B  3日目
 ダート・ハットからカスケード・サドル往復
( 3rd Day、 Cascade Saddle Return)


カスケード・サドルはダート・ハットから日帰りで往復できるサイド・ウォークだが、案内書には片道4〜5時間と書かれているロング・ルート。ポールとケルンを目印にして鞍部まで歩きます。途中の荒々しい谷も、鞍部から見える氷河や白い山群も素晴らしい眺めです。
鞍部から少し右に登れば景色は更に良くなりますが、鞍部を越えてマツキツキ谷(Matukituki Valley)に下るのは難しいコースとなっています。


コース
Dart Hut-(2h25min)Dart Glacier末端-(2h)Cascade Saddle(Lunch Time & 鞍部上部散策 計50min)-(1h20min)Dart Glacier末端ー(2h15min)Dart Hut
Total:8h(休憩と散策を含んで9h40min)
標高差:登りと下り564m
最高標高:1524m

エドワード山、 トレイルは右下の川原に下りる


快晴。風も殆ど無い。1つのザックにまとめて私が持ち、Mieはストックのみの空身、いらない荷物をベットの片隅に置く。長丁場の日帰りウォークになるので、朝7時20分に出発。同宿者はダレイズ・フラット・ハット(Daleys Flat Hut)に下りると言っていたので、カスケード・サドルに向かうのは我々2人だけのようだ。

昨日渡った吊橋を渡り、キャンプ場にある分岐標識に従い左に入る。オレンジ色のポールが立った草地のトレイルを登ると、昨日見えていたエドワード山(Mt Edward 2620m)が朝日に当たり正面に真っ白に大きく見え出した。やはり晴れはありがたい。





川原に下りて進む、 日陰は右の山裾を回るまで続いた
正面右:エドワード山、左の小さなピークはマリオン・ピーク)


左下にダート川を見下ろすようになり、暫く進むとダート川の広い川原に下りる。所々に作られたケルンを目印にして歩く。
比較的大きな沢が2本あり、これを越える。石伝いに飛び終えて殆ど濡れずに渡れたが、雨降りや雨の後は濡れるのを覚悟しなければならない所と思う。

出発してからずっと朝日は山に遮られ全く当たらず肌寒いが歩くには丁度良い。





川原から次第に石混じりの緩い登りの草地になり快適な歩きが続く。エドワード山に近づくにつれてピークが見えなくなるが、左のマリオン・タワー(Marion Tower 2343m)からぶら下がる懸垂氷河がどんどん大きくなる。

登りを感じさせない快適なトレイル マリオン・タワーから垂れ下がる氷河


落ちそうに見える懸垂氷河の端


谷は右に曲がり、ダート川を挟んでエドワード山の真下に出る。見上げると、氷河の端が岩壁の上にへばりついていて、何時落下してもおかしくないように見える。




進むに従い傾斜地のガレ場の登りになり、トレイルも分かりにくくなる。ケルンを確認しながら進むと、前方の谷に真っ黒で大きな土砂の流れが見え出す。良く見ると上に土や石が乗っている氷河です。ダート氷河の末端です。

右上にカスケード・サドルらしき鞍部が見えてきますが、まだまだ遥か上で、先は長いと知らされます。

土砂のような土を被ったダート氷河の末端 見え出したカスケード・サドルの鞍部

ダート氷河の末端が左下に見えるあたりまで登ってくると、ガレ場は益々急になる。ジグザグに登る所もあれば傾斜を横切る所もあり、ケルンを探しながらひたすら登る。
真っ黒なダート氷河の上流に白い氷河が見えだすと、グンと高度感が増す。
目の前の岩に突然キーア(山岳オーム)が下りてきて首をかしげる。何も食べ物を貰えないと知ると赤い羽根を見せて飛び去った。
見え出した白いダート氷河 愛嬌をふりまくキーア


ガレ場を登りきると、辺りは一変して草地となり穏やかな登りとなる、小さな池もある。

左手を見ると、エドワード山が聳え、その右下にダート氷河が広がり、氷河の奥にマオリ山(Mt Maori 2635m)のピークも見えはじめる。大パノラマの展開だ。
エドワード山
ダート氷河と氷河の上のマオリ山


登ってきたダート川(トレイルは左の傾斜)、 
右下は谷を埋める黒い氷河 



登ってきた谷を振り返ると、なかなかの迫力。懸垂氷河と、荒々しい絶壁に、黒い氷河の流れ。登ってきたガレの斜面が左側にずーっと続いていて長い登りだったのが良く分かる。

