20000打記念 紫陽花の咲き終わった頃 |
4人で集まろう。
そういいだしたのはオレだけれど。
窓際の席で微笑みながら語らうふたりを見た瞬間、チクリと心の奥が痛んだのは。
そこだけが他とは全く違って目立っていたから。
大きなテーブルに安っぽいソファ。
しかめっ面でランチをほおばるリーマン。
ギャーギャーわめくガキたちを咎めることもなく自分たちの会話に没頭する若い主婦。
そんな俗っぽさから切り離されたように静かな空間で。
ふたりは一種特有のオーラを放っていた。
もちろん悪い意味ではなくて。
待ち合わせは大学近くのファミレス。
週明けに提出する合同研究レポートのために数人のメンバーと。
大学の図書館で午前中を過ごしたはいいもののなかなか意見がまとまらず。
三上と一緒に待ち合わせ場所に駆け込んだときには予定時間を1時間オーバー。
いくら一緒に旅行したとはいえ、たったの1泊2日だったし。
あいつと優くんはさほど打ち解けた様子もなかったから。
1時間もふたりっきりで待たせたことを不安に思っていたのだけれど。
それはどうやらおれの取り越し苦労だったようだ。
それどころかいやに意気投合しているように思えてならない。
おれたちを見つけたとき、優くんは大きな目をさらに大きく見開いて。
心底嬉しそうな笑顔を見せたのだけれど。
あいつはおれを一瞥しただけですぐに優くんに視線を戻してしまった。
今日の集まりの目的である先日の旅行で撮り貯めた写真をテーブルに出すと。
ああだこうだと指さしながらあいつは優くんに熱心に話しかける。
何だか居たたまれなくて。
さっきまでイヤというほど話をしていた三上に話しかけ。
気を紛らわそうにも意識はすっかり隣のオトコと斜め向かいの男の子に行きっぱなしだ。
あっ……
思わず口に出そうになって慌てて飲み込んだのは。
あいつの大きな手が優くんの頭をくしゃりと撫でた時。
…いやだ……それはおれのものなのに!
ムクムクと頭角をあらわす独占欲をグッと握りこぶしでひねり潰すことができたのは。
おれの向かいに座っているいつもクールな親友の瞳にメラメラ燃える炎を見たから。
あれ?そういえば三上と優くんって……
いったいどんな関係なんだろう???
まさか…まさかね……いやいやそんなことはないだろう。
そんな都合よく自分たちと同じような関係を持つ人間がいるはずはない。
馬鹿げた考えを振り払おうと目の前の飲み物を一気に飲み干す。
ふと視線を感じ隣を見やるとそこには半笑いの見慣れたオトコ。
その目はベッドの上で仕掛けてくる意地悪なヤツの目と同じだった。
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