あるテレビCMでタレントが「膝が痛いから動かないのか?動くから膝が痛いのか?」と問いかけるものがありましたね。どちらが先かはまだわかってはいません。でもあきらかに動く機会は減っていると思います。特に舞鶴のような田舎は・・・。
その昔、こういったことは「廃用性症候群」といいました。耳で聞くと難しいですが漢字で書くと読んで字のごとく、使わなければ廃れるという状態を指します。現在は「生活不活発病」というそうです。
生活不活発病は防げるものです。それは病気や障害から身体の機能が衰えたのではなく、動かないことや活動を自ら制限したりし活動の「量」が減ってしまうことに起因しているからです。
一方、ロコモティブ症候群。いわゆるロコモというものは何かといいますと日本整形外科学会によると「運動器の障害」により要介護になるリスクの高い状態になることと定義されています。つまり腰痛や膝痛などによって筋力が低下し転倒や骨折そして寝たきりになるリスクが高められてしまうということですね。
しかしながら、過程は違いますが結果のみをみると、両者にあまり差はないと思います。その差は専門職が知っていればいいわけです。
さて、絶妙なバランスと首記に記しました。ロコモは運動器の障害です。これは鍼灸の得意とする分野です。生活不活発病については筋トレや体操をすることで、対応ができるわけですから、絶妙〜と記しました。
対象は、要支援や要介護1,2と認定された方や、若年層でも腰痛や膝痛で動きが減ってしまっている方に、鍼灸治療と並行して筋トレをしていただき運動機能の改善や向上に努めていただきました。
体操はごく簡単に、出来る範囲で行い通院日に家でどれぐらい行ったのか確認をしました。
以下に下肢編を紹介しますのでご覧ください。上肢編はのちほど。
ケース1 大腿部(ふともも)の裏のつり感
13年前に両膝を人工関節にする手術に踏み切られ、その後大幅に生活が向上されました。しかし、13年が経過し膝の痛みとふとももの裏のつり感があり、歩くのもしんどい。畑もしたいのにできないと相談を受けました。
そこで鍼治療とそれにプラスして筋トレをしてみませんかと提案し了解していただきました。
2ヵ月半後「そういえば、階段をスタスタ上がっている」、「お父さんに頼まなくても洗濯かごを持って階段を上がっている」とおっしゃったので「歩くスピードも速くなっておられますよ」とお話しすると「ここに来る(通院に要する時間)のに前は15分かかった。今では10分切ってる」とおっしゃっていました。
最初こそ筋肉痛がありましたが、それこそ鍼灸治療を行うと早く回復します。そして大腿部のつり感はなく、畑仕事に精をだしておられます。
ケース2 右膝の痛みで競技を断念
プロスポーツ選手並みの身体能力を持っておられた方ですが、病院にて坐骨神経痛と右膝は手術を勧められている状態で当院へ来院。
鍼灸治療介入直後から左のおしりから膝の後ろまであった痛みとシビレは消失した。右膝については手術を勧められているので、治療はしないでほしいとの要望があったため一切触らず。
ある日のこと「テレビでやっていた筋トレって効果あるんか?」と聞かれ「一定の効果はあると思いますよ」と返答。その場で「じゃあ、やる!!」とおっしゃっていただいたので、3〜4つの筋トレを指導し毎日行っていただいた。数ヵ月後には膝の痛みも悪い時の3割程度まで改善し断念されていた競技に復帰されました。毎日30〜60分の歩行と筋トレをされ、週に1回試合に出場されています。
鍼灸治療と筋トレが相性良く効果を出せたいい例です。
ケース3 筋肉の低下にともなう全身の痛み
繊維筋痛症やリウマチなど全身の痛みを伴う病気はありますが、この方はそういった病的な側面を含んでいない方です。
50歳代に入り身体のあちらこちらに痛みを感じることが多くなり病院へ。病院での検査の結果はどこも異常なしとのことで、当院にて鍼灸治療と筋トレを提案しました。
全ての筋トレメニューを毎日こなし「飽きた。他のはないか?」との声。「第二段、出しますよ!」と返答
現在1〜2か所痛みが瞬間的に出ることもあるが、瞬間的に消えるところまで改善している。
患者さん「年やいうて弱気になったらあかんわ〜。なぁ、きしもっさん」
私「え?あっ、僕?」
患者さん「私たちも、まだまだ若手やでぇ」
私「そうそう、○○さんはまだまだずっと若手ですよ!」
私の内心(私たち「も」か〜。本当は○○さんとは10歳違うんだけどな…。ま、25歳で開業した時も40歳といわれていたし…。実年齢になったといえばそうなんだけど……微妙〜、いや複雑!!)
