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『ティーチング・ブラス』ぷらす



 『ティーチング・ブラス』の原著者クリスティアン・ステーンストロプ氏が2017年に"Blow Your Mind"を出版し、その翻訳書『心の歌で吹け -操作を超えた金管楽器演奏』を2020年に出版しました。すぐに何かを催したかったのですが、ずっと来日できない状況で、ようやく金管楽器公開講座を開催することができました。

  2023年7月14日(金)
  ドルチェ楽器大阪店  ドルチェ・アーティスト・サロンにおいて
  通訳はテューバ奏者の木村圭太さんにお願いしました。たくさんの方にお越しいただき、ありがとうございました。


 以下では、出版物のページで紹介しています『心の歌で吹け -操作を超えた金管楽器演奏』および『ティーチング・ブラス -管楽器指導の新しいアプローチ』への質問等を、集約していきます。ご質問がありましたら、トップ・ページ記載の連絡先にお寄せください。主に、演奏や練習の実践に関しては西田が、理論的なことや翻訳については前川がお答えします。われわれにわからないことは、著者に問い合わせます。


スタッカートについて
「スタッカートというのはイリュージョンだ。」
 これは、『ティーチング・ブラス』には書かれておらず、2010年の来日の時にもそのような指導はなく、2014年の来日(後にレポートがあります)で初めて聞いた言葉です。スタッカートは音が切れているのではなく、音は続いているけれども発音の仕方でスタッカートに聞こえるのだということで、もちろん、音楽一般に当てはまることではなく、ピアノではタッチだけでスタッカートにすることはできないでしょうし、金管楽器でも、音を切っても構わない、ないしは、その方が良いという考え方もあるかもしれません。しかし、息を止めて音を切ることがいかに金管楽器演奏に有害かということがポイントのようです。ちなみに、デンマークでは音を短く切ることは違法なのだそうです(もちろん冗談ですよ)。『心の歌で吹け』では詳しく説明されています。


『ティーチング・ブラス』の
○「呼吸の心理的構造」の章の「呼気」の節に、

「息のパターン」(チコヴィッツの教育から知られるような)

 という記述があり、わかりにくいかもしれないと思いましたので(実際、私は知らなかった)、西田氏に解説で説明してもらっています。


呼吸の練習(129~130ページ)を実際にどのようにするのかが、少しわかりにくいかもしれません。音符のところでタンギングをして、たとえば「3」は、



のようにします。
 ステーンストロプ氏は、口を「ウォウ」の大きさに保ち、上唇と下唇にかけて人差指を縦に当てて(「シーッ」とするときのように)、そこを通る空気の音を立てながら行なっていました。関西トランペット協会のサイトの「写真」のページに、2010年3月26日に開催された「ティーチングブラス・マスタークラス」(詳しくは下の方をご覧ください)の写真があり、その二枚目が、この練習を指導しているところです。


○「マウスピースでの練習」の節で、それに反対する人もいるということが書かれています。私が思い付くこととしては、根本俊男氏が、『すべての管楽器奏者へ -ある歯科医の提言』(音楽之友社)の中で、問題点を指摘しています。しかし、そこで問題にされているのは、マウスピースのみの場合と実際に楽器を吹奏する場合との空気抵抗の違いであり、『ティーチング・ブラス』での「マウスピースの練習」は、唇を振動させることそのものの練習ではないことに留意が必要です。
 根本氏は、氏の考案した「バズィンガー」でバズィング練習することを推奨していますし、ステーンストロプ氏も、「B・E・R・P」を使ってバズィングの指導をしていました。「B・E・R・P」は、その名(The Buzz Extension Resistance Piece)の通り、実際に楽器を吹いている時に近い抵抗感でマウスピースでの練習ができるようにするためのものです。ちなみに、ステーンストロプ氏は「B・E・R・P」のことを「ウソ発見器」と呼んでいました。


○「ヴァルサルヴァ活動」というのは、なじみのない言葉かもしれません。うまく吹くための「活動」であるようなイメージを持ってしまいそうですが、実は、その正反対で、管楽器奏者が陥りやすい悪い状態です。医学の分野などでは「ヴァルサルヴァ法」と訳されており、たとえば、高層階のエレヴェーターに乗っているときなど、鼓膜の外側の圧力が内側の圧力よりも高くなって耳がツーンとする場合に、鼻をつまんでいきむことによって喉の奥から空気を送って圧力差をなくす方法です。


○出版してからずっと、著者名のカナ表記が適切かどうか気になっていました。もちろん、著者には問い合わせをしたのですが、文書でのことですので、質問が的確だったか、回答を正確に理解したか、不安でした。著者の来日の折に、「クリスティアンステーンストロプ」とゆっくり発音して聞いてもらったところ、問題ないとのことでしたので、安心しました。


