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 トンキン・バレー (Tonquin Valley)

トンキン・バレーはアメジスト・レイク (Amethyst Lakes) を中心にして3000m級のランパーツ (The Ramparts) 山群が並び、谷というよりは標高2000mの大きな盆地といった所で、ロッキーの山中に完全に入り込んだという実感を持つことができる。
トンキン・バレーに入るトレイルは、ホース・トリップ(Horse Trip) の道にもなっていて、馬糞とぬかるみに多かれ少なかれ悩まされる。歩くバリエーションによっては、ぬかるみに加え水溜りや湿地帯があり、汚れるのを覚悟で歩く必要がある。靴はしっかりしたものが必要。
雲に半分隠れたランパート山群(The Ramparts)
とアメジスト・レイク (Amethyst Lake)
アストリア・リバー・トレイルより
蚊も大歓迎してくれるので蚊避けのスプレーも忘れないこと。ただ、そんな苦労をしてでも歩く価値は充分にある。生憎ほとんど雨だったが、花はバラエティーに富み、所々雲の切れ目に姿を現した山と氷河の姿は忘れがたいもであった。


ワッテス・ギブソン・ハット (Wates Gibson Hut)

トンキン・バレーではカナダ山岳会(ACC)のワッテス・ギブソン・ハットに2泊した。長い道のりを歩いて辿り着くと、誰もおらず、完全に閉まっていた。予想もしていなかったが、ACCから教えておいてもらった鍵の番号メモを取り出す。鍵が開かなかったらどうするか、心配になったが、カチャと音がしたときには一瞬力が抜けた。2日間の泊りは我々夫婦のみ。心細いが別荘のように使わせてもらった。
ハットを出る時。着いたときと同じように
ガスの元栓を締め、戸締りをして出発。
頑丈なログハウスで、ダイニング兼リビング・ルームに薪ストーブがあり、キッチンにガスコンロと調理器具一式がある。馬鹿でかいガスオーブンまである。26人分のマットレスのバンク(ベッド)は三角屋根の2階にあり広い。毛布まで置いてあった。水は手前の下の湖からバケツで汲んできて沸騰させる。トイレは外で小屋の左奥。

大きな湖のアメジスト・レイクに面してバックカントリー・ロッジが2つある。2つともホームページがあるので参考に紹介します。どちらも、凄く高いということはないようです。

トンキン・バレー・アドベンチャーズ (Tonquin Valley Adventures) はアストリア・リバー・トレイ ルを行くパッケージ・ホース・トリップがあり、ハイカーにも食事付・シャワー付きの宿を提供している。
トンキン・バレー・バックカントリー・ロッジ(Tonquin Valley Backcountry Lodge) はマッカりブ・パス・トレイルを行くパッケージ・ホース・トリップがあり、ハイカーにも食事付き・シャワー付きの宿を提供している。


 歩いた日; 2004年7月7日〜7月9日

トンキン・バレーに入るには、北側からのマッカリブ・パス (Maccarib Pass) を通るトレイルと南側からのアストリア・リバー (Astoria River) 沿いに上がるトレイルの2つがある。両方をぐるっと回るのが良いらしいが、トレイルに入るアクセス道路が違うためグループで車2台でくるか、業者に車の手配を頼むかしないと無理。
私達は、トンキンバレーの南にあるカナダ山岳会 (ACC)のワッテス・ギブソン・ハットに泊るので、アストリア・リバー・トレイル側を歩いた。

関連する地図; Jasper and Maligne Lake Gem Trek Publishing

 

 一日目
Cavell Hostel Parkinglot -(1h30min) Asroria River Bridge -(45min)Aastoria Campground(25min Lunch) -(25min) Chrome Lake 分岐 -(3h30min)Surprise Point 分岐 -(50min) Wates Gibson Hut / Total 7h25min (15.8km, 標高差300m ,最高点標高2000m) 

朝から雨、アストリア・リバー・トレイル・ヘッドのキャベル・ホステルの前の駐車場に車を止める。エンジェル氷河で有名なエディス・キャベルの山も回りの山も深い雲の中で見えない。車を閉め出発。3日分の食料が重い。駐車場を下りてキャベル・レイク (Cavell Lake) の橋を渡り、右に回り、トレイルに入る。アストリア・リバーの谷に沿って緩やかに下る。回りの山は何も見えない。川を渡り林の中を歩く。変化のない道をひたすら歩く。アストリア・キャンプ場に着く。特に小屋があるわけでもない。昼になり、雨の中、パンをかじる。ポットに入れた熱いコーヒーがうまい。休んでいると、馬に乗った女性が1頭の馬を従えて、前を通る。ハイキング?と聞いて格好良く立ち去る。ピーと口笛が聞こえたら、後から2頭のはだか馬が細いトレイルを突っ走って追いかけていった。坂も凸凹も細い道も馬は平気なんだと感心する。馬は競馬でしか見てないことに気がつく。
クローム・レイクに向う分岐の橋を渡る

