20000打記念 紫陽花の咲き終わった頃 |
なんだかおもしろくねぇ…
額がくっつきそうなほどにテーブルに散らかした写真を覗きこむ窓際のふたり。
対照的に半ば投げやりにソファにふんぞり返っている通路側のふたり。
運ばれてきたアイスコーヒーをズズズと飲み干せば。
グラスを伝った水滴がポタリとジーンズに染みを作った。
「片岡さん、こんな写真も撮ってたんですか?」
「だって優くんかわいいから。ついついね」
……な〜にがかわいいからついついだよ!
人のモン撮ってないで自分のマイスイートハニーでも撮っとけってんだよ!
心の中でそんな悪態をつきながら件の写真をさっとつまみ上げる。
……かっ、かわいいっっ……
それは帰りのドライブインで買った限定のソフトクリームを。
ぺろりと舐めているマイスイートハニー!!!
…げっ、自分で言っちまった……
小馬鹿にしたつもりの言葉を自分で使ってしまってはどうしようもない。
しかし、馬鹿と罵られても平気なくらいおれは優のことが好きだし。
誰にも見せたくないし触らせたくないくらいに溺愛してるし。
それにしても一体何を考えてるんだ?
あいつはおれと優の関係を知っているはずだ。
しかも自分と成瀬の関係までおれにカムアウトしたっていうのに。
どうして今さら優にちょっかいをかけるんだ?
確かに優は世界でいちばんかわいいから。
邪なキモチを抱きたくなるのはわかるけれど。
それとも単に仲良く旅の思い出を語り合っているだけで。
おれのビジョンだけがそんな風に見えるのか?
おれは嫉妬の亡者か?
そっちがそう来るならおれにだって考えはあるさ。
あいつにも同じキモチを味わわせてやる!
「なあなあさっきのレポートだけどさ……」
自分でもイケてるんじゃないかと思うちょっと知的な笑みを浮かべて。
なんでこいつに極上の笑みを披露しなきゃなんねえんだというキモチを抑えて。
何故だか不機嫌な向かいの親友に話しかける。
だいたいにして第一印象からして気に食わなかったんだ。
年上を匂わせる余裕しゃくしゃくの態度も。
ひとつ先を行くような会話も。
たまにはペースを乱してみろよ!
おれは意地の悪い台詞をいくつもココロの中で呟いた。
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