クリスティアン・ステーンストロプ氏が2014年に再来日して、クリニック、レッスン、マスタークラスを行ないました。

2014年
2月17日 日本到着
2月18日、19日
「ティーチング・ブラス」トランペット・クリニック
 主催 関西トランペット協会、非営利特定活動法人 悠遊らいふ
 場所 スタジオK(大阪市福島区)

2月21日
 10:00~16:00 個人レッスン
 18:00~21:00 マスタークラス
 場所 管楽器専門店ダク地下 新大久保スペースDo
2月22日
 個人レッスン
 場所 ティアラこうとう練習室5
2月23日
 個人レッスン
 かつしかシンフォニーヒルズ練習室A

 主催 Kristianレッスン会実行委員会
 協賛 ダク
 後援 日本ユーフォニアム・テューバ協会

2月24日から京都に滞在し、2月28日に帰国されたそうです。

↑19日のトラペット・クリニックの様子です。
↑21日夜のマスタークラスの様子です。
写真に写っている木村仁一氏からコメントをいただきました。
「クリスチャンさんのマスタークラスをを受講することができ、大変貴重な経験をさせていただきました。 楽器をただ吹いて演奏するだけではなく、楽器を使わずに息だけを使ったアプローチなどは、普段あまり注目していなかったことでもあり、 大変良い刺激となりました。 今後の自分の活動にも大きな影響を与えてくださったこのマスタークラスという機会を与えていただけたことに感謝いたします。」

↑21日夜のマスタークラスのプログラムです(左は表紙)。

私は、19日のクリニックと、21日の個人レッスンの途中から(2時以降)、マスタークラス、22日のレッスンを拝見しました。
当日撮った写真は他にもあるのですが、受講者の掲載許可を得るのに手間がかかりますので、まだこれだけしか載せていません。
19日、21日の2時以降、22日に受講された方で、写真を掲載してもいいよという方はご連絡ください。
また、感想等をお寄せいただけましたら、ここで披露させていただきます。



* * * *

著者のクリスティアン・ステーンストロプ氏が、2010年3月下旬に来日しました。
ドルチェミュージカルマガジン
2010年
3月23日(火)日本到着
  当初は、関西空港に着く予定だったのですが、飛行機の便の関係で新東京国際空港着になり、東京での案内は東京フィルハーモニー交響楽団の大塚哲也氏にお願いし、西田和久氏(共訳者)と私は新大阪駅で出迎えました。

3月24日(水)
  法隆寺などに西田氏が案内しました。夜は、天神橋筋五丁目の鮨店で、ネタを一通り味わったそうです。この日も、25日も、雨天でした。
↑ドルチェ楽器が発行している「ドルチェミュージカルマガジン」掲載の記事です。クリックすると、大きな画像が表示されます(Java scriptを使用しています)。

3月25日(木)
  関西トランペット協会主催のレッスン会(非公開)を、ヤマハ・アトリエ大阪で開催。7人(全員がトランペット)が受講しました。
ちらしです。  
クリックすると、大きな画像が表示されます。↓
ティーチングブラスマスタークラス
3月26日(金)
  関西トランペット協会主催のレッスンとマスタークラス(公開)を、ドルチェ楽器大阪本社で開催。レッスンを5人が、マスタークラスでは2人が受講しました(こちらも全員がトランペット)。また、約50名の方が聴講してくださいました。

3月27日(土)
  東京に移動。西田氏と私が新大阪駅で見送りました。

3月28日(日)
  レッスンとマスタークラスを、ドルチェ楽器管楽器アヴェニュー東京本店で開催(夜のマスタークラスのみ公開)。レッスンは5人(テューバ)、マスタークラスでは3人(トランペット、フレンチ・ホルン、テューバ)が受講しました。
 こちらは、私は同席できませんでしたが、お世話いただいたテューバ奏者の武山勇輝氏から、次のような報告がありました。

「おかげさまで、無事にマスタークラスを盛況のうちに終えることができました。当初は人がなかなか集まらず苦労しておりましたが、蓋を開けてみれば約80名の方にお越しいただき、感激しつつほっとしております。クリスティアンもノっていて、大分押してクラス自体がかなり長いものとなり、嬉しい悲鳴をあげておりました。」


3月29日(月)、3月30日(火)本人の希望で、東京滞在。

3月31日(水)新東京国際空港より帰国。

26日のレッスンとマスタークラスの様子です。
      ↓クリックすると、大きな画像が表示されます。
レッスン風景 マスタークラス風景

(左の写真)
 受講者の後頭部あるいは首の後ろに息を吹きかけ、受講者はその息を感じ、同じような息で吹くことを意識しながら演奏します。
 ステーンストロプ氏が手にしているのは、気管と同じ太さのチューブで、これを別の練習に使うこともあり、また、このチューブを使わずに、息を直接吹きかけることもありました。

