郵便不正、厚労省局長逮捕めぐって政治圧力の有無は

民主国会議員、自民都議の名前も…

 障害者福祉のための割引制度が悪用された「郵便割引不正事件」は、厚生労働省の現職局長(元障害保健福祉部企画課長)の逮捕という事態にまで発展しました。実体のない自称障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)に、なぜ、ニセの証明書を発行し、便宜を図ったのか。背景に「政治の圧力」はなかったのか―。

今回の郵便不正事件では、凛の会とは別の自称障害者団体「健康フォーラム」(東京都港区)の菊田利雄容疑者も、健康食品販売会社「元気堂本舗」(同)のDM(ダイレクトメール)約550万通をみずからの刊行物として発送し、6億2564万円の支払いを免れた疑いで逮捕されています。

 この菊田容疑者は、障害者団体としての認定を港区から受ける際、「口を利いてほしい」と、自民党の来代勝彦都議に依頼。同都議が港区の担当者に電話で仲介したことがわかっています。

 港区の「障害者団体」が港区に証明書をだしてもらう―。当然のことです。しかし、活動規模が全国にまたがる団体の証明事務を担当する厚労省がなぜ、わざわざ、凛の会に証明書を発行したのか、疑問が残ります。

自称・障害者団体「凜の会」虚偽証明書発行をめぐる相関図(詳細は本文で説明) 同省障害保健福祉部の元部長(退職、現在、同省所管の独立行政法人「福祉医療機構」理事)は2004年2月ごろ、民主党の国会議員から電話で、凛の会の証明書発行について依頼を受け、当時、企画課長だった雇用均等・児童家庭局長の村木厚子容疑者に「うまくやってくれ」と伝えたとされます。

 同課係長で、ニセの証明書発行のための決裁文書を偽造したとして逮捕された上村勉容疑者は、「国会議員の紹介案件だから慎重に扱って」という引き継ぎを前任者から受けたといいます。

 国会議員の依頼から始まった厚労省内のニセ証明書発行の構図。凛の会の設立者、倉沢邦夫容疑者は、民主党の石井一参院議員の私設秘書でした。

 ある障害者団体の代表は、凛の会へのニセ証明書発行について、「自分が厚労省に行っても、会ってすら、もらえないだろう。(これは)政治的圧力ではないか」と話します。

 今回の事件では、これまでに、来代都議が、菊田容疑者から36万円の献金を受け取っていたことがわかっています。また、凛の会から名称変更した「白山会」の守田義国容疑者との関係では、民主党の牧義夫衆院議員が、日本郵政公社(当時)の関東支社に違法DMが発送できるよう働きかけたり、国会で質問したりし、24万円の献金を受けていました。

 障害者福祉のための制度を食い物にした今回の事件。関与した政治家の疑惑の全容を明らかにする必要があります。

2010年9月25日追記

 2009年7月、厚生労働省の村木厚子元局長、元係長上村勉被告らが起訴されました。しかし証人が相次いで捜査段階の供述を覆し、村木元局長の関与を否定。村木元局長は2010年9月10日に無罪判決を受け、21日、最高検が控訴を断念し、無罪が確定しました。

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