まだ店頭にならんでいない。発行日は2021年5月2日。先取りです。 
  
 文庫本を手にしたのはきょう(2021年4月30日)の午後。120頁の文庫本で、各頁に3句の川柳なので一気に読んだ。短い添え書きも読み、かかった時間は1時間半だったと思う。頁の紙は厚手でしっかりしている。 
  
 いやだ、そんなにはやく読んだのと料理人の苦労を慮らない食う人みたいだけれど、それくらいの短時間で十分たのしめるのは、創作すべく勝手に腕の動いた結果の逸品であるからで、甘味か辛味か思い出せなくても、甘辛の川柳がおもしろかったという記憶は残るのだ。 
  
 寿々姫(じゅじゅひめ)の経歴が気になる人はいるので紹介する。いや、後回しにしよう。 
毎日新聞に連載されている「仲畑流万能川柳」からあつめられ出版された文庫の存在を恥ずかしながら知らなかった。 
  
 三百代言並べても適切な寸言に勝るものはない。世の中の動きを見て作者は閃くのだろう。詠まざるをえない、書かざるえない機敏の結晶。いくつか列挙したらぜんぶ読んだ気になる人もいるだろう。 
  
  
  テロ対策 張り紙だけで済ます国 
  
  コンピューター社会になって幸せか 
  
  大兄は尊称 大姉戒名だ 
  
  あて名に殿があるのに姫はない 
  
  ミートボール 直訳したら肉球だ 
  
  いい物は飽きない そんなことはない 
  
  接待をされたら私忘れない 
  
  幼稚さと分かりやすさは違うのよ 
  
  ひとりではとても寂しい手巻き寿司 
  
  昔から黄砂だったか春霞 
  
  本当の息子にだって振り込まぬ 
  
  小池知事アウフヘーベン そりゃないぜ 
  
  わが国民 忍耐力は世界遺産 
  
  一年の手洗い三〇〇〇回は超え 
  
  
 作者は銚子市の医師の家に育ち、都内在住。専門はオスマントルコ近代史。記憶に残る映画は「アラビアのロレンス」。その昔、江戸風俗研究家杉浦日向子の「お江戸でござる」を支持。特長は気っ風のよさ。熱狂的な巨人ファン。昭和経済研究所アラブ調査室に40年以上在職した。略歴の詳細を知りたい人は文庫を。 
  
  危ないは地球ではなく人類だ   この句は2008年度年間大賞。 
  
 川柳が何句あったか数えていない。ページ数からして250以上あったと思う。到底おぼえきれないので、何度も頁をめくって笑うことになるだろう。クリニックや薬局の待合室で読み返し、くすりと笑うのは、こういうご時世だと迷惑か。あざやかなブルーの表紙に白の点々。ネコの足跡=肉球です。 
  
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