エイベル・タズマン・コースト・トラック
Abel Tasman Coast Track
干潮時間を調べて、海岸沿いを歩く人気コース

 南島の北西端、雨が比較的少なく明るい海岸線を、ゆったりと歩くユニークなトランピングな(Tramping)コース。DOC の山小屋は4つあるが、ボートで何処からでも入れるので、スケジュールはどのようにでも組める。私達は全長51kmの全トラックを3泊4日で歩いた。私は少し飽きた感じがしたが、Mieは一番良かったと言っている。

インターネット情報と予約

*リンク
・DOCによるTrack全般の情報(英) :Department of Conservation
・Nelsonからのバス(英): Abel Tasman Coachlines
 
*小屋(Hut)は予約が必要: 
 10月1日から4月30日の利用に対し予約が必要で7月1日から受け付けが始まる(
追記:2006年のシーズンから年間を通して予約が必要になりました)。DOCのホームページ・エーベル・タズマン・コースト・トラック(Abel Tasman Coast Track)の項から予約状況を確認してオンラインで予約ができます。料金はクレジットカードによる先払いになります。
2002年当時ですが、宿泊チケットは自宅に送ってもらうか現地で受け取るか選択ができました。自宅への送付を選んだ所、チケットと一緒にコースガイドも送ってくれました。
 特に注意点は、ここの小屋にはクッキング用の備えつけコンロがありません。他のグレート・ウォークの小屋には通常コンロがあるので、ここにもあると思い込まないように。忘れずにクッキング用のバーナーと燃料を必ず持っていくように気を付けましょう。 

*バスやボートは予約が必要: ネルソンとグレートウォークのスタート地点及び終了地点間のバスや海岸線を移動するボートの予約は小屋を予約する時に同時にできる。私は日程に余裕があったので、クライストチャーチ(Christchurch)に着いたときにビジター・センタでバスの予約をし、ボートの予約はネルソン(Nelson)のビジター・センターでした。 

*干潮と満潮の時間: DOCのホームページのエーベル・コースト・トラックのページからリンクして調べることができる。このコースは干潮時間によって影響を受ける場所があるので、その場所を把握し、日々の干潮時間を良く調べてから日程を組んだ方が間違いが無い。

歩いた年月日;2002.11.11.〜11.14
コース

1日目Marahau -Anchorage Hut / Total 11.5Km, 4h 40min (Standard 3-4h)


 ネルソン(Nelson)のバスターミナルからタズマン・コーチ・ライン(Tasman Coach Line)バスでマラハウ(Marahau)行きに乗る。1時間45分間の乗車の後 終点のマラハウ・DOC・カー・パーク(Marahau DOC Car Park)で降りる。料金は1人$13(約千円)、日本の運賃が高すぎるのか、ニュージーランドが安いのか。  同年代の横浜から来たという夫婦と挨拶を交わして出発する。トラックは先ず、河口にかかる長い木の橋を渡る所から始まる。ニュージーランドに来て始めての小屋泊りのトランピングでザックが重い。女房は歩けるかしらと心配顔。アップダウンのない平坦な道に助けられ、ペースは遅いが順調に歩く。小雨が降るが日も射す。時々右手下に海が近づく。沢山のカヤックがのんびりと漕いでいる。日の光が弱いが穏やかな日だ。 アカーステン・ベイ(Akersten Bay)が見えた所から半島を横切る形で内陸に入り少し登りになる。 たいした苦労も無くアンカレッジ・ハット(AnchorageHut) に着く。
小屋は大きなボートが留まっている入江の海岸にある。



 砂浜に出てちょっとの間スケッチを描いた後、 出発した時会った横浜の夫婦と夕食後にマッスル(Mussel:ムール貝)を岩場に取リに行く。大きいのは数が少なかったが4人で20〜30個ほどとれた。近くのキャンプ場で焚き火をし、焼いて食べた。野趣があって美味であった。ヨーロッパ系は誰もムール貝に興味を示さないようだ。
アンカレッジ・ベイ(Anchorage Bay)、スケッチ

 小屋のBunk(バンク:二段ベッド)は満杯。木でできたベッドだが、一つ一つマットレスが敷いてあり、一畳以上の広さでまずまずの寝心地だ。ハット・チケット(Hut Ticket) は夕食を終えた頃、ワーデン(Wardn:管理人)が回ってくるので、来た時に見せる。チケットの番号29を見て受付開始日の申し込みですね、と笑って言って親指をぐっと立てチェックは終わった。