(右の写真)
 ステーンストロプ氏が受講者の左手に息を吹きかけ、それと同じような感触を右手に持つことができるように、息を吹く練習をします。

  関西トランペット協会のサイトの「記録」のページと「写真」のページにも、この日の報告と写真が掲載されています。

* * *

 レッスンを受講した方から、以下のような感想が寄せられました。受講順に掲載しており、所属等は受講時のものです。


「今回のレッスンを受けて、より一層トランペットに馴染めた気がしました。ブレス方法を変えるだけで、音に余裕が出てとても演奏し易くなりました。今回のステーンストロプ先生のレッスンは自分自身にとって人生でのとてもいい経験になりました。この様な機会を設けて頂いてとても感謝しています。これからもレッスンの事を活かしてトランペットを演奏したいと思います。ありがとうございました。」

山下 左起子(滝井高等学校3年生、25日のレッスンを受講)


「今まで息をたくさん吸うという意識はあったのですが、全然足りなかった事が今日のレッスンでわかりました。
 またブレスの仕方も、息の通り道を邪魔して変な音がなっていたのは舌の位置が原因だという事もわかり、Wowの形で吸うことによってたくさんの息がスムーズに吸える事がわかりました。
 タンギングに関しても、音の立ち上がりをハッキリとよく言われるので、舌を強くつく事に重点を置いていました。
 でも、大事なのは舌をつく強さではなくて、頭の中で歌っているサウンドと息の流れを一致させれば思った通りに音が出るということがわかりました。
 この点は、すぐに直すのが難しくて、舌を強くついて「ティ」という発音で吹いてしまう癖?が抜けなくて、「ト」と意識しているけれどできなかったので、強い意識を持ちながら練習して習慣づけないといけないと思いました。
 頭の中でソルフェージュを絶やさず行う事と、息の流れを絶やさない事がどれだけ大事で、どれだけ楽に吹けるコツなのか、今日のレッスンで教えて頂けて本当に良かったと思います!!」
安岡 亜佳音(相愛大学2回生、25日のレッスンを受講)


「私は以前からアンブシュアや横隔膜の動き、歯並びなど細部のことに悩んでおり、楽器を吹くときはいつもそれらを気にしすぎて、何となく気持ち悪いままになっていました。でも、レッスンを受講して、ブレスが完全に支配すれば、自ずと正しい動き方をするのだと改めて実感することができ、とても有意義な時間を過ごせました。また、姿勢の事もご指摘頂きましたが、レッスン後も自分の姿勢について注意してみると、例えば携帯電話を見ている時にも、身体を携帯に近付ける癖があり、こういう部分が楽器を演奏する際に影響していることを痛感しました。ですが、小さなことを心がければ、楽器を演奏するのがもっと楽になるというのがわかりました。また、私の奏法の癖を的確にご指摘頂き、リラックスして受講できました。今回のレッスンを受講する際にご協力頂きましたが方々には、深く御礼申し上げます。ありがとうございました。」
中尾 真美(フリーランス・トランペット奏者、相愛大学卒、26日のレッスンを受講)


「ステーンストロプ氏の本を前に読んで、どんなレッスンになるんだろうと不安もありました。
 実際にレッスンを受け、そんな不安が一気になくなり、楽器を持つ前の取り組みでこんなに大きく変われるのかと驚きました。
 他の方の聴講もさせて頂き、家に帰ってもう1度本を読むとそういうことか!とさらに深く理解できたこともあり、実りのある1日になりました。また機会があれば是非レッスンを受けたいと思います。」
勝田 愛(大阪芸術大学3回生、26日のレッスンを受講)

* * *

 レッスンの内容は、姿勢や息の使い方から音楽の理解まで、広い範囲にわたっており、ステーンストロプ氏の指導によって受講者の演奏がたちどころに向上する様子を目の当たりにしました。
 ところで、26日のマスタークラスが終った後、また、翌27日にも、唇に関する質問が多かったと話されていました。意識を向けなければならないのは、アンブシュアよりもむしろ息の使い方であり、サウンドであるのに、唇のことを気にしすぎているのを危惧されていたのでしょう。もっとも、唇は奏者と楽器との接点ですし、音を出しているという実感を持つのは唇のところでのことでしょうから、唇が気になるのは当然といえば当然で、発想を転換するのは容易ではないのかもしれません。
 ご協力くださいました皆様、ありがとうございました。



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