第十二話  幻の花 銀竜草

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愛知川源流釣り記録

 渓の両側が垂直な崖に囲まれたいわゆる通らずにぶち当たり、釣り人は仕方なく右岸の急峻なガレ場に僅かにのこる踏跡をたどり、高巻き道をハァハァと息を切らせながら約三十メートルも登っただろうか、息を継ぐため足を止めると右手の崖にピンク色の石楠花が咲いているのを木立の間から見た。    思わずおおーと言いながら巻き道を外して崖に取り付いてはみたが崖はほぼ垂直に近く、足場は積雪により根元が弓なりに曲がった木々しかない。 注意しながらその曲がった木々の根元に足を掛けながら二、三メートル前進すると張り出した木の根の上に落ち葉が積もり棚状になっている所があった。   体重を掛けても大丈夫かどうかを見る為に渓流靴の足先でつついてみた。 その時に『白いつくし』が4,5本生えているのに気づいた。 それは急峻な崖の途中に僅か一尺程張り出した棚状の落ち葉の中に埋もれるようにひっそりと咲いていた。

2003.5.13 神崎川源流

ギンリョウソウ【銀竜草】

周りの樹木に陽光をさえぎられ、薄暗く過酷な環境に負けず可憐な姿を見せてくれたのは今回で三度目である。 葉緑素を持たないので純白色、半透明で僅か10センチメートル足らずである。葉と思えるものはうろこ状で花は下向きに咲いている。 何となく竜に似ている。 堆積した落ち葉に腐生して、地上に姿を見せるのは5月から6月における僅か十日ばかりである。 したがって人目に触れることは稀であり、まぼろしの花と言われる所以である。 5年ほど前に初めて目にした時は薄気味悪い花と思った。 別名幽霊草又は水晶蘭である。

1999.5.18 茶屋川にて 撮影

ギンリョウソウモドキ

ギンリョウソウとよく似た花であるが別種である。 同じイチヤクソウ科なのだが秋、9月頃に開花する。アキノギンリョウソウとも言われている。
2002.9.28に三重県側の山道で撮影したもの。 当初私もギンリョウソウと勘違いしていた。
あすなろつぶやき
第十三話 林道に幽霊が出る