みーばい亭の
ヤドカリ話
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3.磯のカンディル
食欲大魔王
燃える食事魂!クモハゼ
(通称ハゼどん)
クモハゼ近影
チャームポイントは青く輝く瞳
おなかがへると赤に変わって点滅するのだ!(ウソ)

南米のアマゾン河に「カンディル」という魚が生息しています。
20cmほどのナマズの仲間なのですが、現地では「人食い魚」としてピラニアよりも怖れられているそうです。
その食性が物凄くて、まず大きな魚や動物に口で吸い付いて思いっきり吸引し、口腔内に吸い込んだ肉を鋭い歯でプツリと噛み切ります。
これを繰り返して獲物の体内に潜り込み、内臓を食い荒らすとか・・。
話だけでも寒気がするほど痛そうです。
網に掛かった魚を集団で食い荒らして漁業被害を与えるほか、洗濯をしていた女性が襲われたこともあるそうですからまさに人食い魚です。

「いきなりなんでアマゾンやねん」というツッコミが聞こえてきそうですが、若狭湾の某海岸で打ち寄せられたタコの死骸に群がるアゴハゼを眺めていてカンディルを連想した・・というのが話のオチ。
大きなタコに吸い付いて(噛み付いて?)肉をむしり取る姿は話に聞くカンディルそのもの。
4〜5pほどの小魚ですから平気で見物していられますが、10倍ほどのスケールに拡大すればけっこう凄惨な光景になることと思います。
潮干帯にはアゴハゼの他にもドロメやクモハゼなど、似たようなハゼが何種類か生息いますが、皆一様に貪欲で干潮時には潮溜まりになるような苛酷な環境でしたたかに暮らしています。
そしていろんな意味で潮干帯以上に過酷なみーばい亭の海水水槽にも、なぜか一匹のクモハゼが住み着いています。
アナハゼよりも目がぱっちりとしていて一見愛嬌のある顔をしているのですが、磯のカンディル一族(?)の名に恥じない悪食で、とにかく目の前の餌には見境なく喰らいつきます。
自分の頭より大きなアサリや魚肉でも物凄い勢いで振り回して引きちぎってしまいますし、細長いゲソなどは飲み込みきれずに口からはみ出していてもお構いなし。
とにかく食えるものは食えるときに食えるだけ食うのが信条のようです。
機動性に勝るカミナリベラやソラスズメダイはともかく、悲惨なのは同じベントス性で動きの遅いヤドカリたち。
餌を入れると皆を押しのけて独り占め。
お腹がいっぱいでもとりあえず他人の食べているものは横取りする。
照明を落とすと一応眠るのですが、餌を入れると気配を察してすぐに起きだしてくる・・。
これではヤドカリたちが落ち着いて食事をする暇がありません。
そこで救済策として、ヤドカリが抱え込めるくらいに小さく切った魚肉などを、魚の動きが鈍る深夜にピンセットで直接与えています。。
最初はクモハゼのせいで仕方なしに始めたピンセット給餌ですが、無愛想な陸ヤドカリと違って海ヤドカリたちは餌を近付けてやると嬉々として受け取ってくれますので、今ではちょっとした楽しみになっています。
両方の鋏脚を突き出してモンキーダンスを踊ったり、興味なさそうに横目で見ながら片手でさっとむしりとったり、勢い余って牡蠣殻の上から転がり落ちたり・・、同じように見える海ヤドたちですが、反応にはそれぞれ個性があってけっこう笑わせてくれます。
ちなみに陸ヤドカリ同様、海ヤドカリも脱皮前には餌を食べなくなるようです。

考えてみればこの餌やりを楽しむというのが、生き物を飼うひとつの大きな理由ではないでしょうか?
生き物が餌を食べる様子は見ていてとても楽しいものですし、元気に餌を食べていれば飼い主はとりあえず安心できます。
クモハゼのようにあまり意地汚いのも困りものですが、それでもたまに食欲が落ちたりすると心配なものです。
そういう意味では飼い主に心配をかけることなく、手渡された餌を素直に受け取って程々に食べてくれる海ヤドカリたちは飼育動物として優等生なのかもしれません。

もっとも、無愛想で気まぐれな陸ヤドカリに、あの手この手で餌を食べさせるのも、それはそれで楽しいのですが(笑)

メタボリックな巨腹
食うだけ食ってろくに泳がないから当然こうなる
血糖や中性脂肪はかなり高そう


手渡されたツバスの切り身を受け取るケアシホンヤドカリ
まず第二触角が反応するのが笑える 
 ホンヤドカリに比べると少し不器用かな?
(画像にポインターを置くと切り替わります)
                                                                           [2007.1.12]

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