2日目Anchorage Hut-(2h 50min)Bark Bay Hut-(2h)Onetahuti-(2.5h+2.5h:ボートと回り道のロス)Awaroa Hut / Total 21km 10h (Standard 6h-7.5h) 今日のコースには、潮の高さにより歩行が難しくなる所が二ヶ所ある。干潮は9:36。小屋を出てすぐ先のトーレント・ベイ(Torrent Bay)は干潮時で問題無いが、16km先のオネタフチ・ビーチ(Onetahuti Beach)北端が問題。パンフレットに干潮時間±3時間に渡れと書いてある。我々の足で、その時間に着くのは微妙な時間。渡れなかったら潮がひく迄待たねばならない。出発の前日、ネルソン (Nelson) の案内所で干潮時間を確認した時に、この場所はボートに乗って先に進んだ方が安全と考え、Onetahuti Beach からアワロア・ベイ (Awaroa Bay)迄の間を定期便ボートに乗るよう予約をしておいた。  
 横浜の夫婦は途中のバーク・ベイ・ハット(Bark Bay Hut)に泊るとのことで、別れを言い小屋を出る。今日は快晴。出発してすぐトーレント・ベイの潮の引いた干潟にでる。約1km先の対岸に方向を示す印の付いたポールが立っていて僅かに見える。

クライストチャーチで買ったトレッキング用のサンダルをザックの中に入れてしまっていて、出すのが面倒なので、登山靴を脱ぎジャブジャブと裸足のまま歩き始める。やたら二枚貝の貝殻が増え始め、その内全面貝殻だらけになる。痛くて歩けないほどだか、水の中でザックを下ろしてサンダルを出すわけにもいかず、我慢して歩きとおす。家内が貝殻で足の指を怪我する。これがまず第一の失敗。
Torrent Bay,右奥の潮の引いた湾を歩て来た

 内陸部をずっと歩き、フォールス・リバー(Falls River)の吊橋に出る。5人の人数制限がある高く長い橋。我々の先にドイツ人の若い男女の一団が、揺れる吊橋の上でキャーキャー言いながら写真を撮っている。若いのは元気があって羨ましい。 内陸部は展望は殆ど利かないが、色々な小鳥が現われ、鳴き声も賑やかだ。
ベルバード(Bell Bird)と思われる綺麗なさえずりも聞こえ、結構楽しい。バーク・ベイ(Bark Bay)の小屋を過ぎ、湾の綺麗な砂浜を歩く、ここからまた内陸に入り、オネタフチ・ビーチ(Onetahuti Beach)にでる。広く長い綺麗なビーチだ。渡れるか渡れないか悩ん場所はまだ1km先。しかし、ボートのピックアップ場所は手元の案内図で見ると、ビーチの入口になっていて、見渡すと、いくつかのベンチがあり、そこに乗り場の表示があった。クロッシングの許容時間表示もあるので見てみると、そこには何と干潮の±4時間と書いてある。「アーア、なんでパンフレットの表示と違うの、これなら充分渡れたのに」と叫んでも、ボートをキャンセルする方法がない。我々より遅いパーティーが通りすぎていく。これが第2の失敗。 仕方が無い、すぐ前に小さなトンガ島 (Tonga Island)も見え景色も良いし、天気も良いし、ベンチで昼飯を食べ、砂浜に寝そべって予約したボートを待つことにする。

 暫くするとカヤッキングの一団が岩陰から現われた。女性もいる。インストラクターの指示でカヤックを砂浜に上げ、載せていた荷物などを整理し三々五々休憩している。これからどうするのかなーと思っていると、程なくボートがやってきて、カヤックをボートに載せ,カヤックを漕いできた人は、別のボートに乗り帰っていった。なるほど、片道のカヤッキングか、これなら遠くまで漕いでいけるなぁ、と納得。こんなのをボヤ‐と見ながらスケッチを描く。
Onetahuti Beach とTonga Island、スケッチ 

