石川虚舟
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石造浮彫三尊像
播磨・古法華寺
 
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内丹園
 

古法華の獅子
 

道教三尊像
 

石造厨子屋蓋
 

 法道仙人 
 

 石の宝殿 
 

 
 
『古法華石仏』(通称)は、実は「石仏」ではなく、 道教の最高神である「元始天尊」、あるいは宇宙の最高神である「皇天上帝」(『書経』召誥篇) を祀る石像なのであろう。
中央に無極を表象する「元始天尊」を、 そして右(石像から見て)に西王母である女性像、 左に東王父である男性像を配した道教の三尊像と考えられる。 『延喜式』の祝詞に、道教の神々が登場する、東西漢氏の次のような祓詞がある。
    謹請、皇天上帝、三極大君、日月星辰、八方諸神、司命司籍、
    左東王父、右西王母、…
         ** 梅原猛 『飛鳥とは何か』 梅原猛著作集(集英社)第15巻、p.112  
女性像と男性像は、「無極」(混沌)から分離する陰と陽を表象し、 その両脇侍像を支える獅子の姿勢が、月(陰)と太陽(陽)の周回を表象するのであろう。 陰・陽が一体となって回転する図像が、 太極図 である。
月光菩薩と日光菩薩を両脇侍像とする薬師寺・薬師三尊像では、如来像の台座に道教の四神が配される。 本来は道教に由来すると指摘される**薬師三尊像は、おそらく「元始天尊像」がその原型なのであろう。 薬師寺には、「古法華・三尊像」と同様、東西二棟の三重塔が聳える。
         ** 村山修一 『修験・陰陽道と社寺史料』 法蔵館、1997  
古法華は、法道仙人の開基とされる法華山一乗寺の創建の地と考えられる。 「八葉蓮華」の形をなすその地形は、八角形が宇宙を意味する道教に結びつく。 法道仙人は、中国の道教にまつわる牛頭天王と共に渡来したとされ、 その牛頭天王を祀る「広峯社」が、古法華の西方10キロの山中に鎮座している。
古法華北東の岩山は、長石(おさいし/凝灰岩)の石切場であり、 南方10キロの高砂市では、古代から竜山石(凝灰岩)を産出する。 しかし「三尊像」の石材はそれらに該当しないとする長石の元石工の鑑定が、 石像が大陸から搬送された可能性を浮上させる。 石像顔面部の損傷は火災ではなく、信仰者が削り取り、薬として服用した痕跡と元石工は言う。
 
因みに「石造浮彫三尊像」は昭和30年、奈良国立博物館に保存展示され、昭和36年6月30日、『石造浮彫如来像及び両脇侍像』(彫刻)として国重要文化財に指定、その後、京都美術院で修理修復。昭和46年4月24日に帰山し、古法華保存委員会によって保存されている。
 
 

石造浮彫三尊像/播磨・古法華寺
国 ・重要文化財、白鳳時代
 
中尊は椅子に座し、 両脇侍を獅子が支える。
上の三尊形式に似た唐時代の石像が・・・