村岡町にさしかかった。
昨日ハマった田圃がある。
車を止め、田圃とは反対側にある、民家へ行ってみた。
昨日のうちに買ってきていた鳥取のおみやげを持って
一番近い家におじゃまする。
「あのう・・・ 昨日、下の田圃に車がはまって、助けていただいた
方を捜しているんですけど・・・
小柄な、顔の丸い、50代位のおじさん知りませんか?」
「さあ・・・?」
「名前をお聞きするのを忘れてしまって・・・ ええっと、白い軽トラ
に乗ってて・・・ああ そう 家に犬がいるっておっしゃってました。」
「ああ それなら 賢治さんかなあ。その道をまっすぐ行って、
大きな楠のある家」
教えてもらった通り、行ってみて捜したけれど、人違い。
それから4軒ほど回って、最後に教えてもらった家は、留守だっ
た。
仕方がないので、教えてくださったそのおうちに、鳥取のおみや
げと、私が書いた本が入った袋を預けて帰ることにした。
(私は2月に沙羅との生活をつづった本を出版したのだが、
家にドカッと段ボールに入った本が送られてきて・・・
それが未だに積み上げられたままなので、
こうやって旅先でお世話になった方々に手渡して行くことに
したのだ。
沙羅とこの先何回こんな気ままな旅に出られるのかわから
ないし、限られた寿命でもある。
私の本を旅先に残すことで、沙羅との思い出も大切に残して
いけるような気がして・・・)
村岡町を後にしたら、そのあと雪は減るばかりで、
日常に帰っていく実感がもどってくる。
旅に出るときは、家にいる猫のこととか、仕事のこととか、
ほんとにきれいさっぱり頭の中から消えてしまっているのに、
家に近づくにつれ、思い出すのはなぜだろう。
(きっと猫の餌をやり忘れていたとしても帰りにならないと
思い出さないと思うのだ)
おまけ
完
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