愛知川上流は三つの支流により構成されているが、茶屋川はその真ん中に位置する神秘に富んだ源流である。 右に位置する神崎川は白い変成岩で形成されており明るく開けた豪快な源流であるのに対して、茶屋川は凝灰岩で形成され且つ、木々は谷を被い隠すように生えており、谷はいつも暗くじめじめとした陰湿な風情の谷である。 したがってこの谷に入渓する釣り人は常にヒルに脅えながらの遡行となる。
数年前の出来事であるがその日は茶屋川中流域で釣り終えて渓流に平行している林道へ上がる道を探していたが、この渓には珍しくなだらかな斜面が広がっている箇所があり、そこより林道へ上がることにした。しかしながらそこは土が軟らかく足が取られてなかなか前に進めない。 渓流靴を泥どろにしながら何とか林道に這い上がることが出来駐車地まで戻るため歩き始めた。 林道は昨夜の雨で濡れており所々に水溜りが出来ておりそれを避けながらの戻り道である。 ふと前の水溜りを見ると紫色の太いロープ状のものがあり、山かがしが車に引かれたものと思われたが、木片で水溜りより引き上げてみたところ、何と巨大なミミズであることが分かった。 それは不気味に赤紫色をしており腹部はピンク色をした太さ約2cm、長さ約40cmもあった。 結構長いこと生きてきた私にとっても全くの始めてみる物である。 同行のF君も驚いていたが思い出したように『そういえば以前釣り上げた尺近い岩魚の腹を割いたときにそれと同様の小さなミミズを見た』との事である。 当然そのミミズには目玉は無く、釣り人が通常鉢巻と言っている環帯が有り体節は約3-4mmぐらいはあった。
家に帰り持ち合わせの動物図鑑や百科事典を調べるがミミズの種類と特徴のみで巨大ミミズについては全く載っていないのである。 そして分からないまま数年が経過したがその間何度もその場所へ釣りに行ったが一度も巨大ミミズとは再会できないままであった。
このミミズについて再度調べ始めたのはこのページに載せるためである。まずパソコンに付いていた電子百科事典を調べると以下のような内容が記載されていた。
シーボルトミミズ Pheretima sieboldi
貧毛綱フトミミズ科の環形動物。大型な種類。P.F. von シーボルトが日本で採集し,この標本をホースト R. Horst が1883年に発表した際にシーボルトに献名したものである。本州中部以南,四国,九州に分布し,山地に生息する。俗称ヤマミミズ。現在までの最大の個体は体長45cm,太さ1.5cm,43gである。濃い青黒色をしていて生殖時には第14〜16体節に環帯が生ずる。環帯上には背孔や剛毛はない。雌性生殖孔は第14体節の腹面中央に,雄性生殖孔は第18体節の腹面両側に1対存在している。受精嚢孔は3対あり,6と7,7と8,8と9の各体節間溝に開孔しているが,これは大きな特徴の一つである。83年に報告されてから約50年後に第2番目の個体が得られたというエピソードが残っている。 今島 実
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インターネット HPで巨大ミミズについて詳しく記載されています。
・どらえまんさんの何でも研究室 みみずあれこれ
・Y Sugi and Tanaka PDFファイル
フトミミズ Pheretima sieboldi の個体群生態学
上記HPを参考に簡単にまとめてみますと以下のことが言えると思われます
電子百科事典に載っていた約50年後に第二番目の個体が発見されたのはかなり誇張した表現であって九州、四国の特定の所では希少で貴重だが今でも常時観察されている。私は餌釣りにおいて最も多用するのはミミズである、理由は万能であり餌持ちが非常に優れていることにある。
しかしながら今迄散々お世話になりながらミミズの体の構造について無知であった。
心臓、口、脳が何処にあるとも知らず適当に通称鉢巻(環帯)に針を通していた。 これからはこれらを少し意識して針を通すことにしよう。
左図
平凡社 動物大百科辞典より転載