 やっと我々のボートが来た。桟橋もなにもない砂浜の海岸に、15人ほどで一杯になるほどの小さなボートが尻から砂浜に寄ってくる。波が引いたときに飛び乗れと言う。重いザックを放り入れて乗っていた先客に引っ張り上げてもらう。乗ろうとしたときザブンと波が来て片方の靴がびしょ濡れ。家内はうまく乗った。救命道具を付け終わらない内に猛スピードで走り出す。バンバンバーンと洗濯板の上をぶっ飛ばすような走りだ。水飛沫で目も開けていられない。こんな定期便、日本では絶対に許可されないと思う。15分程でアワロア・ベイの砂浜に着く。ここも何も無いただの砂浜。乗ったときの要領で飛び降りる。今度はうまく行った。我々以外の10人ほどの客は皆、目の前のアワロア・ロッジ(Awaroa Lodge)のホテルに泊るようだ。 私達はアワロア・ハット(Awaroa Hut)まで少し歩かねばならないが、道は平坦、自然に早足になる。と突然川口に出、道は岸から水中に消えている。狭い川だが満潮らしく満々とした水で渡れない。少し上流も見たが渡れるような深さではない。こんな所どこにも書いてなかったはず、と良く良く地図を見ると、ボートに乗らずオネタフチ・ビーチから歩いてくれば自然とこの川の対岸に出て、こんな川を渡る必要が無いことが判る。これが第3の失敗。 渡れるまでどのくらい時間を待つ必要があるのか分からない。川の上流に行く道を登り、対岸に出る道に合流するしかなさそうだ。来た道を少し戻った所で、たまたま道を整備している人に出合い、確認すると、その道しかないと言う。「しっかりしてよ」とMieが言うが、気合を入れて登るしかない。 このまま歩けばオネタフチ・ビーチに戻ってしまうのではと心配になるほど登った頃、漸く小屋に続く道に出る。今度はどんどん下りると、やっとさっきの川口の反対側に出た。向こう岸にいた時から既に1.5時間以上も経っている。水位が少し下がった感じだ。今なら少し上流から渡れそうだ。正しい英語で道を整備していた人に聞いたかどうか自信が無くなる。潮が引くまで待つべきだったか、と悔やみながら歩く。ボートを降りてから2時間後、やっとアワロア・ハットに着いた。アワロア・ロッジとアワロア・ハットの間にある川が高潮で渡れないときは、潮が引くまで待ったほうが良いようだ。 
 ここのハットは細かく分かれた部屋にベットが置かれている。今日はベットが半分ほど空いている。見ていない顔が多い。日本人は我々のみ。昨夜も見たフランス人の若夫婦が愛想良く挨拶してくれ、隣のベットになる。これが駄目押しの第4の失敗。 疲れてスーと寝かけたまさにその時、フランス人の若旦那がゴウゴウという猛烈なイビキをかき始めた。吸う時も吐く時も、まるで新幹線が鉄橋を渡る時のような音で、一晩中止むことが無かった。この若旦那と抱き合って寝ている若い嫁さんは、なぜ眠れるのか、不思議だ。翌朝、グッド・モーニングと挨拶してきたが、返す言葉が無い。家内は一睡もできなかったとぼやきとおす。耳栓の用意だけは考えてもいなかった(後でDOCの案内書を読むと、持っていくべき物のリストの中にちゃんと耳栓と書いてある)。ついてない時は何処までもついていない。長い長い1日が終わった。



3日目Awaroa Hut-(2h 15min)Totaranui-(3h)Separation Point分岐- (1h)separationPoint往復‐(40min)Whariwharangi Hut / Total 7h (Standard 6h) 今日も快晴だ。小屋の前のアワロア・インレット(Awaroa Inlet:入江)は干潮時に入江の中を歩く以外、他に道は無い。干潮の時間は10:46、これに合わせて9:30に小屋を出る。今回はしっかりとサンダルを履く。入江には所々深い所があり、膝以上まで水に漬かりながら歩く。広い浅瀬が広がっている。約30分かかって渡りきる。 渡った所から山に入る。1時間ほどでアップダウウンの山道を抜けると、延々と続くコート・ベイ(Coat Bay)の海岸に出る。砂浜がずーと伸び、その波打ち際を歩く。トランパーの姿が点のように遥か砂浜の彼方に見える。青い海から静かに寄せてくる波の音と濡れた砂を踏みしめる自分の足音だけが聞こえてくるが、それも大自然の中に吸い込まれていく。静かだ。この長い海岸を満喫したころバス停があるトタラヌイ(Totaranui)に着く。車も止まっている。 少しの間、車道を歩くと、すぐトラックの道に入り、アップダウンの山道を超えるとアナパイ・ベイ(Anapai Bay )の海岸に出る。ここまで来ると、水平線上に見えていたマールボロ・サウンド(Marlborough Sounds )の半島が消え、水平線のみになる。これから行くセパレート・ポイント(Separate Point)半島の先端が前方に見えてきた。少し内陸をジグザグと歩きアナタカパウ・ベイ(Anatakapau Bay) の砂浜に出た所で、オイスターキャッチャー(Oystercacher)が突然頭上から何遍も攻撃を仕掛けてきてびっくりする。人が通る所ではないと言っている。近くに雛がいるようだ。怪鳥に驚かされたが、この砂浜は更に静かさを感じる。

