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日本海の磯でヤドカリと遊ぶのは、騒がしい日常を離れてのんびりとできる穏やかな時間ですが、残念ながら休みは少なく海は遠いのが現実です。 一日の仕事を終えた後、ビールでも飲みながら心静かにヤドカリたちを眺めていられたら・・。 そんな思いをかなえるために、リビングの水槽でヤドカリを飼っています。 海に棲んでいるヤドカリを飼育するためには、海水水槽(マリンアクアリウム)が必要ですが、丈夫なホンヤドカリなら、サンゴやヤギを育てるような高価で複雑なシステムを組まなくても、充分長生きさせることができます。(もちろん高価で複雑なシステムを組めば、より上手く飼えるでしょうが(笑)) 我が家の水槽は、水槽の底に底面フィルターを敷いて、エアーリフトで海水を回しているだけのシンプルなセットです。 このコンテンツでは、そんな気軽な「みーばい亭風ヤドカリとの暮らし方」を紹介していきます。 |
飼育環境(使用器具) |
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水槽 |
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貝殻マンション | |||
ろ過装置 | |||
ヒーター | |||
照明 | |||
海水 | |||
貝殻 | |||
餌の話 |
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水槽のメンテナンス |
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水槽 60cm規格水槽を、リビングルームに置いています。 ホンヤドカリを数匹程度飼うのなら、30pか45cm水槽で充分だと思いますが、磯にはヤドカリの他にもおもしろい生き物がたくさんいますので、少し大きめの水槽をキープしておくと採集や飼育の楽しみが広がります。 60cmなら、(長期飼育は困難ですが)ヤマトホンヤドカリなど大型のヤドカリを採集しても収容できますし、エビや小魚数匹程度なら一緒に飼育することも可能です。(ヤドカリと魚を一緒に飼うのは経験上あまりお薦めしませんが・・) ヤドカリ水槽の全景はこちら |
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貝殻マンション ホンヤドカリやユビナガホンヤドカリは陽性のヤドカリで、普段はあまり物陰に隠れることはありませんが、脱皮は岩陰などで行いますので、石などを組んで隠れられる隙間を作ってやる必要があります。 マリンアクアリウムの岩組みには、イシサンゴの骨格やサンゴ由来のライブロックなどが良く使われますが、我が家の水槽のコンセプトは「日本海の磯」ですので、サンゴではなく日本海の磯で拾ってきたフジツボやイワガキの殻などを利用しています。 以前は、シリコンで貝殻を接着して形を作っていましたが、固定してしまうと後々レイアウトが不自由になりますので、現在は土台になる数箇所のみ接着して、後は適当に積み上げています。 長く海中に転がっていたフジツボ殻には、貝類やヒトデ、腔腸動物、ケヤリムシの仲間、コシオリエビなど様々な生き物が住み着いていますので、海水ごと持ち帰ると、ちょっとしたライブロック気分が味わえます。 |
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ろ過装置 ろ過装置はシンプルな底面ろ過です。 水槽に60cm用底面フィルターを敷き、エアリフトで循環させています。 パワー不足を補うために両端に立ち上げパイプを2本立てて、吐出口が2つあるタイプのエアポンプでそれぞれにエアを送っています。 ちなみに私のヤドカリ飼育の師匠であるプアマリナさん(ヤドカリ研究所主席研究員兼関西支部長、十脚目通信代表)は、片方をエアリフト、もう片方をパワーヘッドで回しておられます。 エアリフトのみより、強い水流を得られることはもちろんですが、このように水流を2系統で回しておけば、片方が故障した場合のバックアップになりますので、万一の時にも安心です。 ろ材は小豆大のサンゴ砂を約10kg使用、吸水量の多い立ち上げパイプの周辺をやや厚めにして敷き詰めています。 ろ過は大きく物理ろ過と生物ろ過に分けられますが、我が家では物理ろ過は無視しています。 物理ろ過とはフィルターで固形物を濾し取る方式ですが、通常水槽内で出る固形物とは、糞と餌の食べ残しだけです。 これらをフィルターで引っ掛けたところで、すぐに分解して溶け出してしまいます。 水質悪化の原因になる、アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩などは、イオンの状態で水中に溶け込んでいますので、物理ろ過には大した意味がないと割り切っています。 |