谷底の削られたような形や草の生え方を見ていると、素人目だが、さほど古くない時代まで氷河が谷を被っていたように思う。





登りは緩くなって鞍部はもう直ぐそこかと思ったが結構遠い。ようやく登りついた先は突然の崖、標識も何も無いがここがカスケイド・サドルだろう。崖下にマツキツキ谷(Matukituki Valley)が見え、正面にはロブ・ロイ・ピーク( Rob Roy Peak 2644m)。薄雲がかかりだしたが左端にアスパイアリング国立公園で一番高いアスパイアリング山(Mt Aspiring 3033m)が見える。振り返れば、ダート氷河が広がり素晴らしい展望。だーれもいないのがもったいない感じ。
幸い風も無く、草地に座り込んで景色を眺めながら昼食をとる。

カスケード・サドルよりマツキツキ谷を見下ろす、 
正面はロブ・ロイ・ピーク、その一番左端にアスパイアリング山


鞍部の右には草付の尾根が立ち上がっていて、オレンジ色のポールが点々と立ってるのが見える。マツキツキ谷へ抜けるルートになっていて、このルートを1時間〜1時間半ほど行くとパイロン(Pylon:塔)という見晴らし台に行く事ができるそうです。
そこまで行かなくとも少し行けば見晴らしが良くなるように思えるので登ってみました。急な傾斜をポールの数で4〜5本過ぎたあたり迄登って行くと、崖に近づく踏み跡があり、下の鞍部よりもぐっと高い崖上に出ます。マツキツキ谷も、アスパイァリング山も、ダート氷河やエドワード山も一段と良く見えるようになり、感激です。
しかも、6年前に歩いたロブ・ロイ・グレーシャー・トラック(Rob Roy Glacier Track)の登山口のラスプベリー・クリーク・駐車場(Raspberry Creek Car Park)までもが見えました。谷に防風林のように横1列に木が揃って生えているのを見て思い出したのですが、防風林の奥が駐車場のはずです。
この駐車場からワナカ(Wanaka)まで、車で約1時間の距離です。
横1列の木が見える奥が
ラスプベリー・クリーク駐車場
カスケード・サドルから少し登った所から見る 
マツキツキ谷と ロブ・ロイ・ピーク(正面)と アスパイアリング山(左端)
アスパイアリング山 カスケード・サドルから少し登った所から見る 
エドワード山(左)と ダート氷河

サドル(鞍部)から右に登る途中で、カスケード・サドルを見下ろすことができます。
左の写真の青色の〇印の所が左から登り着いたところです。ここは鞍部の底ではなくて、崖沿いに見える踏み跡の先が一番低いところで、そこまで下りられます。
上から見るカスケード・サドル(右の写真は拡大)


ゆっくり景色を楽しんだあと、同じルートを下る。下りは踏み跡が良く見えて、かえってルートから外れることがあった。踏み跡が正しいルートとは限らないので、ケルンを良く確認して歩く必要があります。
ガレ場を下り、左に曲がり、広い草地に戻ってきた左手に、綺麗な湧き水があるのを見つけた。ここで2リットルの水を汲んで帰った。実はダート・ハットの水洗トイレもキッチンも水が出ず、冬用の水(多分雨水?)しか無かったので、小屋に返りこの水で美味しい紅茶とコーヒーを飲むことができた。

スノーウィー・クリークとリース・サドルの位置

どんどん下ってダート川の川原の最後あたりに来ると、正面に昨日下ってきたスノーウィー・クリークの谷が見え、リース・サドルの凹みも見えた。昨日は山が雲の中に隠れ迫力がもう1つだったので、嬉しい眺めとなった。




午後5時にダート・ハットに返ると、昨日と違ってビックリするほどの人数。大学生だろうか若い男女15人程のグループと他に4グループ程が着いていて、ほぼベットは埋まっているようだ。

今日はワーデン(レンジャー)がおり、4泊分のハットチケットを渡した。グループ毎に名前と行き先をチェックしてノートに記入していたと記憶している。天気予報も張り出してくれた。明日は晴れたり曇ったりの予報で、今日泊まる殆どの人が明日カスケード・サドルに登るようだ。

食堂が近い方が便利と、朝の出発時に食堂の隣の部屋の入り口のベッドを確保しておいたが、まあ若い男女の賑やかな声、眠れないのではと思ったが、幸い疲れていて、いつの間にか寝てしまった。



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