ケース4 膝の腫れと足の浮腫(むくみ)
立ちくらみを起こされ、転倒。その際、膝を強打し、外出がおっくうになる。家の中でも動くことが大幅に減り、足のむくみとふらつきがあり外出は更に困難となる。
当院にて往診を行い、1ヶ月半で膝の痛みが減ってきたので、通院に切り替える。通院に要する時間は杖をついて20分であった。鍼灸治療と筋トレを開始し3ヶ月が経過。通院に要する時間は10分以下となり、膝の痛みは消失し、ふらつきは一週間に1〜2回程度ですぐに改善する。むくみも減少し杖も不要となった。
ケース5 足のむくみ
心筋梗塞を起こされ、家に閉じこもる生活となられる。家にいるよりは外に出た方がいいとのことで、当院にて筋トレを開始。
まだ、下肢のむくみは残るものの「足が軽くなった」「歩きやすくなった」「足が上がるようになった」など喜びの声が聞けている。
ケース6、7、8 腰椎の圧迫骨折後の不調
一緒にしていいか迷いますが、3名の方が同じ腰椎の骨折後に、腰の突っ張り感と腹部の圧迫感を伴われ当院へ通院に至る。歩くスピードが遅くなり、歩幅が狭くなってよろよろするとのこと。
鍼灸治療で腰の突っ張り感とお腹の圧迫感に対応し、歩行速度やよろよろすることに対しては筋トレをしていただくよう提案した。
2名は2カ月間で上記の症状は消失。歩くスピードも速くなり長い距離も歩けるようになられました。
1名は筋トレはしないとおっしゃっていたので、せずに鍼灸治療のみを実施。現在は腹部の圧迫感のみが残っていますがよろよろする感じもなく、歩くスピードも速くなっておられます。
ケース9 右ふくらはぎの吊り感
1分程歩くと右のふくらはぎにつり感が出るとのこと。レントゲン、MRI、血液検査も異常なしだそうです。
さて、鍼灸治療と筋トレを行い、たった1分だった歩行継続時間は20〜22分にまで大幅に伸びた。
歩かれる姿も、以前は足をするように歩いておられましたが、今はそれも無くなり、スムーズな体重移動ができるようになっておられます。
ケース10 腰の狭窄症
狭窄症で病院に通院されている方です。
両方のふくらはぎが石の様に硬く感じ、左の足が前に出せない状態。当院の患者さんから「鍼してみたら?」紹介され、一縷の望みを持って来院。
移動は車が主で、ほとんど歩かない生活。スーパーのカートに寄りかかってなら歩けるという状態であった。
鍼灸治療と筋トレを同時進行で行い3分歩くと両ふくらはぎが石の様に硬くなってきていた方が、20分ぐらいまで歩けるところまで改善されました。
最大で続けて28分まで歩ける。お花見の様に休んだり歩いたりすれば、2時間近く外に出ていることができたとにこやかにおっしゃっていました。
ケース11 腰と両膝の痛み
創業以来の患者さんです。15年も経つと若かった患者さんもまもなく50歳の声を聞かれます。
腰と両膝の痛みに対して、鍼灸治療と筋トレを行っていただきました。6か月を経過した段階で痛みはあっても外出には支障はないとのこと。
もともと旅行がご趣味でしたので、僻地から都会、遠くは海外まで楽しまれています。
ケース12 両股関節の骨折
両方の股関節を骨折され、チタンを入れておられる方です。
大腿後側(ふとももの裏)につり感があり、寝起きや歩く際につってしかたがないとのことで来院されました。
鍼灸治療と筋トレを始められて、一か月に満たないが、「ちょっと動くとつったのが、椅子から立つ時と起きるときだけになった」とおっしゃっています。
ケース13 肩こりと腰痛と肥満
トレーニングジムや女性専用の施設は行きたくないので、ここでしている筋トレをしたいと希望されました。
目標は早寝早起きに体重を3kg減らすことだそうです。
ケース14 腰痛と足のしびれ
ハードな仕事をされながら、腰痛と足のしびれを抱えておられる方。足のしびれは神経系の病気はないと診断されています。
鍼灸治療と筋トレを行い、腰痛は立ち上がる時に少し痛む程度にまで改善し、足のしびれは現在は感じないとのこと。仕事は相変わらずハードだそうですが、週末にへばって、寝だめをすることがなくなったとのこと。
当院コメント
看過できない都会と田舎の差
都会の人は田舎の人より歩く機会があります。例えば通勤や買い物などの移動手段は電車やバスですが、そこまでは歩かねばなりません。仮に通勤で10分歩いたとします。往復で20分。週5日勤務なら100分です。
一方、田舎の人は、多くの場合、家の玄関から職場の玄関まで車で移動しますからほぼ0分です。週末にその100分を取り返せればいいですが、そういう方はおそらく少数派ですね。