半島の先端のセパレーション・ポイントには,海沿いの道から行ける近道があるはずだが、取り付部分を通りすぎ、内陸の道に真っ直ぐ入ってしまったようだ。後ろを振り向くと歩いて来たアナタカパウ・ベイが綺麗に見下ろすことができる。立ち止まりスケッチをする。 
Anatakapau Bay、スケッチ

 山を登りきった所に、岬に行く分岐点があり、ザックを置いてセパレート・ポイントを往復する。我々より後から来たパーティーも海沿いから岬に行く道に気がつかなかったと言っていたが、たいした時間のロスではない。左が断崖でそこを削った細い道を歩くと岬の先端に着く。ぐるっと270度が海、絶景。エイベル・タズマン・コーストの景色は何処も女性的だが、ここだけは荒々しい。 あとはワリワランギ・ハット(Whariwharangi Hut)を目指すのみ。下りをとんとんと歩き小屋に着く。北島のロトルア(Rotorua)から来たという同年代の二人ずれの夫人とベットがとなりになる。今日はこの先のワイヌイ・ベイ(Wainui Bay)の対岸まで行って来た所で2泊目だと言って泥だらけの靴を見せる。何度もこの辺りに来ているようだ。 幸い今晩はイビキのフランス野郎は別室だ。ベットに横になり、顔を少し傾けると、窓を通して満天の星が目に入って来る。空が全部星で埋まってるなぁー、どの星もでかいなぁー、瞬きの強さが違うなぁー、などと眺めている内に眠りに入った。


4日目Whariwharangi Hut-Wainui Car Park / Total 1h 50min (Standard 2h )  朝食を作っているときに見ると、3泊とも一緒だったのはイビキのフランス人のカップルとスエーデン人の女性2人だけのようだ。このコースは反対からも歩けるし、バスやボートでも色んな所から入れるし、荷物も小屋まで運んでもらうこともできるようで、色々な選択ができる。  今日も天気は良い。小屋を出て、ゆるい登りを暫く行くと、峠に着く。ここからは四駆が走るような緩やかな下り坂になり木は潅木になり開けた感じだ。

ワイヌイ・ベイ(Wainui Bay) が下に見える。松のない天橋立のようだ。遠くフェアウェル・スポット(Farewell Spot) の張り出した岬も見え、変化のある景色を楽しめる。それに色々な小鳥が飛び跳ねる。さえずりがうるさく感じるいほど小鳥の密度が高い道だ。
Wainui Bay ,
干潮±2h内なら対岸に渡ることができるそうだ

 食料は非常食を除き、殆ど食べつくし、ザックは軽い。あっという間にワイヌイ(Wainui)のバス停に着く。ここがそうかと思うほど人気がない所だ。バスの発車時刻まで、3時間以上もある。海を振り返ると、丁度干潮時で岩だらけの海岸が続いている。貝を取りに行くことにする。大きくはないが牡蠣がへばりついている。アーミーナイフの缶きりが牡蠣をこじ開けるのに使い勝手が良い。簡単には見つからないが、何個か取って食べることができた。それにマッスル(Mussel:ムール貝)もある。今晩帰ってからモーテルで食べようと比較的大きいのを30個ほど取り、ビニール袋に入れる。 昼食を食べてうろうろしていると、猛烈な砂埃をあげてバスが来た。乗客は10人ほど、全員小屋に泊っていた人達だ。バスは山をどんどん登り、峠のビューーポイントに来る。遥か下に海岸を見下ろす景色の良い峠で、乗用車が沢山泊っているが、バスは案内のアナウンスも停車するサービスもなく、どんどん走る。途中モツエカ(Motueka)でネルソン行きのバスに乗り換える。運転手が私達に何か聞いているがいるが何を言っているのか分からない。スタイングといっているようだ。何遍か聞きなおしてやっと何処にStaying しているのかと聞いていることが分かった。ネルソンの好きな所に降ろしてくれるということだ。便利なシステムだ。ネルソンのビジター・センター前でバスを下りてから、スーパーマーケットでワインを買い、モーテルで採ってきたきたムール貝のワイン蒸しを作る。時々ジャリっと砂を噛むが、エイベル・タズマン・コーストの香りが漂い、最高の味を楽しむことができた。



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