ここから暫く歩くと、クローム・レイク (Chrome Lake) に行く道の分岐に出る。ACCのハットに行くのにこの道が近いが、使えるかインフォメーション・センターで予め聞いて、問題ないと確認していたので、躊躇なく細い橋を渡る。
この橋を渡る前に2組のパーティーに会い、この橋を渡って直ぐ一組の若いカップルに出会ったが、それから丸一日誰にも会わなかった。道に馬糞は無くなったが、道は細くアップダウンが絶えずあり、水溜りと、ドロがあちこちにある。左手側 は山で右側は谷とは分かるが、雨で他は何も見えない。ザックは肩に食い込む。歩くペースは次第に落ちる。ようやく平になり谷川が近づいてきた。雪融けで川が増水し、トレイルが水没している所があり、遠回りをする。
雨が小降りになってきた。水面すれすれの丸木橋を渡ると、ようやくクローム・レイクにでた。始めて山の一部が見え出した。
クローム・レイク (Chrome Lake)、 山は
アウトポスト・ピーク (Outpost Peak 2880m)

湖を左に見て進むと、サプライズ・ポイント (Surprise Point) への分岐にでる。3時間半振りに見る標識で安心する。
これを左にとる。この辺りから、サブアルパインの草原になり、花が見られるが、ゆっくり見ている余裕がない。更にエリミテ・バレー(Eremite Valley) の分岐を右にとり、林に入りると登りが続く。
ヒース(Heather)の花

何時まで登るのかと休みを取ろうとするとひょっこりハットが現われた。鍵を開け、雨戸を開け、壁に張ってある説明書きを読んで、ガスの元栓を開け、お湯を沸かす。薪ストーブに火をつける。全身びしょ濡れ、ストーブの上のハンガーに濡れた衣類をつるす。中まで濡れた靴をストーブの横に置く。部屋がやっと温まる。プロパンガスが配管された照明ランプが天井にあるがつけかたがはっきり分からないのと怖いのとで使うのを止めた。10時過ぎまで明るいので問題はない。
夕食を作り、食べる。2人だけの静かな山小屋の時が過ぎる。外はまた雨が降り出す。



 2日目
雨でハットに停滞。夕方の2時間のみアウトポスト・レイク(Outpost Lake)とエリミテ・バレー(Eremite Valley)入口付近の散策


朝から絶え間無く雨が降る。今日はアメジスト・レイクの回りに行くかエリミテ・バレー・トレイルを歩く予定をしていたが、でかけても仕方がない。雨が止めば出かけられる準備だけはして待機する。
小屋の窓からアウトポスト・ピークがぼんやりと見える。昨夜雪が降って積もったようで白っぽい。落ちてきそうな氷河だけが白くはっきり見える。難しいがスケッチしてみた。丸太の壁を女房が何の気無しに見ていて、少し高いところに、日本の北国のかわいい童の絵が染められた手拭が貼ってあるのを見つけた。絵を見てほっとする。「あさがや えちごや」と、3桁局番の電話番号が書いてある。誰がこのハットにこれを貼ったのか知りたくなった。日本に帰ったらえちごやさんを探してみることにする。
雨のアウトポスト・ピーク (Outpost Peak 2880m)、
ワッテス・ギブソン・ハット (Wates Gibson Hut) の窓から、スケッチ

雨が降り続き、今日はハットに停滞と決める。訪問ノートが2冊あり、書かれた記録を見る。冬のスキーの訪問者も多い。日本人も3組ほど書いてある。私も幼稚な英文を書き記した。
ストーブの薪が積んであるが、少し減ったようなので、薪を割ってみようと、丸太置き場に行きまさかりを振り上げ割ってみた。割れない。何度かやってみたが、危ないだけで割れない。ギブアップした。次ぎに来るだろう若い人に頑張ってもらうことにする。

午後2時頃、雨の中、誰かが外にいるのが見える。ハットに泊る人がやっと来たと思ったが入ってこずに外にいる。中年のカップルで雨で大分濡れた様子だ。ストーブが燃えているし、お湯も沸いているので、中に入って休むように進める。カルガリーから来た夫婦で、10年ほど前の冬にスキーで来て、このハットに泊ったそうで、アストリア・キャンプ場に昨夜泊りクローム・レイクに来るトレイルを通ったので、懐かしいので寄ってみたとのこと。びしょ濡れの服と靴をストーブの回りに干し、コーヒーを作って飲んで人心地ついた様子だ。前来た時にはカスコンロが置いてあっただけで何も無かったと言って、ガスオーブンや食器や調理道具に驚いていた。一時間ほどカナダの山や動物やカルガリーの話をして、これからアストリア・リバー・トレイルを歩きキャンプ場まで戻ると言って出ていった。

雨が小降りになり、少し山が゙見え出したので、外を歩いてみることにする。
先ずハット前の小さな湖・アウトポスト・レイクの岸を歩いてみる。森に囲まれ静かだ。東端に行ってみると、昨日歩いて来たアストリア・りバーの谷が見え、そばを通ったクローム・レイクが小さく見える。