一か月で400分、一年で約5000分。およそ83時間も歩く時間に差が出ます。それが定年まで続いたとしたら、とてつもない差ですね。単純に比較はできないかもしれませんが、これだけの差があれば、筋力は田舎の人の方が急激に落ちていくことは想像の範囲でしょう。
そして高齢化がこのまま進めば、筋力が無い分、転びやすくなり、転んだら骨折、寝たきり……そんな人が田舎に溢れてしまうことになる。これはとんでもないことですね。こういった意味からも若いうちから身体を動かす楽しさを知っていただければ幸いです。
稀に、鍼をして電気を流すと筋肉は発達するのか?と聞かれることがあります。パンプアップ??でしたか?全く無いわけではないですが、映画のマトリックスのようなことはおこらないそうです。
筋トレは毎日続けることが目標なので、無理をされる必要はありません。出来る範囲で、出来たことを表に記入していただきますので気軽にお尋ねください。
いずれまた更新します。
更新日 2015.4.18
ケース 15 70歳代 女性 圧迫骨折
毎日5千歩を目標に歩いていたが、階段から落ち腰の骨を圧迫骨折する。2ヶ月間で完治したとドクターにいわれたが、ご本人としては、前より腰が伸びない、外に出て歩くと腰がしびれてくるのが取れず、当院へ来院となった。
5回目の治療でしびれは消失し、6回目からはコルセットを外したとのこと。7回目で腰も伸び5千歩達成。
以後、月に一回の通院を希望され現在に至る。
患者さん「今日は朝ドラで五代様が復活したんや」
私「あ〜ぁ 見ましたよ」
患者さん「先生は、五代様に雰囲気が似てるは〜」
私「そんな恐れ多い。でも試しに、ファースト・ペンギンって言ってみましょうか?」
患者さん「いや、やっぱり雰囲気だけやわ〜。喋らんといて!」
患者さん・私ともども爆笑。
もう・・・私の腰が圧迫骨折になりそうなほどのけ反った笑いでした!
ケース 16 60歳代 女性
腰のだるさが強く、ふとももの外側にしびれがある。病院は未受診だったので受診を勧める。
10回の鍼灸治療で上記の症状は消失。途中、お葬式やお孫さんの用事などがあり、その度に悪化されましたが、前向きに治療に取り組んでいただいたお陰で早い回復となった。
以前は歩けなかったが30分以上歩けるようになり、草引きや車に2時間以上乗っても翌日に響かなくなったとのこと。
ケース 17 80歳代 男性
両足のむくみ。心臓の病気があり、近いうちに病院へ入院するとのこと。およそ10日前から浮腫みがきつくなる。それに伴い足の感覚が鈍くなり、靴はおろか靴下も履けない。
初診時は足の太さを測定したところ、右足は36センチ 左足は37センチであった。短期集中で施術を行い8回の施術で右足は35.2センチ 左足は36.2センチと減少。踝がわからないほど浮腫んでおられたがわかるようになる。ご本人も当院も通院を予定していたが、奥様が入院されることになり中断。
ケース 18 30歳代 女性
月経周期に関わらず、足が浮腫む。内科的な病気ややリンパ液によるものとも考えにくい。
大変申し訳ないですが、当院は審美的な行為は行っておりません。
堅実にされているエステならご紹介しますよ。
ケース 19 80歳代 女性
両方のふとももの裏にツル様な痛みがある。腰からくるものかと思われ、病院にて検査をするも腰は診断が下せるようなほど悪くは無いそうです。心臓の病気や糖尿病、腎臓の病気、両足の人工関節など様々な病気を抱えておられ、不安から寝つきが悪くなり精神科を受診。
その後、当院の患者さんの紹介で来院されました。11回目の治療開始時に手押し車で60分歩けるところまで改善され、大変喜んでおられました。
ふとももの裏の痛みは歩いても出て来ず、最長90分間歩けるようになられる。しかし便座に座ると痛みが強く現れるので、環境の整備がいるかなと考え始めた矢先、心臓の病気で入院されました。
回復をお祈りします。
ケース 20 60歳代 女性
腰から両方のお尻にかけて痛む。特に座った状態から、立ちあがるとしばらくじっとしていないと歩けない状態で来院。お仕事も多忙で忙しさにかまけて治療を先延ばしにしてきたがもう我慢できないとのこと。
週に一回の施術と毎日できる範囲での筋トレをしていただき、現在は月に一回の施術ペースになっています。
「長時間座っても痛くないし、へたしたら忙しい忙しいといっていた時よりも動けているかも」とのこと。
加筆日2016.2.24