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ヒーター 一般的な60cm水槽用の熱帯魚用ヒーターです。 高水温を維持するのではなくて、あくまで水温を安定させる目的で使用しています。 ホンヤドカリなど潮溜まりに入る種類は水温の変化には比較的強いのですが、基本的に海水温は急激に変化することなく安定しています。 一方、気温は季節はもちろん一日のうちでも大きく変動します。 水量の少ない小型水槽だと、気温の影響をまともに受けて水温も大きく変動してしまいますので、ヒーターを入れて水温を一定に保ってやらないと、調子を崩してしまいます。 特に潮下帯に棲む種類の飼育にはヒーターが必需品です。 ヒーターを入れるのは昼夜の気温差が大きくなる秋口から晩春までの期間。 秋と春は、日中の最高気温に合わせて25℃前後、冬場はリビングの暖房温度20℃に設定しています。 反対に夏場は水温の上がりすぎが心配ですが、我が家は日当りが悪く屋内は比較的涼しいので、水槽用クーラーや冷却用のファンなどは使用していません。 ただ、照明の蛍光灯はけっこうな熱を出しますので、夏場はリフトアップして水面から離しています。 30℃程度なら、ヤマトホンヤドカリやベニホンヤドカリなど高水温に弱いヤドカリでも何とか夏を乗り切ってくれます。 |
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照明 海藻やサンゴを育成するわけではありませんので、18ワットの水槽用蛍光灯1本のみです。 観賞目的なら、これで充分だと思います。 水槽を眺めるのは、ほとんどが夜になりますので、生活時間に合わせて、タイマーで正午過ぎから23時頃まで点灯しています。 |
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海水 海水は基本的に現地調達です。 越前海岸の海水を、飲料水用のポリタンクで持ち帰っています。 すぐに使う時はそのまま水槽に入れていますが、ストックする場合は2〜3日静かに寝かせてゴミなどを沈澱させてから、上澄みをポンプで汲みあげ、ウールで濾したうえで屋外の物置に保管しています。 海水中に浮遊している有機物をできるだけ取り除いておけば、冬場なら2ヶ月以上、夏場でも1ヶ月くらいは問題なく使えます。 天然海水のストックが切れた時は、市販の人工海水の素を使っています。 浄水器を通した水道水に溶かし、一晩エアレーションを掛けた後、温度を合わせて比重を確認した上で換水に使用します。 天然海水と混ぜても、特に問題はありません。 |
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貝殻 ヤドカリは成長に合わせて宿貝を交換します。 適当な貝殻がないと、ヤドカリ同士で奪い合いの喧嘩沙汰になることもありますので、予備の貝殻は常に多めに入れています。 ホンヤドカリなど小型のヤドカリは、クボガイ、イシダタミ、イソニナなど、ヤマトホンヤドカリなど大型のヤドカリはサザエを良く利用します。 これらの貝殻は、ポケットビーチ(岩場の間に砂や砂利が溜まった場所)で簡単に集められますし、小型の貝については、死んだ苔取り貝や他のヤドカリが脱ぎ捨てた貝殻なども利用しますので、あまり不自由することはありません。 ただ、ケアシホンヤドカリやユビナガホンヤドカリは、長く飼育していると想定外に大きくなって、クボガイやイシダタミでは窮屈になることがあります。 日本海にはクボガイとサザエの中間サイズの巻貝が意外に少なく調達に苦労しますので、苦肉の策としてオカヤドカリ用に用意した、南洋産のノシメガンゼキやタイワンバイなどを入れています。 当のヤドカリたちは、こだわりなく利用してくれますが、日本海の情緒が損なわれますので、飼い主としてはちょっと不満が残ります。 ちなみに、ヤマトホンヤドカリなど大型になるヤドカリは、オオコシダカガンガラやイボニシを卒業すると、次はいきなりサザエに引っ越すようです。 海中で観察していると、ぶかぶかのサザエ殻を重そうに背負ってヨチヨチと歩いている「若者」を時折見かけます(笑) |
