側を登り、次いで反対側に出、レイク・ハリスを真下に見る場所に来る。登った時、ここには大きな雪渓が残っていて、慎重にトラバースする。
Lake Harris
 
ピークからの眺めは素晴らしい。深く切り落ちた谷と急峻な山と雪と氷河が織り成す360度
の大パノラマだ。背筋がゾクっとなるような感覚を覚えて息を呑む。北に高く白く輝いて見えるのは多分フィヨルド国立公園 (Fiordland National Park)で一番高いマウント・ツトコ(Mt Tutoko、2746m)、その右にレイク・マッケロー(Lake Mckerrow)の湖面が反射して見える。その奥にタズマン海が見えているような気がするがはっきりしない。

 コニカルヒルのピークは広く、場所を移動しながら落着いて展望を楽しむことができる。
Conical Hill からのダラン山脈(Darran Mountains)

 この山に登らず素通りするトランパーが意外と多かった。コンディションが良ければ是非登っておきたい山だと思う。

 シェルターに戻り、中で昼食。
シェルターを出てからは、
右下にホリフォード・リバーの谷を見、その谷越しにダラン・山群(Darran Mountains)の山並みを眺めながら、森林限界を超えたあたりの等高線にそって歩く。見晴らしは良く道は平坦、しかし同じ景色で変化が少なく、多少飽きてくる。贅沢な不満。
Harris Saddle と マッケンジー小屋(Mackenzie
Hut )の間のトラック

 ハリス・シェルターから約2時間が過ぎた頃、山腹を巻いて南から東に向きを替えた所で、景色がガラリと変わる。正面左に雪が残るエミリーピーク(Emily Peak、1820m)、正面真下にレイク・マッケンジー(Lake Mackenzie)、湖岸の右端に今日泊るマッケンジー・ハット(Mackenzie Hut)が小さく見える。

上から見る湖面は濃い
緑色、例えて言えば抹茶の色だ。ここからジグザグ道を一気に小屋まで下る。下り坂はフラジル(Fragile:崩れやすい傾斜)で、ここがコースの中で一番沢山の山の花が咲いていた。大型小型のデージーやマウントクックリリー、それにゴールデン・スパニアード(Golden Spaniard)というニュージーランドの山には珍しい黄色の傘形の大きな花などがみられた。
Lake Mackenzie と エミリーピーク(Emilly Peak)の谷
 
ジグザグに長い距離を下りた所が マッケンジー・ハット。夕食を作るには早過ぎるので小屋の前
で、エミリー・ピークをスケッチする。
 オーストラリアから来た子供3人(10歳〜14歳くらい)と母親のグループとベットが隣り合わせになる。子供達は、食事の後片付けも、翌朝出発前のザックのパッキングも、全部自分達でしていた。ここで子供に会うとは思っていなかったのと、全く手のかからない子供達を見て、感心する。女房は女の子達に折り紙を教える。  
Mackenzie Hut 前からEmily Peak、スケッチ
 

3日目Routeburn Trackから Greenstone Trackに入る。
Mackenzie Hut -(1h 40min) Earland Falls -(1h 10min) Howden Hut →Greenstone Track

 雨の予報通り朝から霧雨、山のピークはガスに隠れ見えない。子供達は、我々とは逆方向に小屋を出ていった。昨日作った折り紙を大切そうにザックにしまっていたのが印象的だった。

歩き出してすぐ、山腹に光が当り、目線の下に虹が出た。綺麗だが、これが本降りの雨の前兆だった。
雨が強くなる前、
右下に
ホリホード川 (Hollyford River)が見える

リンゴの木の林かと思うようなオーチャード (The Orchard:果樹園) と名付けられた場所を通る。この辺りから雨は強くなり、山は全く見えなくなる。
アーランド・フォールス(Earland Falls、高さ80m)滝の真下を通る。水量が多く通れないときは下に巻き道がある。
雨はどんどん強くなる。何箇所かビューポイント(View Point)があるはずだが何も見えない。

ホーデン・ハット(Howden Hut)に着く。小屋はさほど大きくなく、ガイド付きのトランパーもここで休憩しコーヒーのサービスを受けている。中は人で一杯で入れそうもないので、軒下で昼食にする。
計画では、ここに荷物を置き、
キーサミット(Key Summit)を往復する予定であったが、何にも見えそうもないので、このままグリーンストーン・トラックに入ることにする(後日テ・アナウから日帰りでキー・サミットに登り、ついでにこの小屋にも再訪した)。

ホーデン・ハット前のレイク・ホーデン
(ホーデン・ハット再訪時の晴れの時に撮ったもの)

ホーデン・ハットからはデバイドに出るトレイルと別れ、小屋前のレイク・ホーデンの右岸を通り真っ直ぐグリーンストーン・トラック(Greenstone Track)のトレイルに入った。

 

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