第十三話     林道に幽霊?

    川林道は真っ暗である、車のライトを頼りに曲がりくねった山道を細心の注意を払いながら進む。 夜明け前であり風は殆ど無いが冷え込みが強くひんやりとした空気が開放した車窓より入ってくる。 この分では今日は晴天になるのだろうと思われた。

林道は茶屋川に沿って作られており、とある場所では渓が大きく右に曲がっているため林道もそれに沿って大きく曲がっている所に来たので前方に注意しながら崖に沿って何とか無事に曲がり終えた。

曲がり終えて視界が広がったそこには車のライトに照らされた白い人影が浮かび上がった。 釣り人は『オーーあれは・・・何だ???』と思わず呟いた。同乗のK君の返事を待つまでも無く車はそのままその白い人影に突入していた。 あぁーと叫んだがもう遅かった。 人をはねたのだろか?・・・ 急ブレーキを掛け少し行き過ぎたところに止まり恐る恐るバックミラーで後ろを見るとそこには拡散した霧が薄っすらと漂っていた。 ウンー・・・霧でよかったと思わず胸を撫ぜ下ろした。  茶屋川沿いには古くからの仙道が多くあり炭焼きや鉱山や今は廃村となっている茨川集落があったところで、昔は人々の往来も結構ありこの険しい谷筋を抜けるときには事故や事件があったと聞き及んでいた。 したがってそれを見た瞬間、その形より若い女性が白い着物を着てたたずんでいる幽霊と思ったのである。

その後再びその場所を通過する時に同じように白い霧の塊が発生していた。 その日も風が無く放射冷却現象がおきる晴天で冷え込みが激しい日であった。林道周囲の環境は左側は雑木が生い茂り川筋迄少し距離があり、右側は大きな岩で構成されているところであった。

幽霊(霧)発生のメカニズムへの考察

おそらく右岸の岩盤には空洞の箇所があり、そこに高湿度の空気が溜まっているが明け方の冷え込みにより岩盤の収縮が起こるとその過飽和の暖かい空気が道路側にある小さな穴より排出されるが外気温が低いため水分が霧になり風がないとそこらを漂う事になると思われる。

あすなろつぶやき
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第十四話 水中を巧みに泳ぐネズミ