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海岸でよく見かけるホンヤドカリや、ユビナガホンヤドカリは、海藻や魚の死骸など何でも食べる雑食性で、浜辺の生態系の中では掃除屋としての役割を担っています。 与えれば飯粒やソーセージなども食べるようですが、我が家ではできるだけ自然に近いものを中心に与えるようにしています。 主に与えているのは、魚、イカ、タコ、貝、エビなどの魚介類、ワカメやアオサなどの海藻類、それにザリガニ用の人工餌、クリルなどです。 魚介類 まず、生の魚肉です。 食卓に上る魚なら何でも良く食べますが、あまり脂の強いものは水を汚しますので避けた方がいいと思います。 漁港近くの店に行くと地元で捕れた新鮮な磯魚が売られていますので、海に出かけたついでに買ってきます。(もちろん自分たちが食べるためです) ヤドカリの餌になるのは、調理した後の残渣(アラなど)。 細かく切って冷凍保存しておくと便利です。 特にイシダイやカナガシラなど白身の魚を好みますが、続けて入れると飽きてしまって食べなくなります。 同じように、イカやタコ、エビなども調理クズを冷凍保存しています。 貝類は食材のアサリや気水性ヤマトシジミ(セタシジミは高くて買えない(^^;)を少し取り分けて、やはり冷凍したものを、少し解凍して殻を開けてから与えています。 どの種類のヤドカリも非常に好んで食べますが、ユビナガホンヤドカリなどは興奮のあまり(?)やたらと食べ散らかしますので、ある程度水が汚れるのを覚悟した方がいいでしょう。 また、水槽で同居させているイシダタミやクボガイなども、生きているうちは手出ししませんが、死ぬとヤドカリたちのご馳走になります。 海藻類 海に出かけた時に、岩に付いているアオサや、千切れて流れ着いた、カジメやワカメなどを採ってきます。 新鮮なアオサなら、1ヶ月くらい水槽に入れておいても溶けませんので、常備菜として重宝します。 余った分は、軽く真水で洗って天日で干し、玉葱ネットで吊るして保存しています。 水槽に入れるとすぐに戻りますが、生と違って日持ちしませんので、水を汚さないように少しずつ入れ、食べ残しは取りだします。 天然の海藻がないときは、食用の塩蔵ワカメや塩モズクなどを軽く塩抜きして与えています。 植物性の餌で一番喜んで食べるのは、海中の小石に生えた苔。 肉食性の強いベニホンヤドカリや、ブチヒメヨコバサミも、天然の苔はよく食べますので、海に行ったついでに拾ってきてやります。 人工餌 キョーリンの「ザリガニ ヤドカリ カニの餌」、クリルなどを、補助的に与えています。 ケブカヒメヨコバサミやブチヒメヨコバサミは、あまり好みませんが、ホンヤドカリやケアシホンヤドカリには意外なほど人気があります。 |
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換水 「2〜3週間ごとに3分の1の海水を交換する」、・・などと、飼育書には書かれていることが多いのですが、換水の回数や量は飼い主それぞれの水槽環境に因りますから、あくまで目安程度に考えておけばいいと思います。 水槽を立ち上げたばかりで、換水のタイミングがよく分からないうちは、硝酸塩のテスター(試薬)の使用をお薦めします。 テスターを1箱使い切る頃には、苔の生え方などでなんとなく換水時期が分かるようになってきます。 ちなみにガラス面に生えた苔の始末は、クボガイやイシダタミにまかせていますが、前面だけはスクレーパで掻き落としています。 |
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毒抜き 我が家では物理ろ過を無視していますので、ろ材を兼ねた底砂の間にデトリタスが溜まります。 酸素が充分に供給されていれば、腐ることはありませんが、溜まりすぎると底砂の通水性が悪くなりますので、3ヶ月に一度ほど、砂ほぐしも兼ねてサイフォン式の毒抜きパイプで吸い出しています。 一度の毒抜きで吸い出す水の量は5リットルほどです。 底面板の下のデトリタスの処理は、底砂を全部取り出さないと無理なので、勝手に住み着いている環形動物に任せています(笑) |
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