尺八の吹き方
- 尺八の吹き方 序:
尺八の吹き方等といった立派なことが書けるほどの実力もないのに大変恐縮ですが、初めて尺八をはじめようとしている方の参考になれば幸いです。
- 尺八を持っていない場合どんな尺八を入手すればいいのでしょうか。
尺八を選ぶには、流派による構造の違いと、材質、長さのと違いを考慮する必要があります。
流派の違いは、自分が吹きたい曲、ジャンルによって決めますが、特に師事したい先生の流派が無い場合は琴古流か都山流の尺八を選びます。虚無僧のような古い曲なら琴古流、新しい曲を希望するなら都山流の尺八が良いでしょう。
材質は竹製品のもので、真竹を使ったものを使います。インチキ品には淡竹をで作ったものがあります。少し尺八をかじった事のある人なら見分けが出来るとは思いますが、しっかりした専門店か、尺八を知った人に見てもらいましょう。
竹製品は手工品ですので当たり外れも大きいし、吹く人にも相性がるようですので他人がうまく吹けていても,自分には合わない場合もあります。
また、初心の頃と熟練したときでは、自分に合う尺八は違ってきます。
これは、一人ひとりの唇(特に上唇)の形、堅さや吹く息の違いによるもののように思います。
よく、最初に高価なものを買えば将来買い替えや、途中で挫折せずに済む、といって高価な尺八を薦める人もいます。これも一理ありますが、価格とよく鳴ることとの客観的な尺度がありませんので、慎重に選ぶ必要があります。
尺八そのものは腐るものでもありませんのでよほどのことがない限り、一生使えます。しかし、どんな楽器でも習熟度に応じて満足できずに取り替えざるを得なくなると思いますので、いくら良い物であっても、いくらいいからと言われても、手の負えないような鳴らない尺八を買うのも考えものです。習熟につれて必要とする楽器は変化するようです。
木製の尺八も売られています。楽器店で2万円前後でしょうか。
尺八の長さについては、普通一般には尺八の世界(琴や三味線などとの三曲合奏)では1尺8寸という長さの尺八を基本としています。(1尺は30.3センチだからほぼ54センチです。)
この長さの尺八の指孔を全部押さえたときの音はD(レ)の音です。次によく使う尺八は1尺6寸の長さのものです。これも同じように全部の孔を塞ぐとE(ミ)音が出ます。
「春の海」はこの長さの尺八で演奏しています。
ほとんどの曲は、この2つの長さの尺八でこと足ります。
尺八は縦笛ですので息を吹き込むところは管の先、上部のところです。ここには斜めに尺八の端を切っていて、黒い色をした水牛の角がはめ込まれています。ここを歌口と言います。歌口に水牛をはめるのは、腐れにくいし音がよく出るようにするためです。この歌口の形は流派により、その形が少しずつ違ったものを使っています。
前述しましたが、将来、いずれかの先生かに師事したいと思っている場合、その先生の所属グループのもの、あるいは自分が吹きたい曲を持ってたグループのものを選びましょう。
楽器の持ち方:歌口の長手方向の反対側を管尻といいます。管尻の方から第一孔、第二孔と数え一番譜吹き口に近い穴が第四孔そして裏側の穴が第五孔といいます。
構え方ですが、歌口の有る部分の歌口の裏側部分を下あごに当て、第1孔と第2孔の間の部分を右手の中指と親指とで挟むようにして尺八を持ちます。
顎の位置はは歌口部を上下唇に合わせた時の裏側の顎にふれるている部分を基準に上下、どちらかと言えば下方向に音のでる位置を確かめて固定します。
薬指を第1孔に当て、人差し指を第2孔に当てて穴を塞ぎます。
左手の親指を第5孔にあて、中指を第3孔と第四孔のあいに置き薬指で第3孔、人差し指で第4孔を塞ぎます。
- 尺八の吹き方の実際:

吹き方は簡単と言えば簡単だし、また、難しいと言えばまた然りです。
ここでは、あまり難しく考えないで、音楽を楽しむための最低限のことを書いておきます。
まづ、尺八が鳴るのは、歌口の振動が管の長さに応じた振幅で、管内空気が振動しているわけです。
管内の気柱が共振したときに、もっとも小さいエネルギーで効率よく音が鳴るわけです。