ハット前のアウトポスト・レイク
アウトポスト・レイク東端から
アストリア・バレーを見る

ぐるっと湖を回ろうとしたが、円い大きなはっきりとした足跡がある。ムース (Moose) か灰色グマ (Grizzly Bear) かわからないが、トラブルになってもいけないので進むのを止め戻る。

雨がほとんど止んできたので、エリミテ・バレー (Eremite Valley) を少し歩いてみることにする。
ハットから坂を下り、分岐を右にとる。広い湿地帯の左端にトレイルがある。
エリミテ・バレーに向って


雲で山はもう1つだが、色々な花が咲いている。主なものを上げると 赤・白・黄色のマウンテン・へザー、 白・ピンク・赤・橙のインディアン・ペイントブラシ 、ピンク・青・黄色のおだまきや、トール・パープル・フリベーン、トール・ホワイト・ボグ・オーキッドなど多彩。ただ休む度に蚊が集まる。昨日に比べるとぐんと多い。雨が小降りなので多くなったようだ
クローム・レイクに流れ込む川まで来てまた雨が強くなり、山も見えなくなってきたのでハットに引き返す。戸締りをして出てきたが、閉まったままで、今日も誰も来ないようだ。昨夜と同じく静かな夜を過ごす。



 3日目
Hut -(35min) Surprise Point 分岐 -(1h) Surprise Point -(1h) Warden Cabin -(25min) Clitheroe Campground -(3h35min) Chrome Lake 分岐 -(25min) Astoria Campground -(1h)Astoria River Bridge -(1h30min) Cavell Lake, Parkinglot / Total 9h30min ( 21.9km、登り200m 下り445m、最高点標高2105m)

一晩中雨で、朝も降り続く。朝寒いが、火種が残るので、ストーブに火をつけずに済ます。ガスの元栓を締め、飲料水のバケツに水を満タンにし、戸締りをして雨の中を出発する。クローム・レイクの手前の分岐を左にとる。
林の中の登りを過ぎると、広く開けた台地になる。ここにも白・赤・黄色のヒース(Heather)の花が広がる。
振り向くと、フレイザー氷河 (Fraser Glacier) が雲の下に見える。更に進むとサプライズ・ポイント (Surprise Point) のキャンプ場にでた。アメジスト・レイク (Amethyst Lake)の南端がキャンプ場の直ぐ横まできている。
フレイザー・氷河
この辺からランパーツ (The Ramparts) の山がガンガーンと突き上がるように見えるはずだが、雲の中。
トレイルをたどって進むと、アメジスト・レイクが北に広がり、広い湿地帯に入る。大分靴が沈むので浮き草の上を歩くような感じがする。ズボッと靴が入らないのが不思議。湖から流れ出る川の橋を渡り湿地帯を抜けゆるい登りになる。
アメジスト・レイクから始まる
アストリア・リバーの流れ
この登りでカナダに来て始めてルピナスの花を見る。少し紫系の青色一色。
雨が止んできた。少しづつランパーツの山が見え出した。
ルピナス (Lupine) の花

誰も人の姿の見えないワーデン・キャビン (Warden Cabin) の前の登りを通り、Clitheroe キャンプ場を越えアストリア・リバー・トレイルに出たときには、完全に雨は止んだ。雲が低く、ピークは見えないがようやくトンキン・バレーの景色を見ることができた。

雲の中のランパーツ山群とアメジスト・レイク         
オールドホーン・マウンテン (Oldhorn Mtn) を巻くようにトレイルが続く。馬糞がかなりあり、水溜りやドロが多く、広いトレイルだがよそ見をしていると踏んだりはまったりする。休む度に蚊が増える。こいつもしつこいが、ニュージーランドのサンドフライよりはまだましな気がする。休んでいるときにタオルを降りまわすと蚊は寄ってこないことが分かり、代わる代わるタオルを振り回した。後ろを振り向くと何時までもランパーツの山が見える。しかしピークが見えないのが残念。大きなガレ場に出てそのの横をジグザグに下りる。ここで始めてハイカーに会う。大きなザックを背負ったカップルで、ぐいぐいと登りを歩いて行く。感心して眺める。長い急な下りを過ぎて少し行くと。2日前にこのトレイルと分かれて渡った細い橋が見えた。やっと帰ってきた感じがするが先はまだ長い。

アストリアキャンプ場を過ぎて、アストリア川を渡るしっかりした橋に出ると正面にエディス・キャベルの山の北面の壁が見えた。この壁の左下を過ぎれば帰りつく。しかしダラダラと登りが続き来るときはこんなに遠くはなかったはずと文句を言う。やっとキャベル・レイクの橋に辿り着き3日間のワンダリングは終わった。
アストリア・リバーから見る
マウント・エディスの北側の壁
キャベル・レイクの橋



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