尺八が鳴っているときは、両端が振幅の一番大きくなっている”腹”が生じた定在波が出来ています。これは、実際のところ、簡単と言えば簡単だし、難しいと言えばまた然りです。
ここでは、あまり難しく考えないで、音楽を楽しむための最低限のことを書いておきます。
さて、笛が鳴るのは、管の中にある空気が振動しているわけです。
尺八は歌口部分を見れば、その断面が想像できると思いますが、楔形をしています。
その部分に息を当てるとカルマン渦が発生します。この渦の振動で音が発生します。
ビルの角に風が当ると音がしたり、強い風の日に電線がうなり音を発生するのも同じ事です。
- ヤマハのリコーダーのサイトなど参考にしてください。
吹き込まれた息が、ウインドウエイを通りラビューム(エッジ)に当り振動する図が詳しく説明されています。
この画はまさに尺八そのもので、ウインドウイは唇、ラビュームが歌口です。
尺八が鳴っているときは、両端が振幅の一番大きくなっている”腹”が生じた定在波が出来ています。
両端が開いている管は、同じ指遣いでオクターブが変わりますが、閉管の場合(クラリネット等)は、同じ指遣いでは1オクターブと完全五度違います。
このことから、尺八は管端の外側に空気の”腹”(一番膨らんだ山部)が来ていますから、その山のてっぺんにエネルギーを効率よく与えて、管内の定在波を持続させる必要があります。
この辺は、ヤマハのサイトで理解できると思います。
この定在波は管の長さによって決まってくるのですが、「楽器の音色を探る」(安藤由典著=中公新書)によれば、振幅の最大点は管端の少し外側にある、と述べられています。「開端補正」と言って、管直径の0.6倍だそうです。
この点からすれば、一番効率よくなる点、”腹”の位置は、尺八の歌口付近ではなく、口蓋、唇の内側ぐらいになります。
- 理屈はさておき息を吹き込むには、どんな唇の形にすれば良く鳴るかと言うことですが、平たい息を歌口のエッジ部に当てると言うことです。決してストローのような細い息を当てるのはよくないと思います。リコーダーのウインドウエイのような平べったい形が理想ではないでしょうか。
また、唇の先だけで吹くのは息が平衡になりませんので、出来る限り唇の奥のほうから吹け、唇をウインドウエイのように出来る限り平行な息が歌口に当るように吹くのが理想ではと想像するわけです。(科学的な根拠はありませんが)
次に注意する点は唇も当然ですが、あごなど口蓋も力を入れず自然に吹くことです。それには肩の力を抜いて吹くことでもあります。
- 以上前述では一般的なことを述べましたさて、尺八を吹くとき、唇の尻を両横に広げるようにな、”エ”と発音する様な形で尺八を吹かれるのが一般的です。
この吹き方は悪いという人も多いですが、よく考えれば、こういう吹き方が多いと言うことは、とに角吹きよくて音が出易い形だといえます。ではなぜ、この吹き片が悪いと言われるのでしょうか?、それは、尺八の音が堅くて奥行きがない、艶がない、インパクトのある大きな音が出ない等があるようです。然し、それはそれで吹けるようにすることも悪くはないと思います。きっと、尺八の方がそう言う吹き方を求めているのでしょう。
ただ、このままではは駄目です。少し吹き方に余裕ができてくれば吹き方を少し変えてみましょう。
まづ、口笛を吹く様な形で軽く吹いてみる。これは”尺八吹奏研究会 貴志清一 著”「尺八吹奏方T」に書かれていますがこの吹き方をた試してみましょう。次ぎに、誕生ケーキの上のろうそくの火を吹き消すような感じでほっぺたを膨らませて十分口の中に空気を保って吹く、以上の、二つの吹き方を加えて、音をとぎれない様に鳴らしながら(ロングトーン)、ほっぺを膨らました吹き方から口笛の吹き方、そして、”エ”形の唇で吹くと言った、唇の柔軟な動きをさせる吹き方の練習をすることです。
筆者は散歩をしているときに、ほっぺたを膨らませて蝋燭の火を消すように息を吐きながら唇の形を”エ”の様にしたり元に戻した利する練習をします。その時は呼吸ですが、息は当然鼻で行い、口から息は吸わないようにします。
こうすると、息をはき続けながら鼻から息を吸うことが出来ます。
この練習のいいところは、口腔を十分に広げた感じが会得出来ますから、尺八を場合に口腔を広げて吹くことが出来ます。
時には、ほっぺを膨らませた形で一気に息を吹き入れるとかなりインパクトのある音が出るようになります。
また、唇に自由度が出るので変化のある音の吹き方ができるようになります。
ここで重要なことは唇は空気の量や流れをコントロールしています。
もっとも、演奏の最初から最後までこんな状態で吹いていると言うことではありません。基本的には、こういった吹き方が必要だと言うことです。
次ぎに重要なのは”腹”で吹くと言うことです。
ま、よく言われるのが”腹式呼吸”ですね。
でも、この吹き方はどのようにすればいいのでしょうか。
インターネットでも”腹式呼吸”について色々調べられますが、そこに書かれている説明に従っていざ自分が実行する場合なかなか会得する事ができません。
説明によっては、へその辺のお腹をペコペコ膨らませたりへっこめたりするような説明をしているサイトもあるようですが、こんな運動ではありませんよね。
もし、しょっちゅうこんなコトしていたら腸捻転でも起こしそうですよ。
では、どうするのでしょうか。
- 最近このことで、少し会得できたことがあります。息を吸えば空気が入って膨らむ位置が、まず胸、肺ですね。次に腹、へその下部あたり下腹部にかけてと言うところですね。息を吸えばこのどちらかが膨らみます(両方童子と言う肩も折られるでしょうね)が、最近この中間部、臍からもぞおちにかけての部分に息を吸ったとき空気がたまるようになりましたね。
どういうんですか仰向けに寝て、足を持ち上げたときに力の入る部位ですか、ここに息が入ると結構音に腰が入り、今まで力のない音しか出なかった乙”ロ”もしっかり響いてくれます。
もちろん吹くときの唇の形も大切ですが、力を抜くには咽に力を入れて少し声帯を広げるようにすれば唇から力が抜けるようですが、コツを得ればいつもそんな風に咽に力を入れて吹く必要はないだろうと思いますが・・・
この複式呼吸もときには喉を広げるように吹く場合と同じで、曲の要所要所、則ち音の立ち上がりや、音を弱く吹くばあいや、反対に強い音を必要とする場合など、その戸こそのときに応じて工夫することが肝要です。
日頃の尺八練習としては、「乙ロで尺八を10分ぐらい吹けばよい」と言うようなことを聞きます。
確かにこれは、有効な練習だと思いますが、ただ単に ヴォロオーーーー と立ち上がりの悪いロを吹いていてはあまり効果が無いように思います。
はっきりとした音で、吹くと同時に腹を絞って ローーーー と言う正確な綺麗な音が出るように吹く練習が必要です。
むちゃくちゃ吹いても雑音が一緒に出てしまって、これでは駄目です。吹くと同時に腹を絞る、いや、腹を絞るように吹くことで正確な綺麗な乙ロの音が出るようになります。
ただし単に乙ロの音ばかり吹いていて上手になるのかは約束できません。
どちらかと言えば、同時に大甲のレとかチ等の音も絶えず吹くといいでしょう。
何れにしろ四六時中、尺八を吹いているときには、このようにして複式呼吸で吹かなくてはいけないわけではありません。
要所要所必要に応じてこういう吹き方でインパクトをつけて吹くことが必要であると言うことです。
簡単なようで、なかなか難しいことですね。
各自、日々工夫して上達して下さい。
- 吹くときの心構え:
吹き方にも、派手な音、地味な音、のどかな音、艶っぽい音、素っ気ない音、大きな音や元気のない小さな音など色々有ります。舞台に向く吹き方も有れば、お座敷に向いた吹き方もあります。様々な吹き方が出来れば最高です。人様の吹きようが出来てこそ、初めてその吹き方の是非が判ります。大きな音を批判する前に自分も大きな音が出せるようになりましょう。小さな音を批判するなら、自分も小さな音で吹けるようになるでしょう。尺八を吹くには謙虚な心が必要です。
上手に吹かれているのを聴いて、きっと吹いている尺八(楽器)がいいからだなんて思ってはいませんか。
上手なのは、演奏者が努力されているからです。尺八がいくら良くても、上手に吹けるものではありません。自分の不勉強を反省しましょう。


